農業分野の「カーボンオフセット」に注目

環境保全型商品に挑む、JAきたみらい

狙い的中! 特売日向けの施策

 もともと特売日には好調な売れ行きを見せていた。消費者が手に取りやすい3kg詰めの小箱をスーパー側で用意し、通常の20㎏詰め段ボール箱から中身を詰め替えて売るようにしていたのが、好調さを支えた要因と見られていた。が、首都圏を除く消費地では、箱詰め等の人員が慢性的に不足しており、市場からJAでの小箱詰めを提案された。

 そこで、JA側で3㎏詰めの小箱を用意し、詰め替え作業も引き受けることで、取引数量の拡大を図ろうと――。その狙いが的中したのである。「特売日の売り上げが一段と伸び、その勢いが特売日以外にも広がりました。結果、取引数量の倍増につながったのです」(須河氏)。

JAきたみらいのタマネギは、日照時間が長く、降水量が少ない天候の影響を受け、しまりがよく、熱を加えると甘みが強くなるという
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JAきたみらいのタマネギは、日照時間が長く、降水量が少ない天候の影響を受け、しまりがよく、熱を加えると甘みが強くなるという
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JAきたみらいのタマネギは、日照時間が長く、降水量が少ない天候の影響を受け、しまりがよく、熱を加えると甘みが強くなるという

 JAにとって目先の持ち出しは増えるが、それを回収したうえで、今まで以上の収益を生産者にも還元できる。須河氏はそう踏んだ。「『ECOみらい』『特別栽培』ともに数量の全てをこだわりの商品として取引先に持ち込めず、残りは市場に出荷していました。JAの関わり方によっては、契約販売の取引数量をまだ増やせるのでは……。そんな期待感もあって、思い切った判断を下すことができました」。

 各地の取引先や市場を巡る中では、「カーボンオフセット」に商品としての新たな価値を見いだす、感度の高い野菜卸やバイヤーにも出会った。

 須河氏の売り込みに関心を示し、学校給食向け食材として供給しようと動き出したのは、名古屋市中央卸売市場を拠点とする野菜卸である。給食食材を納入する協同組合とも話を付け、2022年9月には名古屋市内の小学校で「カーボンオフセット給食」の提供開始につなげた。「年間を通じて『ECOみらい』タマネギ約400tと『ECOみらい』ジャガイモ約100tをセットで出荷することができました。『カーボンオフセット』というほかには見られない取り組みが、野菜卸の目に留まったようです」(須河氏)。

馴染みの薄い言葉だからこそ、あらゆる媒体を活用し「カーボンオフセット」の訴求を行う
馴染みの薄い言葉だからこそ、あらゆる媒体を活用し「カーボンオフセット」の訴求を行う

 近畿・東海エリアを拠点とするスーパーでは、「ECOみらい」に「カーボンオフセット」という価値が加わった点をバイヤーが評価し、取り扱い店舗を全店に広げることを決めたという。「スーパー向けの出荷先はそれまで、名古屋、岐阜、和歌山という3市の各中央卸売市場でした。取り扱い店舗を全店に広げるのに伴い、そこにさらに奈良県中央卸売市場が加わりました」。須河氏は販路の広がりを素直に喜ぶ。

JAへの信頼が「オフセット」実現をもたらす

 取り組みを始めて2年。須河氏によれば、J-クレジットの購入量総計は1年目で約400t-CO2、2年目で約380t-CO2という。先ほど紹介した取引単価からすれば、購入額は年間400万円規模。生産者はそのコストを負担してもなお、「カーボンオフセット」の取り組みを続けているのである。「『カーボンオフセット』の価値が評価され、契約販売の販路を広げ、取引数量を拡大できているため、生産者に収益を還元できています。だからこそ、生産者が協力してくれるのです」(須河氏)。

JAきたみらいの須河氏(右)と「ECOみらい」のタマネギやジャガイモを生産する高城耕一氏。「『カーボンオフセット』への取り組みを始めてから注目度が高まりました」と高城氏は喜ぶ
JAきたみらいの須河氏(右)と「ECOみらい」のタマネギやジャガイモを生産する高城耕一氏。「『カーボンオフセット』への取り組みを始めてから注目度が高まりました」と高城氏は喜ぶ

 裏を返せば、JAなら売り切ってくれるという信頼と期待があるからこそ、生産者は身銭を切ってJ-クレジットを購入し「カーボンオフセット」を実現させている、ということ。生産者の信頼と期待に支えられた取り組みなのである。

 実はJAきたみらいではもう一つ、SDGsの達成に貢献する価値創出に乗り出す動きが出始めている。「特別栽培」でタマネギを生産する別のグループが生物資源由来の炭化物である「バイオ炭」を土壌改良材として圃場にすき込み、炭素の土壌貯留という形でCO2の排出除去に取り組んでいるのである。生産量は年間約1400t。管内で生産されるタマネギ全体からすれば0.5%程度にすぎないが、農業分野でのカーボンニュートラルに向けたもう一つの方向性として注目できる。

 そのタマネギの商品名は「(めぐる)」「真白(ましろ)」。JAでは全道組織のホクレンを通して、主に生活者協同組合(生協)に販売する。「バイオ炭」は、木質バイオマス発電施設で副産物として生じるものを、管理運営業務を受託する会社を通して調達したものだ。

 炭素貯蔵分は、ホクレンがJ-クレジットとして認証を受ける。連携相手は一般社団法人日本クルベジ協会。2024年1月には第一弾として約17t-CO2が認証済みだ。その引受先には商品の買い手でもある生協が候補として上がるが、売却代金の使い道はまだ協議中の段階という。

 今後、農業分野でもSDGs達成への貢献やカーボンニュートラルへの貢献が求められていくのは、農水省が2021年5月に策定した政策方針「みどりの食料システム戦略」にも示されている通りだ。そうした時代の流れの中で生産者に取り組みを呼び掛け、それを支援し所得向上に結び付ける――。JAの果たす役割は大きい。