オールジャパンで農産物・食品の輸出1兆円を目指す

農林中金とJA全農が全面支援した「香港フード・エキスポ2017」

香港フード・エキスポ2017特別インタビュー
農林中金 中島隆博氏に聞く

香港フード・エキスポでアジア市場を拓く
農林中金が「食の輸出」支援を拡大

JAグループの中で、全国農業協同組合連合会(以下、全農)と肩を並べて「食の輸出」に関して主導的な役割を果たしているのが農林中央金庫(以下、農林中金)だ。同金庫では、昨年設置した「食農法人営業本部」が核となり、日本の食の輸出事業を積極的に支援している。香港フード・エキスポもこの取り組みの一環。ここでは、食農法人営業本部 執行役員 営業企画部長の中島隆博氏に、同金庫の戦略と現状について聞いた。

農林中金は、香港フード・エキスポを始めとする食の輸出の支援をどのようなグランドデザインの中で捉えていますか。

中島 私どもの一番の目的は、2兆4000億円と言われている農林水産業の生産者所得をどのようにして上げていくかに尽きると思っています。この対策は3通りしかありません。1つは生産者の売上そのものの増加、もう1つは生産者の仕入れ原価の低減、3つ目は販売管理費の低減です。

農林中央金庫 食農法人営業本部 執行役員 営業企画部長の中島隆博氏(写真:佐藤久)

 食の輸出は、このうちの売上の増加のための1つの具体策です。国内市場だけで売上を増やそうとしても、日本の人口が減っていく現状の中で増やすことは簡単ではありません。それこそ、バリューチェーンの川上にいる生産者と、川下にいる加工業者や小売、外食産業との間で取り合いになってしまいます。これでは生産者の売上を増やすことは難しい。

 ところが、輸出の拡大については、バリューチェーンに属している誰もがハッピーになれるわけです。それは国内のみならず、日本の食を求める海外顧客も含めてのことです。JA・JF(全国漁業協同組合連合会)グループをあげて食の輸出に注力する理由はここにあります。

 具体的には全農と連携しながら「香港フード・エキスポ」を始めとする海外商談会の開催と参加支援、輸出に関するセミナーや広報誌発刊などによる情報提供、農林水産業への新規参入・規模拡大に加え、生産性向上や高付加価値化等をサポートするファンドや助成、食の輸出の拠点となる海外企業への直接投資といった取り組みを進めています。さらに、最近では、「食農インバウンド・グリーンツーリズム」として、地域の農業者やJA・企業等と連携し、香港や台湾のインフルエンサーを対象にモニターツアーを開催しています。参加者にはSNSを使って日本の食や料理、農産物の魅力を海外に発信してもらうことで、将来的には、新たな「地域ブランド」の発掘につなげていくことを目的に展開しています。

そういった取り組みの中での、香港の位置づけについてお聞かせください。

中島 食の輸出を考える時に、日本にとって香港はダントツで重要な地域と言えます。日本食の普及の度合いや親和性、さらに香港から日本への観光客の比率、生鮮食品を運べる距離の近さなど、あらゆる面で適しているのです。香港そのものの市場が大きいということと、後ろに控える中華圏という巨大な市場の窓口としてもきわめて重要です。

 中華圏、アジア圏への輸出を雁行にたとえると、雁行の先頭を行くのが香港です。その中でも最も重要なのが香港フード・エキスポであり、これは海外の商談会の中でも一番古くから取り組んでいるものです。

香港フード・エキスポ2017の結果はいかがでしょう。

中島 総括すると次のステージを目指すために良い結果が出たと考えています。まだ正確な数字は出ていませんが、当初の見込みよりも2~3倍近くの成約につながりそうな気配を感じています。もちろん取引が大きく発展するかどうかは、これからのフォロー次第ですが、実際のビジネスを創出するための入口としてはかなりの手応えを持っています。

 これまでの香港フード・エキスポでは、まず日本の農畜水産物の美味しさについて知ってもらうことが重要でした。これからは恒常的な商流を築きあげることが重要です。このためにはエキスポ単発で終わらせるのではなく、そこから実際のビジネスの流れ、商流を途切れないようにしていくことが重要になります。

そのための方策はありますか。

中島 ひと言で言えばプロダクトアウトからマーケットインへの移行をどのように実践していくかでしょう。実際に、輸出先にものを持っていって初めて現地の需要がわかることがあります。現地の需要をつかむために一番効果的な方法は、海外の需要家と結び付いている企業等と金融的な結び付きをつくり、現地パートナーとして協業できる態勢を整えていくことです。まずは日本から進出している企業と連携すると同時に、現地の企業を掘り起こしていきます。

 農林中金は機関投資家として、グローバルな投資で培った海外のネットワークを持っています。そのネットワークを通じて掘り起こした企業に農林中金自らが出資し一緒に取り組んでいる事業もあります。

今後、食の輸出をさらに増やしていくための課題と対策について考えはありますか。

中島 現地で開拓した市場をどう広げていくかが大きな課題です。今は現地のニーズに対して、その時に日本から出荷できる商品を提供しているというのが現実です。

 例えば、香港で日本のいちごが市場に出ると、即売り切れになってしまい、後が続かない。国内の場合ですと、季節によって産地間のリレーができる体制があるわけですが、海外向けにはこれがありません。こうした輸出が途切れない産地リレーの体制をどう構築するかが課題です。

 さらに、生鮮である農産物を新鮮なまま輸送するためのコントロールド・アトモスフィア(CA:空気の調整)やコールドチェーンなどの温度管理技術、さらに通関業務の簡素化や、輸出用のパッケージの一元化など、ハード、ソフト両面で、さまざまな課題を一つひとつ解決していく必要があります。

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