契約栽培の巧者、カルビー・カゴメと協業する!

業務用途の適地を目指す産地経営、JAほこた

生産者の安定収入につながる契約栽培。市場出荷と異なり、買い手は提携企業だ。大手食品メーカーのカルビー、カゴメは、数多ある産地から茨城県の鉾田(ほこた)を選択。日本有数の産地経営力を高く評価した。単価向上を求める生産者と、大量かつ安価に安定供給を求める企業。この狭間で活躍するのがJAほこただ。生産者と企業が、いかにWin-Winの関係を築いていくか。その交渉力・調整力に迫る。

 茨城県の太平洋側、鹿島灘を望む鉾田(ほこた)。温暖な気候と肥沃な大地に恵まれ、生産量日本一のメロンはもとより、イチゴといった果実や、馬鈴薯(ジャガイモ)、甘藷(サツマイモ)、ニンジン、トマト、葉物野菜などの野菜を栽培する全国有数の産地である。実際、令和3年の「市町村別農業産出額」は641億円と全国4位だ。そんな“日本の台所”を支えているのがJAほこたである。

取材当日の鉾田市内は暖かく、恵まれた気候を感じさせた(左)。太陽と肥沃な大地が育む豊富な農作物が日本の食生活を支える(右)
取材当日の鉾田市内は暖かく、恵まれた気候を感じさせた(左)。太陽と肥沃な大地が育む豊富な農作物が日本の食生活を支える(右)
取材当日の鉾田市内は暖かく、恵まれた気候を感じさせた(左)。太陽と肥沃な大地が育む豊富な農作物が日本の食生活を支える(右)
JAほこた 営農企画推進課 鈴木悠麻 氏
JAほこた 営農企画推進課 鈴木悠麻 氏

 農業王国をサポートするJAほこたは、市場出荷だけでなく、食品メーカーとの契約栽培も積極的に行っている。その理由について、JAほこた 営農企画推進課 鈴木悠麻氏は話す。「生産者が安心して農業を続けるためには、契約栽培による安定収入という選択肢も必要です。食品メーカーとの事前協議で単価・生産量を決めるため、売上予測ができ、収入が見通せます。市況に左右されないのが大きなメリットです」。

 JAほこたが契約栽培に取り組む歴史は長い。日本を代表する食品メーカーのカルビーとは、30年以上契約を続けているという。「私は現在、カルビーの契約栽培を担当しています。契約開始時の背景は、国内産の加工用馬鈴薯の安定供給を求めて産地を探していたカルビーと、鉾田の農業特性がマッチしたのだろうと想像しています。鉾田は、水田が少なく畑が多い。土壌も馬鈴薯の栽培にあっていた。カルビーからの供給量増大の要望に対し、栽培面積を容易に拡大できる状況でした。品質の確保はもちろんですが、こうした地の利も長期にわたる契約の要因だと考えています」(鈴木氏)。

契約栽培では様々なシーンでビジネス交渉が必要

 契約栽培は、スーパーの店頭に流れていく市場出荷と異なり、特定企業との「1対1」の関係で成り立つ。営農はもとより、単価設定から出荷・輸送まで、様々なシーンでビジネス交渉が連続する。「生産者から強い要望を寄せられるのが、単価向上です。価格を抑制したい食品メーカーに対し、いかに生産者の利益を確保していくか。電気代、肥料代の高騰などを説明しながら、生産者の確保には収入面が重要になることをカルビーの担当者に話し、理解を得ています。長年培ってきた信頼関係をベースに、生産者とカルビーの間でWin-Winの関係を築くべく、粘り強い交渉を心がけています」。

 契約栽培では「歩引き」も課題となる。品質が悪い場合、買取価格から一定額を差し引かれる。「生産者は、加工用馬鈴薯の栽培に心血を注いでいます。少額であっても歩引きには納得がいかないのが本音です。歩引きの仕方は、カルビーとの間で調整を重ねています。2023年度から、加工用馬鈴薯における単価の決め方が変更になりました。不良率が少ない生産者の単価は上がり、不良率の多い生産者の単価はマイナスになります。カルビーの担当者と去年の傾向を調べたところ、JAほこたの生産者はマイナスになるケースが無かったため、全ての生産者で手取りが増えました。さらに小玉品も引き受けてもらえるようになりました。やはり日々の交渉は大切ですね」(鈴木氏)。

 歩引きは収入面だけでなく、生産者のモチベーション低下にもつながる。「生産者が栽培した馬鈴薯はJAほこたに出荷されます。そこから馬鈴薯の入ったコンテナでカルビーのグループ工場に輸送するのですが、この輸送時の振動に伴う打撲が馬鈴薯の品質劣化、ひいては歩引きを招くことになります。少しでも歩引きを防ぐため、輸送先が近い宇都宮工場になるよう折衝を行っています」(鈴木氏)。

収穫した馬鈴薯を生産者がコンテナへと積み込んでいく(「JAかしまなだ」はJAほこたの旧称)
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収穫した馬鈴薯を生産者がコンテナへと積み込んでいく(「JAかしまなだ」はJAほこたの旧称)
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収穫した馬鈴薯を生産者がコンテナへと積み込んでいく(「JAかしまなだ」はJAほこたの旧称)

 契約栽培では、インボイス制度(適格請求書保存方式)への対応も喫緊の課題だ。「生産者は一人ひとりが個人事業主です。契約栽培は売り先や価格が決まっているため、インボイス制度の対象となります(市場出荷の場合は対象外)。契約栽培の生産者のためにインボイス制度に関する説明会を開催するとともに、様々な相談を受け付けています。カルビーに対しては、免税事業者を選択した生産者への対応について、回答を求めています」(鈴木氏)。