売上日本一の直売所「伊都菜彩」は、いったい何がスゴイ?

食卓の“あったら良いな”を届ける、JA糸島

当日出荷した新鮮な野菜を「こども食堂」に寄付

 訪問客に、来店目的についてインタビューすると、「旬の新鮮な野菜を買いに来ました」との答えが返ってきた。「伊都菜彩」では“鮮度”をどう保つのだろうか。高橋氏は「委託販売なので、売れ残った野菜は閉店後に返品となります。店頭で販売されているのは、当日に出荷されたもの(根菜類など一部は2日販売)。だからお客様は、高い鮮度の野菜を常に購入できるのです。生産者は朝採りまたは前日に収穫した野菜から数量を調整して出荷しています」と説明する。

新鮮な農畜産物の品ぞろえが「伊都菜彩」の大きな魅力
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新鮮な農畜産物の品ぞろえが「伊都菜彩」の大きな魅力
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新鮮な農畜産物の品ぞろえが「伊都菜彩」の大きな魅力

 出荷者が慎重に出荷量を調整しても、返品(売れ残り)はどうしても出てしまう。そこでフードロス対策として2022年からJA糸島女性部と糸島市福祉協議会が連携し、地元の「こども食堂」に返品野菜の寄付を開始した。「こども食堂」は、子供が1人でも入ることができる無料または低額の食堂だ。

 「『伊都菜彩』に出荷している組合員に、趣旨を説明し協力をお願いしました。月2回、返品野菜の寄付をいただいています。こども食堂に寄付される食品において、新鮮な野菜は貴重なので子供たちに大変喜ばれています。このプロジェクトは、JA糸島の他の事業所も協力する全体的な取り組みです。現在は5カ所のこども食堂に加え、コロナ禍でアルバイトができず食事にも困る九州大学の留学生の寮、生活困窮者を支援するフードパントリーなどへも寄付しています」(高橋氏)

 「伊都菜彩」の“鮮度”は、プロの料理人も高く評価していると高橋氏は話す。「地元の飲食店が直接購入に来ています。福岡市の飲食店に対しては、注文を受けて配達していましたが、注文件数の増加に伴い青果の仲卸2社と提携しました。注文を受けた仲卸が注文内容をFAXで『伊都菜彩』に送信。JA糸島の外販担当がピッキングして仲卸に渡し、仲卸が飲食店に届けます。飲食店が糸島産食材を使ったメニューを掲げることで、知名度向上につながっています」。

 「伊都菜彩」における糸島産は、農畜産物だけではない。糸島漁業組合の協力のもと、糸島で水揚げされた新鮮な旬の魚介類も店頭に並ぶ。「1カ所で新鮮な旬の食材を買うことができます。『伊都菜彩』で購入した糸島産の牡蠣と野菜を使った牡蠣鍋が地元のテレビ局で紹介されました。また弁当、惣菜、菓子、漬物、スイーツなどの加工品も、糸島産の食材を使用しています。JA糸島の准組合員になることで、食品事業者も店内販売が可能です」。

魚介類、肉類などが並ぶ一角。その場で購入物の調理を受け付けるサービスも実施
魚介類、肉類などが並ぶ一角。その場で購入物の調理を受け付けるサービスも実施

仕入れ品による補填は極力しない。糸島産にこだわりたい

 美しい海岸線と豊かな自然が広がる糸島は人気の観光地だ。コロナ禍で中止されていた観光バスツアーも復活し、「伊都菜彩」に立ち寄る観光客も増えてきたという。それでも直売所ビジネスの難しさについて高橋氏は話す。

玄界灘や滝、渓谷など風光明媚な自然に囲まれる糸島地域(左)。取材当日も地元客、観光客が次々と車で「伊都菜彩」へ足を運んでいた(右)
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玄界灘や滝、渓谷など風光明媚な自然に囲まれる糸島地域(左)。取材当日も地元客、観光客が次々と車で「伊都菜彩」へ足を運んでいた(右)
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玄界灘や滝、渓谷など風光明媚な自然に囲まれる糸島地域(左)。取材当日も地元客、観光客が次々と車で「伊都菜彩」へ足を運んでいた(右)

 「産地直送なので午前中は品ぞろえが豊富ですが、午後になるとだんだん品数が少なくなります。補填するために糸島産以外の商品を増やすと、『伊都菜彩』の魅力が半減するのでできません。スーパーマーケットと同じ商品なら、わざわざ来店する理由がなくなりますし、“鮮度”もアピールできなくなります」

 直売所の収益拡大のためには、糸島産の商品の供給力を増やすことが求められる。大事なのは「【糸島産であること】にこだわる直売所」と高橋氏は強調する。「午前中に来店しないと、欲しい商品が購入できないことはデメリットですが、だから行列ができる。おかげで平日でも盛況です」。

 「伊都菜彩」は、地域の漁業組合、酪農組合、飲食店、商工会議所などと連携し、地域活性化の役割を果たしてきた。「伊都菜彩」が売上高日本一のJAファーマーズマーケットになった理由、それは立地の妙もあるだろうが、出荷者1500人の“巨大供給力”と“熱い思い”を背に、糸島産に徹底してこだわり続ける国消国産の戦略が奏功しているからだろう。そして、時折垣間見られる “話題作り”の巧みさが人を惹きつける。生産者と消費者の期待に応えるべく、今日もJA糸島のスタッフは賑やかな店内で活躍しているに違いない。