世代交代のお手本! 農業は楽しい儲かる仕事

~若者が集結する地域を支えるJA岡山西の流儀

販売はすべてJA岡山西に委託

 総社もも生産組合の販売を担うのが、JA岡山西である。ただし、自分たちで販路開拓も行う。JA岡山西は、市場や仲卸に同組合の桃を売り込む。一方組合側は、店舗を攻める。「ターゲットとして定めた店に営業に行きます」と秋山氏は言うが、実は戦略がある。事前に市場や仲卸と各店舗の流通の関係性を調べておくのだ。結果、店舗が市場や仲卸に総社もも生産組合の桃を指名買いすると、既にJA岡山西から調達した桃がある、もしくは仕入れ先がJA岡山西であることを知っている、という状況ができる。市場以外の販路に関しても、販売はすべてJA岡山西の担当だ。JA岡山西が約10社にも及ぶ取引先と個別に契約を結び、取引を行っている。その理由を秋山氏は、「個々の企業と取引をして契約、与信管理、代金回収などをするのは大変です。そこはJAに任せることで我々は生産や営業活動に専念できます」と語る。

 また、JAの物流ルートも魅力だった。岡山はぶどうの産地でもあり、空港から大都市に向けた空輸ルートを既に持っていた。JA岡山西と組むことで、そのルートも使える。「最盛期は毎日6~7個のコンテナで送ります。飛行機で送れば翌日の朝までに市場に届き、昼にはお店に並びます。自分たちで新たに空輸ルートを開拓しようと思ったら、かなり大変だったでしょう」(秋山氏)。

JA岡山西 吉備路アグリセンター 河内 智洋 氏

 JA岡山西について秋山氏は、「産地の方を向いてくれるのでやりやすい。担当者が組合と一緒にやろうと協力してくれます」と評価している。一方、JA岡山西で桃とぶどうの販売を担当するJA岡山西 吉備路アグリセンター 河内智洋氏は、同組合について「みんな楽しそうに働いています。ベテランから若手までとても仲がいい」と語る。互いを尊重し合い、それぞれの強みを生かした結びつきがそこにある。

独自の生産方法を確立しマニュアル化

 生産方法も独特だ。他の桃の産地では、花が咲き終わって実がなってから摘果を行うところもある。しかし、同組合では12~3月に摘蕾(てきらい)を行い、そもそも実のなる数を減らす。一旦なった実の細胞は、大きくはなるが数は増えない。しかし、摘蕾をすることで実の数が減ると、果実当たりの細胞数が増えるためよりきめ細かい果肉となるのだ。そのため、同組合では、およそ90%の蕾を落としてしまう。もちろん実がなった後も、さらに摘果を行う。

 樹間を広く取るのも特徴だ。さらに、剪定(せんてい)も肥料も控えて木の生育を落ち着かせ、葉の数を少なめにする。いずれも、果実にまんべんなく太陽が降り注ぐようにするためだ。秋山氏は、「木が勢いよく成長すると、葉に栄養が行って味が落ちるので、なるべく落ち着かせるように育てます。他の産地から見学に来られると、木の勢いのなさに皆さん驚かれます」と笑う。

品質向上のため、桃の生産方法の改良を重ねている

 同組合の圃場には一面に草が生えているが、そこにも意味がある。雨が多いと木が水を吸って成長し、果実も水分が多くなってしまう。そこで、長雨が続いても草に水を吸わせ、木が余分な水分を吸わないようにしている。これにより、天候に影響を受けにくくなるのだ。これらの栽培方法はすべてマニュアル化し、新規就農者に指導。組合全体の品質向上に役立てている。

 さらに、全員で研究会を実施。畑の木を題材に、その時々の管理作業でどうすればさらなる品質向上ができるかを話し合う。秋山氏は、「現在の栽培方法が完成形とは思っていません。もっとよくしていきたい。そのため、50年目の経験者も2年目の新人も同等に議論します。新しい視点が刺激になる場合もあるからです」と語る。

農業を高校生の進路の一つにしたい

 このような人材育成プロセスの確立や栽培方法のマニュアル化により、天候に影響を受けにくく高品質な桃生産を実現。面積当たりの収入がある程度予測できるようになり、就農する際の経営面の不安も軽減できた。自前の選別施設が不要かつ、露地栽培なのでハウスを用意する必要がなく、初期投資も比較的少なくて済む。しかも組合では、優良系統の苗木を常に400~500本程度育成。「桃栗三年柿八年」というように、桃はすぐには実がならないが、この苗木を使うことで比較的早期に収穫できるようにしている。

 新たに地域に住むとなると住宅も問題だ。そこで、行政と連携。就農相談会には、総社市の定住促進部門の担当者に同行してもらい、住環境や暮らしに関する不安もできるだけ払しょくするようにしている。

 河内氏が、「この地域は、若手の生産者の横のつながりが結構あって、みんなで協力し合っています」と説明するように、近隣の生産者のハウス建設を組合員が協力して手伝うなど、地域の協力体制もある。このような活動を通して、新規就農者も地域に自然と溶け込んでいく。

 挑戦を良しとし、風通しが良く互いに尊重し合う気風、品質向上のためのJA岡山西への販売委託やマニュアルの確立、JA岡山西との協力による販売戦略、行政と連携し住環境や暮らしを含めて新規就農者をサポートする体制など働きやすい仕組みや環境を整え、常に改善し成長し続ける組織だからこそ、参加希望者が引きも切らない。

 近年は、就農希望者が増え、農地が足りないため断ることも少なくない。そのため畑の団地化を進め、10年後には規模を2倍に拡大する予定だ。「農業は楽しいです。高校生が進路を考える際の選択肢になってほしい」と秋山氏。総社もも生産組合には、仕事本来の楽しさが詰まっている。

お互いの強みを生かした2者の取り組みは続く
総社もも生産組合&JA岡山西の取り組み