PR (supported by JA)
2022.03.25
文=茂木俊輔
日常業務の非効率に気付く――。デジタル化は、そこから始まる。JA西都が開発し管内約1500基の重油タンクに搭載する残量監視システムも、そうだ。重油の配送・給油業務の非効率に担当者が気付くことから、全てが始まった。

課題に気付いたのは、現在JA西都経済部で部長を務める関谷浩氏。2016年、燃料担当の課長に就いた時、配送・給油業務の非効率さにあぜんとしたという。
「重油の残量が少ないタンクの情報を基に配送ルートを組み立て、近いタンクから順に給油していければ効率的です。しかし当時は、生産者から注文を受けてタンクローリー車で給油に向かうという仕組み。配送ルートにはムダが多かった」
しかも生産者の約3分の1は、日々の忙しさのあまり残量確認の段階からJA西都側に任せっきり。配送・給油の担当者は給油作業の合間に、浮きや滑車などを用いたアナログな残量計を目視で確認する作業もこなしていた。
これら配送・給油業務は約9割が外部委託。経費は年間数千万円規模に達していたという。「年間経費とはいえ、重油を使用する時期は11月から3月まで。長く見積もっても半年程度。それで数千万円規模は見過ごせない金額です」(関谷氏)
関谷氏はそこから、コスト削減を目指し、配送・給油業務の効率化・計画化と内製化に向けたプロジェクトを進めていく。
テーマは重油残量の見える化である。あらゆるものがネットでつながる「IoT」の技術を活用し、残量をリアルタイムで把握できるようになれば、給油を必要とするタンクだけ効率良く巡回するルートを設定できる。全てのタンクの重油残量を一元管理できるため、合間にほかのタンクの残量確認作業に立ち寄る手間も省ける。
生産者にとっても画期的なことだ。何よりまず、全ての生産者が残量確認という面倒な作業から解放されるうえ、残量をうっかり確認し忘れ、ハウス栽培の作物を一晩でダメにするというリスクからも免れる。
JA西都管内でハウス栽培の代名詞と言えば、ピーマン。熱帯生まれの作物ということもあり、冬場はハウス内を20度以上に保つ必要がある。冬場、月におおむね一度の割合で訪れる燃料切れに気付かず夜になり、暖房機が働かないまま朝を迎えると、損害は数百万円規模に達することもある。金銭面の損害は賠償保険で一部は補償されるとしても、丹精した作物を消費者に届けられないという心理面の打撃は計り知れない。


見える化に向けた具体策は、重油タンクのメーカー経由で県内のIT企業に相談を持ち掛け、2016年から検討を始めた。最大の課題は、計測した重油の残量データをどのように一元管理するか、という点だ。
検討当初、重油の残量を終日リアルタイムで計測することを前提に提案を受けたのは、圧力センサーで計測したデータをクラウド上で管理するデータロガーである。通信には、当時まだ利用されていた3G回線を使用する想定だった。
「ところが、そのシステムは初期投資がかさみ、重油タンク1基当たりで20万円以上。残量監視システムの搭載対象である約1500基全てに取り付けるには、数億円規模の予算が必要ということが分かりました」(関谷氏)
課題はコストだけではない。重油タンクに取り付ける圧力センサーとデータロガーの間は屋外を配線で結ぶ造り。その断線リスクも見込まれた。JA西都の管内は南国九州だけに台風が襲来するなど気象条件は厳しい。配線部分が損傷を受けかねない。
電源にも課題があった。ハウス栽培で用いる農事用電力は電圧200Vであるのに対し、データロガー用の電力は電圧100V。データロガーを用いた残量監視システムを導入するには、電圧を変換したうえで、契約種別を見直す必要もあった。