出荷ができない! ニラ農業の危機を救え

自動化センター設立で産地衰退の危機を防いだ高知県・JAコスモス

新規就農の足かせにもなる

 そぐり手の不足は、なにも既存のニラ生産者だけの問題ではない。この地域の新規就農の拡大にも支障をきたすような問題だ。つまり、そぐり手の不足は、今後、産地を拡大していけるかどうかの明暗を分けるものにほかならない。地域の将来像すら危ういものにしてしまう、早急に手を打つべき大問題なのだ。

 平野さんは、「ニラは近年単価的にも安定している品目で、ニラをやりたいという新しい人が出てきても、そぐり手を集められなければ出荷ができません。結局、新規就農にも大きな足かせとなっています」と語る。

左:JAコスモス 営農販売部 営農指導課の平野辰彦さん。JAコスモスでニラそぐり機の導入とそぐり・計量結束センター設置を担当した
右:JAコスモス 営農販売部 部長の曽我浩明さん。地域の農産物販売の方向性、地域の農業振興を俯瞰的な立場から考える(写真:ともに佐藤久)

 地域の農産物販売を俯瞰的に見る立場の、JAコスモス 営農販売部 曽我浩明部長はこう続ける。「ニラについては比較的若い生産者が就農されている作物ということもあり、農協側としてはこの地域として伸ばしていかなくてはならない大切な作物と認識しています。比較的栽培がしやすく、トマトやイチゴなどの作物よりも若い人が取り組みやすい。一方で、若い人にとってそぐり手の確保はきわめて難しい状況です。特に、IターンやJターンでこの地域に来た人たちはそもそも地域に知り合いが少ない。いわゆる人縁・地縁がないわけで、そうなるとそぐり手を頼むこと自体が難しいわけです」

 県の農業指導士として新規就農者の面倒を見る田村さんは、担い手の募集面にも影響が出ていたと危機的な状況だった当時を振り返る。「そぐり手不足の問題があって、研修生の受け入れを一時ストップしてもらったことがありました。研修生に来てもらい、たとえ就農したとしても、ただでさえ足りないそぐり手さんの取り合いになってしまう。今は募集そのものを止めてくれ、と役場にも県にも頼んだことがあるくらいです」

 過疎と高齢化に悩む地方において、強い農産物を作ることが地域振興のカギを握る。新規就農者の獲得と育成は、このためには最重要と言ってもいい。それができないということは、町おこし、村おこしといった地域振興そのものに大きなマイナスが生じることを意味する。

のっぴきならない事態

 このように、田村さんが束ねるニラ生産部の認識もJAコスモス側の認識も、事態がのっぴきならないものだということで一致していた。そして、両者のここからの対応は迅速だった。

 「JAコスモスとしても、以前から近隣の農協である高知はた農業協同組合(JA高知はた)さんがそぐり作業の効率化ができるニラそぐり機を導入して使い始めたという話は耳に入っていました。費用がかかるが、さあ、どうするかと考えていたところに、田村さんを始めとするニラ生産部・生産者の方から熱い、強い声が上がってきた。その声に農協が答えなくてはいけない、ということで動き始めた」と曽我さん。

 JA高知はたでは、やはりそぐり手の労働力の確保が難しいことから、平成25年(2013年)に全国で初めてそぐり機を導入。同JAの佐賀支所園芸集出荷場で、このにらそぐり機や結束機などを導入して、調整(そぐり)から計量結束、小袋包装までを一貫して行っている。そぐり機導入とそぐりセンター設置のパイオニアだ。「立案から実際の導入まで5年をかけました。出荷量の増加やニラへの品目転換などの声が上がり、生産者からもそぐり機を導入してよかったとの声が上がっている」(JA高知はた 佐賀支所販売経済課 販売係 浜田知也さん)。

 JAコスモスでは、生産者側の代表としてニラ生産部の田村部長が先頭に立ち、農協側では営農販売部が窓口となり、両輪として動き始める。JA高知はたの先行事例を元にしながら、管内のニラ生産者の声を2度のアンケート調査で掬い上げると共に、JA高知はたへの視察を繰り返し、そぐり機を導入した作業所「そぐり・計量結束センター」の設立構想を進めたのだ。センターの完成は今年(2017年)の3月。2015年7月のアンケート調査から、完成までわずか1年8カ月の“はやわざ”だった。

平成27年(2015年)7月 「そぐりセンター関連アンケート」を部員に配布、意向調査を行う
同 10月 「そぐりセンター」構想に関する説明会を実施
平成28年(2016年)1月 労働力調査アンケートを実施
同 4月 JA高知はた佐賀支所ニラ出荷場視察
同 5月 関係機関と選別・調製ライン導入に向けて協議を開始
同 7~8月 役員会及び、定例会でライン導入に向けて了承を得る。佐川町に事業支援への要望書提出。県の産地・流通支援課と協議し、「強い農業作り交付金」にての実施を合意
同 9~10月 JAコスモス定例理事会でライン導入を了承。事業実施計画書の作成・協議・提出
同 10月 「強い農業作り交付金」交付決定。JA全農こうちによる基本設計
同 12月~翌年1月 プラント工事着工(12月)、施設整備工事着工(1月)
平成29年(2017年)3月 そぐり・計量結束センター完成(3月末)
JAコスモスがそぐり機を導入した「そぐり・計量結束センター」を完成させるまでの経過。アンケート調査から、センター完成まではわずか1年8カ月しかかからなかった