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主要な販路に成長したオンライン販売も、同じ理由から取り組み始めたものだ。しかも自前の店舗と同様、商品の構成やパッケージなど細部にも自分流を貫ける。商売人としてはそこにもまた、商品の価値を高める余地を見いだす。
「食べてもらう前にまず、パッケージが目に入ります。そのデザインも重要です。また、ご購入いただいた方が商品そのものを取り出しやすいようにパッケージの造りを工夫することにも、気を配る必要があります」(中井氏)
販路を独自に開拓してきた中井氏を、「販売が上手」と中川氏はほめそやす。感心するのは、ブランド力の高め方だ。「共選の仕組みでも、ブランドとしての付加価値を打ち出せれば、実需者側の買取価格を引き上げられるはずです」
目指す方向性は、中井氏と変わらない。ブランディングを個人で徹底するか組織で仕掛けるか、その違いだけ。「販路の分散は、時代の流れです。むしろそうすることで、事業拡大につなげていってほしい」と中川氏は願う。
成長軌道に乗る中、中井氏は事業拡大を2度決断している。
まずはシイタケ事業への進出だ。アスパラガスが春夏の品目であるのに対し、シイタケは秋冬の品目。年間を通じて売り上げを立てられる。
提案したのは、シイタケの営農指導も担当する中川氏。「まだお子さんが小さく、手が掛かる時期。それでも、自分のペースで生産可能なシイタケなら対応できるのではないか、と声を掛けてみたのです」。新規事業への進出を提案するとともに、菌床シイタケの生産者組織が主催する全国大会への参加も呼び掛けた。
中井氏にとっては渡りに船の誘いだった。農業者に転じて3年。アスパラガスの生産・販売に手応えを感じ、秋冬の収益品目を欲していた。一方、同業者とのつながりのなさに困った経験から、全国大会への参加には魅力を覚えた。同じ三重県内のシイタケ生産者との参加は、同業者とのネットワークを築く機会になる。
全国大会での圧巻は、同時開催の品評会だ。S・M・Lサイズの規格品3パックで1000点を超えるシイタケが全国の生産者から出品される。傘の形状・色沢や水分などを基準に従い審査した結果、個人には最優秀以下6つの賞を贈る。
視察時にこの光景を目の当たりにして、中井氏は将来の受賞を心に誓う。一つには、商品としての価値を高めるため。もう一つは、第三者から評価を得るためだ。「当時、見た目の印象で人を見下し、農業を始めても長続きはしまいという周囲の声も耳に届きました。第三者から評価を得ることで見返してやろうと心に決めました」
4年前には、夫がサラリーマンから転じるのに併せて、アスパラガスの生産規模を倍近くまで広げた。義父から継いでいた生産規模は、ビニールハウス8棟・2500m2。それを、同15棟・4300m2まで増やしたのである。
中井氏の夫は、休日には中井氏をサポートしてきた。担当は、主に肉体労働。圃場の草取りなどを担ってきた。ところが、農業一本で生計を立てられる見通しが立ったことから、平日もサポートに徹する暮らしに切り替えた。
その後、義父から継いだビニールハウス2棟は、ブルーベリーの生産用に切り替える。理由の一つは、株の古さ。「義父の代から数えて通算15年以上経過していたため、収量を徐々に落とすようになっていました。そこで、ハウスの一部で試しにブルーベリーの生産に挑戦することを決めたのです」(中井氏)
子育てとの両立に苦労しながらも、中井氏はこの10年間を懸命に駆け抜けてきた。事業拡大のほかにも、目に見える成果が上がる。
2026年2月開催の菌床シイタケの品評会では、金、銀、銅、奨励の4賞受賞に輝くと同時に、4年連続金賞受賞(第33回~第36回)の快挙まで成し遂げたのだ。
さらに2023年度には、農山漁村男女共同参画推進協議会が主催する「農山漁村女性活躍表彰」の女性起業・新規事業開拓部門で、最優秀の農林水産大臣賞に輝いた。優れた事業展開モデルで産地の活性化に寄与した点が評価された。
地元では今や、手本になる。アスパラガスの出荷管理については中井氏のやり方を他の生産者に学んでもらおうと、中川氏が作成した資料をもとに情報共有を仕掛ける。例えば収穫後の保管。真っ直ぐさを保つように、中井氏は10本ほどの束を新聞紙でぎゅっと強めにくるみ、水につけて立てておく。中川氏によれば、これがベスト。生産者間で意思統一を図って品質向上につなげているという。
「農業はビジネスとして面白い。自ら生み出したものを売り、買ってくれた人が喜んでくれる――。そこに、醍醐味を感じます」。中井氏は言い切る。言い出したら引き下がらないという推進力、女性を理由に壁を築くことのない家族や地元JAのサポート、この2つが、一人の女性を地元で誇れる農業者に生まれ変わらせた。
2026年は国連が定める「女性農業従事者の国際年」。中井氏のように地域で活躍する女性農業者は、農業生産を支え、地域の食や農、くらしを支える観点からも大きな役割を果たしている。

中井氏はこれまでを振り返り、何より出会いに感謝する。なかでも、瑞雲ファームの原点であるアスパラガス栽培の営農指導に始まり、シイタケの新規導入など、同ファームの成長を支えてきたJAいがふるさとの中川氏。「アスパラガスのことを熟知している営農指導員は、そうはいません。私が事業を継ごうと決めた時の指導員が『しんちゃん』で本当に良かった。絶好のタイミングでした」
