農業ファンが急拡大!? 「食・農ラ部!」 の突破力

食と農で魅せる“部活”の舞台裏、JAグループ福岡

部員獲得へ、キャンペーンを展開

 県内全域を対象とする活動だけに、公式LINEを通じた情報配信の仕方には気を遣っている。地域レベルの情報はいったん県レベルで集約し、全ての情報を事務局であるJA福岡中央会が一元的に配信する仕組み。ただ情報を配信しすぎると、LINEのブロック機能で受け取り拒否される恐れがある。例えば県西部のJA糸島管内を対象とするイベントを県東部のJA北九管内の消費者に案内しても、気軽に参加できる距離ではないためだ。下手をすれば部員にうるさがられ、受け取り拒否につながりかねない。

 そこで、情報配信の頻度は最小限に抑える。またLINEの友だち登録に併せて簡単なアンケートを実施し、情報配信の拠り所になる年代、性別、居住エリア、興味のある分野、という最低限の情報を登録してもらう。これらを手掛かりに、県レベルの情報は登録者全員に、地域レベルの情報はその一帯に居住する登録者に限定配信するなど、相手に喜ばれるような配信を心がけている。

バスツアーの様子は、RKB毎日放送のラジオ番組「Weekend Live あんたっちゃぶる」内の提供コーナー「食・農ラ部」で3日後に放送された
バスツアーの様子は、RKB毎日放送のラジオ番組「Weekend Live あんたっちゃぶる」内の提供コーナー「食・農ラ部」で3日後に放送された

 最大の難関は部員の獲得だ。イベントや新聞報道を通じて集めてきたほか、公式LINEでの告知やLINE広告を用いてプレゼントキャンペーンを展開、抽選で当たる景品の魅力も活用し、部員の数を積み上げてきた。例えば昨年6~7月には、LINEの友だち登録者を対象に抽選で20人にシャインマスカット1房が当たるキャンペーンを実施。当時、約7900人だった登録者を3700人以上増やし、1万1600人超にまで拡大させることができた。

 ただ部員の構成を細かく見ると、量と質の面においてそれぞれ改善が待たれることもある。

 まず量で言えば、定着率の向上。「プレゼント目当ての一過性の登録者は、公式LINEで配信する情報を受け取らないようにブロックする傾向がありそうです」と川上氏。そんな幽霊部員を生み出さないようにする工夫が求められるという。

 定着率向上への第一歩は、プレゼントキャンペーンの見直しだ。そこで友だち登録者の拡大に主眼を置き、登録者の中からプレゼント当選者を抽選で決める方式は取り止めた。一方、登録者を対象とする食や農に関するアンケートを組み合わせ、回答者の中からプレゼントの当選者を抽選で決める方式を採用した。アンケートへの回答というひと手間を加えることで、プレゼント目当ての一過性の登録者が生まれないようにするためだ。

揃いの法被で足元での浸透図る

 今年3月には、お米に対する興味・関心を問うアンケートを実施。回答者の中から抽選で50人にお米2kgが当たるキャンペーンを展開した。告知には公式LINEと新聞広告を利用した結果、回答者は1000人近くにまで達した。プレゼント目当ての一過性の登録者が生まれないような新たな工夫を加えたにも関わらず、当時1万3000人だった登録者を100人以上積み増し、新規の部員獲得にもつなげることができた。

 また質の面では、部員の年齢構成が課題に上がる。LINEの友だち登録者を対象に今年3月に実施したアンケート結果によれば、小中高生の子どもを持つファミリー層が全体の約45%を占めるとはいえ、ボリュームゾーンは40~60代とやや高め。川上氏は「『食・農ラ部』のターゲットは、まさに子どもの食に対する感度が高いであろう子育て世代です。現状からすると、20代をもっと増やしたい」と調査結果を分析する。

農畜産物直売所には、いまが旬のサツマイモや福岡県内で開発・製造された6次化商品などが目白押し
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農畜産物直売所には、いまが旬のサツマイモや福岡県内で開発・製造された6次化商品などが目白押し
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農畜産物直売所には、いまが旬のサツマイモや福岡県内で開発・製造された6次化商品などが目白押し

 子育て世代の部員獲得に向け、イベントの開催時期や企画内容には工夫を凝らしている。昨年8月には、「『食・農ラ部』夏休み親子イベント」を福岡市内で開催。「味噌玉づくり」や「野菜の種まき」など食や農の体験ワークショップを実施する一方、野菜芸人の道を開拓する小島よしおさんを招き、その人気を集客に結び付けた。

 合わせて若年層の部員増に寄与しそうなのが、地元学生と連携した活動である。福岡市内にキャンパスを置く中村学園大学や公立大学法人福岡女子大学は学内に栄養や食に関する学部・学科を持つ。そうした事情もあり、これらの大学はかねてより県内のJAと「大学生アグリスクール」と呼ぶコラボ活動を実施してきた。いまではその活動も、「食・農ラ部」の一環。この場を通して、LINEの友だち登録も呼び掛けている。

 立ち上げから2年半。「当初は反応が鈍かったものの、いまでは小規模なイベントなら『食・農ラ部』の公式LINEを用いた募集告知だけで定員を満たせるようになりました」。川上氏は「食・農ラ部」の現状をそう評価する。

法被を羽織り、イベント運営に奔走するJA福岡中央会 農政広報部 くらし広報担当 次長 宮崎摩利子 氏
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法被を羽織り、イベント運営に奔走するJA福岡中央会 農政広報部 くらし広報担当 次長 宮崎摩利子 氏
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法被を羽織り、イベント運営に奔走するJA福岡中央会 農政広報部 くらし広報担当 次長 宮崎摩利子 氏

 今後の課題は、JAグループ福岡というオール福岡の取り組みとして、各JAに自分事として捉えてもらうこと。「JA単位でそれぞれ事情があるため、『食・農ラ部』としての活動を平準化するのは難しいと感じています。しかし、各地域での部員増に向け、趣旨は再度徹底したい」(川上氏)。事務局を務めるJA福岡中央会では、秋のイベントシーズンに向けあつらえた揃いの法被(はっぴ)で足元での浸透を図る。「食・農ラ部」の意欲的な取り組みから、しばらくは目が離せなさそうだ――。