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2022.12.05
文=高田慎治

未経験や地域外からの新規就農者の不安をいかに取り除くか。新規就農者の育成に定評のある「JA信州うえだ方式」は、農業技術習得に加え、定住化に力点を置く。同方式を実践する信州うえだファームは、2000年3月にJA信州うえだ出資の農業生産法人として誕生。同JA 営農経済部 次長 兼 営農企画課 課長 小松俊明氏は当時を振り返る。
「耕作放棄地の増大、担い手不足が進む中、地域農業の衰退に強い危機感を抱き、JA自らが地域農業を守るべく立ち上がる必要がありました。当時はJAが農業経営に携わることができなかったため、子会社を設立。目指すのは、耕作放棄地の再生と新規就農者の育成です。2つの課題を個別ではなく、一体として捉えるという観点が『JA信州うえだ方式』の特徴です」
「JA信州うえだ方式」では、就農希望者の研修生を信州うえだファームの正社員として雇用。研修期間は2年間。農業の基本技術習得はもとより、地域生産者との交流や農業経営を学ぶ機会を提供する。「大事なのは研修卒業後です」と信州うえだファーム 顧問 船田寿夫氏は強調し、こう続ける。

「信州うえだファームでは、耕作放棄地を借り受けて整地し、自ら耕作しています。その一部を新規就農者にバトンタッチする。一から植えるのではなく、収穫できる環境からのスタートにより、すぐに収益をあげることが可能です。販売面もJAがサポート。現在まで66人の研修生を受け入れ、そのうち50人が地域に定住し就農。現在、12人が研修中です」
長野県北東部、千曲川中流に位置するJA信州うえだ。管内では年間を通じて晴天が多く、夏冬・昼夜の寒暖差が大きい内陸性気候を生かし、バランスのとれた農産物を生産している。研修卒業生も穀物、施設野菜、露地野菜、果樹など多彩な作物に取り組む。
農業経営の難しさは、自然が相手であることだ。「就農の定着で大事なのは、早い段階で成功体験を得ることです。農業でこれだけのことができるという手応えが、明日へのエネルギーとなります。栽培研究を熱心に行ってきた篤農家なら、様々な状況において対処法を持っていますが、農業に初めて取り組む新規就農者は、なかなか上手くいかないケースもあるでしょう。経験不足を補う有効な対策の1つがICTの活用です。しかし、JA信州うえだ単独でスマート農業を導入するのは、コストやITベンダーとの連携などハードルが高い。上田市が進める農業デジタル人材の育成は、『JA信州うえだ方式』が次のステップに進むための布石となるものでした」(小松氏)。

スマート農業の普及に向けて、上田市とJA信州うえだによる連携は必然の流れがあった。上田市は「上田市スマートシティ化推進計画」の一環として、「人と自然を守るスマート農業・林業」をテーマに、デジタル技術を活用した高品質で生産性の高い農業の実現に取り組む。当初、時間をかけたのが「スマート農業で何をするべきか」といった目標設定だ。上田市の職員、地方創生人材支援制度によりITベンダーから派遣されてきたデジタル専門人材、農業技術者連絡協議会や農業青年会議などの担当者間で議論を重ねた。その中で、本質的な課題と新たな方向性が見えてきたと上田市 農林部 農政課 農業振興係 主事 巴山大悟氏は話す。
「現在、農業経営を行っている農家は、スマート農業を導入しなくても成果が出ています。コストも含めリスクが大きい反面、導入する意義を見出しにくい。導入に対する抵抗感があることも推察できます。一方で、これから農業を始める新規就農者は、遠隔指導やデータに基づく栽培などデジタル化の恩恵を受けるシーンも多く、抵抗感も少ない。重要なポイントは、地域にスマート農業を広める牽引役としての役割を期待できるという点です。上田市では、就農とスマート農業の実証実験への参加をミッションとした、地域おこし協力隊の募集をかけました」
上田市は、スマート農業に取り組む地域おこし協力隊の隊員を任用、就農研修の受け入れ先に、信州うえだファームを選択。巴山氏はその理由を「新規就農者を育成する環境が整っていたこと、スマート農業による地域農業の課題解決といった方向性の一致が、連携のベースとなっています」と説明する。
2022年4月、信州うえだファームが管理する農地を使ったスマート農業の実証実験がスタートした。同実証実験は、上田市、ITベンダー、JA信州うえだ、信州うえだファーム、長野県上田農業農村支援センターのコラボレーションにより実施。信州うえだファームは、上田市農政課に所属する地域おこし協力隊の隊員2名を、地域農業とスマート農業の両面の知見を兼ね備えた人材に育てるという役割を担う。