異例のスピードでブランド化した「いもジェンヌ」

JA新潟みらいが、商・工・官・学と連携して販売1億円超に

生産拡大に備えて貯蔵庫を整備

 JA新潟みらいでは、さらなる拡大を念頭に「いもジェンヌ」の貯蔵庫を作るなど、インフラの整備も進めている。

 「今までは倉庫会社に預けていましたが、作付面積が増えていく中で自分たちで管理することになりました」とJA新潟みらい 営農経済部の渡邉辰洋さんは語る。今年の9月から稼働した貯蔵庫では、15キロのコンテナを約1万8900個まで収納できる。これで290トン近くの貯蔵が可能だ。現状では生産者が自ら貯蔵している分と合わせて、すべて貯蔵できる規模になっている。今後拡大が続けば、さらに以前の倉庫の活用などを含めて、貯蔵規模の拡大も考えていく必要が出てきそうだ。

JA新潟みらい 営農経済部 渡邉辰洋さん。新潟大学の学生だった時に「いもジェンヌ」のブランド化プロジェクトに参加、「いもジェンヌ」のブランドデザインを手がけた。渡邉さんはブランド化の取り組みに強く惹かれ、「いもジェンヌがやりたい」とJA新潟みらいの門を叩いた。今は、かんしょ部会の事務局を務め、「いもジェンヌ」の販売を担当している(写真:佐藤久)
この9月から稼働が始まった「いもジェンヌ」の貯蔵庫。庫内の温度は平均で13℃に保たれる。「いもジェンヌ」は収穫後、一定期間この貯蔵庫で追熟されることで甘みが増す。貯蔵庫はJA新潟みらいが米倉庫の内部を改装して作ったものでこの9月から稼働し始めた(写真:JA新潟みらい提供)

スイカや大根と作り分けが必要

 順調に伸びてきた「いもジェンヌ」だが、JA新潟みらいは今後、作付け面積を30ヘクタールまで拡大したいと考えている。

 懸念されるのは、昨年まで勢いよく伸びてきた作付け面積の拡大ペースが今年に入って少し鈍っている点だ。

 人気もあり、作付け面積も増えている「いもジェンヌ」だが、この地区ではスイカや加工用大根の生産が盛んで、いずれも収益性は高く、強い需要がある。「いもジェンヌ」の生産者もそもそもは主力農産物としてスイカと加工用大根を作り、それに加えて「いもジェンヌ」を作り始めた人が多い。例えば、かんしょ部会長の小竹さんは2ヘクタールの畑で夏のスイカと秋の大根を作り、別の1ヘクタールの畑で「いもジェンヌ」を作っている。

掘り上げた「いもジェンヌ」を手にする、JA新潟みらい かんしょ部会のツートップ。部会長の小竹光浩さんと、副部会長の本間真人さん。(写真:佐藤久)

 「収益性の面では一番高いのがスイカ」(小竹さん)であり、加工用大根も計算できる作物だ。「5年程前には大根が余るような状況があって、作付け面積を少なくしていたんですが、ここ3年は加工用の大根に高値が付いて、そのため、いもジェンヌの面積が増えていないところもあります」と、加工用大根の生産者でもある小竹さんは複雑な胸の内を明かす。

 しかも、農作業の面で季節が重なる点も悩みどころだ。夏の間はスイカの受粉と「いもジェンヌ」の苗の定植の時期が重なり、秋には大根と「いもジェンヌ」の収穫時期が重なってくる。そもそも生産者の高齢化が進み、担い手の数が限られているこの地域としては、需要があるからといっておいそれと「いもジェンヌ」を増やせない事情がある。

 古俣さんも「何を作ればいいかという点から見ると、この地区はやはり加工用大根。収益性はさつまいもが上ですが、古くから漬けもの屋さんとのお付き合いがありますから」と作物の組み合わせと、販売面での難しさについて語る。

地域期待のブランドを今後どう伸ばすか?

 かつての葉たばこに代わって、「いもジェンヌ」という期待の作物ができたことは地域にとって喜ばしいことだが、作業時期の重なりや生産量の拡大についてJAと生産者とで議論を深めていく必要がある。

 担い手拡大の必要性もある。かんしょ部会の小竹さんは、「地元の方は手一杯でこれ以上は無理かもしれないのでJA管内で近隣の生産者にアプローチしたい」と語る。他のJAにまたがった連携も必要になってきそうだ。

 古俣さんは、「隣のJA越後中央の管内でも農地が境界なくつながっているところがあります。農協の枠を超えてJA越後中央の管内の生産者にも作ってもらえないか交渉しています」と農協間連携の可能性を語る。

 このようにいくつかの課題は残るが、地域期待の「いもジェンヌ」はスタートアップに成功したことは間違いない。JA新潟みらいでも、農協が関わったブランド立ち上げとしては「異例の成功」(小俣さん)と捉える。

 後は、生産技術面での改善や他の作物との作り分け、さらには農協間連携や担い手の拡大など、いくつかの課題をどう解決していくかだ。今後ブランドを充実させ、さらに大きなものに育てられるかどうかは、生産者とJAの腕にかかっていると言えるだろう。