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JA岡山は、ぶどう出荷量増大に応え、選果場設備を増強した。単に選果ラインを増設しただけではない。6月から12月まで長期出荷の安定化を実現する、新しい冷蔵技術を導入した。「JA岡山が県、大学などとのコンソーシアム(共同事業体)による新技術開発に取り組み導入したものです。ぶどうの冷蔵技術が進む長野県のJAからも話を聞きました。他県からも見学にきますよ」(二垣氏)。大月氏は「途切れなく出荷できるのは、生産者とともに消費者にも大きなメリットです」と笑顔になる。

ぶどう農家のコストを抑えるために、メガ生産団地の事業では、散水用スプリンクラーや防除用SS(農薬散布機)の共同利用を行っている。加えて、選果場への出荷に向けた箱詰めを行う作業場も提供する。さらに、デジタル技術の活用も積極的に支援している。「加茂川ぶどう部会では、今まで人手で行っていた作業を代行する草刈りロボットを導入しています。また検証中ではありますが、スマートグラスなどを利用して糖度測定や収穫時期が分かるようになれば、新規就農者でも均質でおいしいぶどうを出荷できるようになると期待しています」(大月氏)。

定着化に向けて地域にいかに溶け込むか。新規就農者にとってJA岡山や地元生産者との“絆”がそれを強固にする。「台風の翌日に、私が植えた苗木が倒れていないか、JA岡山のスタッフが見に行ってくれ、埋め直したという報告を受けました。本来、自分でやるべきことで驚きました。指導農家の方も初心者である私の質問に対し、どんなに忙しい時でも現場に来て答えてくださいました。暖かい気持ちに触れた時に、『おいしいぶどうを作って恩返しがしたい』と心から思いました」(瀬尾氏)。
大月氏も新規就農者と地域のふれあいについて言及する。「雪が降った時に、ネットをかけたままだったため、新規就農者のぶどう棚が潰れてしまいました。JA岡山と部会で声をかけあい、みんなで力を合わせて棚を直したことを、今でも覚えています。新規就農者と地元生産者間のコミュニケーションが一気に縮まりましたね」。

岡山ハイブリッドメガ生産団地では、新規就農者は当初3人だった。生産基盤整備の進展に合わせて11人まで増加。加茂川ぶどう部会は、現在44戸の農家がピオーネやシャインマスカットなどを生産している。
今後について農林課の山口氏は話す。「栽培面積1000ヘクタールという目標達成に、岡山ハイブリッドメガ生産団地は貢献しました。県からは、さらなる栽培面積の拡大を期待されています。農家の方からも整備を進めてほしいという声があります。まとまった農地が見つかったら整備し、新規就農者を募集するというサイクルになると思います」。
加茂川ぶどう部会では、農地を創り出す取り組みも進めている。品質を高め単価を上げることで、少ない農地面積で同等の収益を確保し、余剰分を新規就農者に提供することもできる。「ぶどうは、葉を間引いたり、ぶどうの実(玉)を綺麗に並べるなど、手を入れる回数を増やすことで品質が向上します。実際にやってみたところ、栽培面積を縮小しても従来の収益を維持できました。新規就農者が集まることで町や県も動きやすくなると考えています」。
ピオーネやシャインマスカットは高い収益が見込めることから競合も多い。「岡山ぶどうが一番おいしいと言って食べてもらえることが一番大事」と大月氏は強調する。ブランド向上では、ぶどう農家全体のスキル底上げが必要だ。「JA岡山では、研究会や講習会などを通じて技術向上をサポートし、高品質で安定したぶどう産地として、知名度の確立に貢献していきます」と二垣氏は話す。その評価はアジア地域にも広がりつつある。海外市場を意識しシャインマスカットに「晴王」というブランドを名付けたのはJA全農おかやまだ。販売増が生産者増につながる好循環となるか。

「JA岡山加茂川ぶどう部会」が日本農業賞「集団組織の部」で大賞をなぜ獲得できたのか。部会や生産者の努力を最大限に生かせたことに、成功の秘訣があるといえるだろう。大月氏はこう表現した。「JA岡山は前に出ることはないけれど、県や町との調整役、卸売市場との交渉など細かい仕事を引き受けて生産者を支えてくれた。そんな存在は他にいません」。互いを思いやる姿勢に努力が掛け合わされる時、産地は豊かになっていくことを再確認した取材であった。
