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生産者の負担感にも配慮が必要だ。生産者はJAに販売委託する野菜や果物を近くの集出荷施設に持ち込む。必要な費用や手間は自己負担。販売の一元化に伴い持ち込む先が管内1カ所に集約されれば、負担増は我が身に降りかかる。
こうした事情から、生産者の合意を得られた品目でもナス以外は選果施設を管内1カ所に絞り込んではいない。キュウリは管内2カ所、イチゴは管内4カ所で選果し、負担軽減を図る。
集荷から納品までのリードタイムが長引くという課題も生じ得る。販売の一元化に伴い出荷量が多くなると、地元の物流会社では配送能力が追い付かなくなることもあるからだ。配送し切れない分は、冷蔵保管施設で一旦預かり、出荷を1日遅らせる。配送は可能になるが、納品までの日数は1日延びる。
イチゴは実際、集荷から納品まで最長3日間だったのを、販売の一元化に伴い同4日間に引き延ばした。「ドライバー不足で集荷に手間取るようになっていました。そのため、集荷から納品までのリードタイムを最長4日間は欲しい、という物流会社の要請に応えた結果です」と光野氏は事情を明かす。
生産者の合意を得るにあたっては、品質確認を目的に輸配送試験を実施した。「試験の結果、リードタイムを4日間に延ばしても品質上の問題は生じないことが分かりました。お墨付きを得た上で生産者の理解を求めました」(光野氏)
販売の一元化を進める中で、徐々に限界も見え始めていた。
青果物コントロールセンターの設置によって、販売担当者間の連携が促され、組織全体として販売計画を立てられるようになりつつあった。しかし物流体制は、従来通り。計20社もの物流会社が輸配送業務を受け持つ仕組みは変わらなかった。
限界とは、販売と物流の連携。光野氏が悔しさをにじませる。「JAさが全体として販売計画を立てられても、それを実行に移すことが思うようにできませんでした。商流をJA内で合意できても、物流にまで落とし込めなかったのです」
何しろ、調整業務が煩雑だ。商品の品目は多数にわたる。それらの納品先や出荷量を、生産者や各集出荷施設の販売担当者はもとより、物流会社とも連携した上で、日々決める必要がある。「マンパワーが足りませんでした」(光野氏)
物流会社側にも事情はある、と光野氏は打ち明ける。「地元の物流会社だけに、地域とのしがらみがあります。この当時はまだ、集出荷施設に出入りし集荷できる物流会社が、施設ごとに固定化されていたのです」
この限界を乗り越えるため、JAさがは全農物流と手を組む。2021年4月、「全農物流との物流対策準備室」をまず立ち上げ、課題整理や試験輸送に取り組んだ。準備期間を経て22年9月には、同社との間で物流業務委託契約を締結した。
全農物流は契約上、①地元の物流会社への業務の振り分け②各物流会社への運賃精算③物流業務に関する企画・提案――などの役割を担う。JAさがでは、地元の物流会社との間に同社を挟むことで、物流会社を地域のしがらみから解放し、販売計画を物流にしっかり落とし込める体制を築いたのである。
こうした物流体制なら、全農物流の差配によって物流効率の向上が見込める。輸配送に用いるトラックの車両削減や最大積載重量に対する積載率の向上を実現できれば、物流コストの抑制も可能だ。集荷や出荷に伴う物流のコストは、生産者の負担。これらのコスト抑制は、生産者の所得向上をもたらす。
言わば物流の一元化である。それによって実現できたのは、地域物流と幹線物流の分離だ。地域物流では、管内の集出荷施設で主に中小ロットの品目を集荷し、物流センター内のストックポイントまで配送する。かたや幹線物流では、それらの品目をまとめ、方面別に仕分けした上で納品先まで配送する。
その結果、積載率の引き上げが可能になった。ストックポイントにまとめられた複数の品目を方面別に1台の車両に混載できるからだ。「物流の一元化を図る以前は、積載率20~30%の便も見られました。今では、最大80~90%まで引き上げられています」と光野氏。固定費のムダを抑えられるようになったという。
物流の一元化と並行して取り組んできたのが、物流システムの独自開発である。集出荷施設の販売担当者がタブレット端末等で、品目別・市場別に出荷量を入力するものだ。これを基に青果物コントロールセンターの物流担当者が販売・物流双方の観点から最終出荷量を確認し、結果を全農物流側と共有する。
システム開発の狙いは、まずは青果物コントロールセンターの物流担当者が出荷先・出荷量をタイムリーに把握し積載効率を上げること。「各集出荷施設の希望出荷量を青果物コントロールセンター側で早めに把握できるようにすることが当面の目的です」(光野氏)
将来的には、全農物流の業務への活用まで視野に入れる。
全農物流はこのシステム上の情報を基に、物流会社の車両を手配し、納品先まで商品を配送する。その後、物流会社との間では運賃の精算業務が発生する。「全農物流からは、この作業負担が大きいと聞いています。システム上の納品情報を基に、運賃の精算業務を自動化するのが最終目標です」と光野氏は将来をにらむ。
中東情勢の悪化で今、原油由来の製品が調達難に見舞われ、さまざまな分野でコスト高が生じている。農業用資機材も例外ではない。しかも人件費の高騰で物流コストが上昇基調にある中、生産者にとってコスト抑制の取り組みは不可欠だ。青果物コントロールセンターの働きは、そこを強力にサポートする。
「生産者にはやはり、営農を続けてほしい。それには所得向上が不可欠です」と光野氏は強調する。販売の一元化も、物流の一元化も、そのための有力な手段。青果物コントロールセンターは、売り上げ増に向けて全国の市場と渡り合うJAだからこそ、またグループ内に物流会社を抱えるJAだからこそ、選択し得る王道なのである。
