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信州うえだファームにおけるスマート農業の実証実験は、新規就農者を支援する観点から、4つのデジタル技術を選定。ビニールハウスでのきゅうりの栽培・収穫・選別などである。
1.メガネ型ウエアラブル端末「スマートグラス」を活用した遠隔指導
「スマートグラス」は、カメラ、オーディオ、無線通信などの機能を装備。研修生が装着した「スマートグラス」のカメラ映像を遠隔地の営農指導員も共有し、野菜の育ち具合、病害虫など気になるポイントについて、その場にいるかのようにアドバイスを行う。JA信州うえだの生産部会でも、営農指導員の遠隔指導に対する関心は高い。
2.AI(人工知能)選果システム
新規就農者にとって、A級、B級、C級など大きさや曲がりを瞬時に選り分けるのは難しい。カメラで野菜を撮影した画像をAIが分析し、モニター上に等級が表示される。等級判断の支援とともに、選別する“目”も養われる。
3.センサーによるビニールハウス環境の測定
ビニールハウスに各種センサーを設置し、土壌水分量、気温、日射量などのデータを収集。データをもとに環境変化に応じた対策を実施する。蓄積したデータをさらに分析し、生産性や品質の向上に役立てていく。
4.ビジネスチャットを利用したコミュニケーション
セキュアな環境のもと、実証実験の関係者間でチャットによる効果を検証。
取材時にスマートグラスを活用した、遠隔指導のデモンストレーションが行われた。研修生の田代渓太郎隊員がスマートグラスを装着し、きゅうり栽培のビニールハウスに入っていく。隣の建物の部屋でパソコン画面を通じて見るきゅうりの様子は、葉が青々とし、蔓も立派だ。デモンストレーションにおいて営農指導員役となった小松氏も目を細め、田代隊員に話しかけた。「初めての農業でこれだけ育っていれば上出来だよ。収穫量も多かったでしょう。葉の裏側を見せてくれる?」。田代隊員が指示に従い、葉の裏側が画面に映し出される。小松氏は「うどんこ病にかかっているね。全体的に葉っぱの量が多くて風通しが悪かったのかな。もうシーズンが終わるから、今から葉っぱを間引く必要はないと思うよ」と具体的にアドバイスをする。
栃木県で教職員をしていた田代隊員は39歳。教職員の前は、工場で自動化推進システムや画像処理を行った経験を有する。「農業に関心があり、ICT技術の知見も生かすことができると思い、上田市地域おこし協力隊の隊員募集に応募しました。農業現場のICT活用では、生きている野菜を扱うため、現場視点がより重要になると感じています。今回きゅうりを収穫できて、とても嬉しかったです。営農指導員のみなさんに感謝しています」(田代隊員)。
農業デジタル人材は、農業の現場でこそ成長する。ICTの技術は、現場が抱える課題を解決する支援策にすぎない。
今後の展望について巴山氏は話す。「今回の実証実験で、スマート農業の導入時に起こる課題の抽出・検討を行います。農業デジタル人材の育成については、地域おこし協力隊などの募集を引き続き検討するとともに、JA信州うえだとの連携を深めていきたいと思います。農業デジタル人材がスマート農業の普及を行うためのサポート、『スマートグラス』やセンサーなどデジタル機器の共同利用といった仕組みの構築も重要なテーマです」。
船田氏は現状と将来について言及する。「理想は、信州うえだファームにおける新規就農者を、農業デジタル人材として育成したい。現状はコストの観点から、実証実験の“場”を提供するという位置付けで取り組んでいます。しかし、新規就農者の拡大、地域農業の振興に、スマート農業が必要であるとの認識は強く持っています。上田市、JA信州うえだなど関係機関と協力し、農業デジタル人材の育成を継続的に行っていきたいと思います」。
スマート農業はまだ手探りの状況だ。生産者との活発な議論が必要だと小松氏は指摘する。「ICTを活用し、生産者が解決したい課題は何か。意見を聞く際に、農業デジタル人材の取り組みは、議論が進むきっかけとなります。データに基づく営農の成功モデルを創出し、地域へと展開することで、スマート農業が浸透していくと考えています」。
スマート農業との掛け合わせで新たなステージに入った「JA信州うえだ方式」には、大きな可能性が拡がっている。持続可能な地域農業を作り上げてきた実績からして、将来が楽しみに思えてならない取材となった。
