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実は「JJエリアセンター但馬」の設立前に、農協観光とJALの業務提携がある。2022年7月、両社は一次産業の活性化や地域活性化に役立つ取り組みを通じて地域課題の解決を促そうと、契約締結に至った。
業務提携の背景には、旅行業界を取り巻く環境変化がある。今後の人口減少を見据えると、持続可能な成長分野への取り組みは不可欠だ。
実際、農協観光では、事業の柱に据えてきた生産者向けの団体旅行が低調に推移する中、地域共創事業や国際交流事業などに事業領域を広げてきた。新たな人流・商流の創出を通じた地域活性化にも取り組むJALとの業務提携で、新たな事業領域でのビジネスをさらに推進していく狙いだ。
JJエリアセンター構想は、この業務提携から発展・拡大している。拠点を全国10カ所に置くのが目標で、その第一弾がJAたじまの但馬地域である。
JAたじま側の悩みを、黒田氏はこう打ち明ける。
「私たちの一番の目的は、生産者の所得向上。農畜産物を適正な価格で販売するのが、最大の使命です。ただ地域内だけでは、消費地として限界があります。地域外にも売らなくてはなりません。ところが直売所での販売や卸売市場への出荷を除くと、手立てがない。そこに限界を感じていました」
JAたじま、農協観光、JAL、それぞれの持ち味は異なる。それらを掛け合わせ、限界突破に向けて新たな価値を生み出したい――。組織間連携の妙味は、そこにある。
地元JAの持ち味は、地域密着にほかならない。どんな生産者がどんな特産品を出荷しているのか、地域内の実情はしっかり掴んでいる。
但馬地域で特産品として知られるのは、例えば「コウノトリ育むお米」である。コウノトリの野生復帰を果たしたこの地域では、生育環境を守るため、栽培期間中は水田に農薬や化学肥料を使用しない。その安全・安心に加え、炊き上がりから時間が経っても食味がほとんど変化しないという点が、消費者から高い評価を得る。
農協観光は、地域内の特産品や生産者にストーリーを見出し、地域外から人を呼び込むための観光資源に昇華させるのが、持ち味だ。
梅澤氏が具体例を語る。「『コウノトリ育むお米』で言えば、私たちの立場で伝えるべき価値は安全・安心や食味だけではない。約40年かけて野生復帰を成し遂げた点です。観光視点で見直すことで、別の付加価値を生み出します」
JALは、地域資源をマネタイズするのに欠かせない存在だ。ブランド力の後ろ盾を持ち、個人・法人の顧客基盤を有する。しかも、地域内のコウノトリ但馬空港と大阪国際空港(伊丹空港)との間に1日2便、定期便を運航する。
一般向けの情報発信力にも秀でる。自社で複数のWebサイトやSNSを運営するだけでなく、「JALふるさとアンバサダー」と呼ぶ地域の魅力発信担当も置く。アンバサダーは、地域活性化に尽力したいという思いを持つ客室乗務員だ。
「地域資源の価値をストーリー仕立てで伝えるにはWebサイトやSNSが適しています。閲覧者数はJAたじまや農協観光との間で圧倒的な差があります。但馬地域の魅力をJAL発信で広めていくのが、理想です」と梅澤氏は期待を寄せる。
三者三様の持ち味を見渡せば、シナジーは無限大だ。素材としてのモノやヒト、コンテンツ化したストーリー、地域間をつなぐ媒体と顧客――。これらは互いに補完関係にあるだけに、掛け算は成立させやすい。
互いの関係性を生かした新たな企画も生まれつつある。
素材は、ピーマン。JAたじま管内は、関西最大級の生産量を誇る。気候上、昼夜の温度差が大きいため、甘みが強い。それが、高評価の秘密だ。
ところが、完熟すると赤くなる。食味に定評はあるが、足が早く、JAとして卸売市場には出荷できない。加工した上で出荷する手はあるが、加工に必要な設備に投資したり人手を確保したりしなければならない。現状は廃棄処分だ。
何か活用策はないか――。そこから、企画が始まった。
いま思い描くのは、企業研修で農業体験に訪れる企業と赤ピーマンのマッチングである。「農業体験の一環としてビジネスアイデアを話し合う場を用意すれば、問題解決の糸口が見つかるかもしれません」。梅澤氏は可能性に賭ける。
「JJエリアセンター但馬」設立から約3年。黒田氏をはじめとしたJAたじまは生産者との仲介役に徹してきた。その中で、生産者側の意識変容も感じるという。
「当初は地域外からの来訪者を受け入れてくれそうな生産者を中心に話を持ち掛けていました。しかし最近は、活動実績が積み上がってくる中、受け入れを新たに承諾してくれる生産者が徐々に増えてきています」
JAたじまでも2026年度、取り組み体制の強化を予定する。「本店を中心に検討チームを新編成し、『JJエリアセンター但馬』との話し合いの場を月1回程度で持つ方針です。活動にさらに深く関わっていきます」(黒田氏)。
地域の活性化を自分ごととして捉えていけるように、JAたじま自らも、「JJエリアセンター但馬」の活動に一段とエネルギーを注いでいく。
