健康増進に期待、「WE米」で攻める大阪の農業!

都市農業の付加価値を追求する、JA北大阪

大阪郊外のベッドタウンにも農のある風景が広がる。大阪中心部からわずか10km前後。吹田市や摂津市のエリアだ。主要な品目は主食用米。生産者は収益性の向上と近隣住民の理解という都市農業につきものの課題を抱える。両市を所管するJA北大阪では同時解決の手段として機能性米である「WE米®」に目を付け、地域特産品としての生産を呼び掛ける一方、加工・無加工の機能性表示食品として販路を広げ、都市農業の担い手を支援する。

 人が多く、地価が高い都市。そこで農業を営む都市農業は長年、立地特性ゆえの課題を抱えてきた。JA北大阪で都市農業向けの機能性米「WE米®」の販売を担当する営農生活部営農経済課担当課長の村上智洋氏は、その課題を大きく2つ挙げる。

 1つは、農地をどう維持していくかという点だ。都市部だけに税負担はかさむ。その重みに耐えるには農地に高い収益性が求められる。

JA北大阪 営農生活部 営農経済課 担当課長 村上智洋 氏
JA北大阪 営農生活部 営農経済課 担当課長 村上智洋 氏

 ところが管内の農地は、ほとんどが水田だ。「野菜づくりは手が回らないから米づくりに転じた生産者が多い」と村上氏は説明する。通常のうるち米を普通に生産していたのでは、高い収益は見込めない。そこに難しさがある。

 もう1つは、地元の理解をどう得るかという点だ。農地は生産の場であり、自然生態系の一部。都市的な土地利用とは異なる。「『カエルの鳴き声がうるさい!』と近隣から苦情を受けたという話も聞きました」。村上氏は苦笑する。

 しかしそこは、近隣トラブルの常。コミュニケーションの欠如に問題の本質が潜む。「そこで何を生産しているのか、地元に理解してもらうことが何より大事。学校給食用の米であるとか、地域特産の米であるとか、地元との接点が感じられれば、都市農業に対する受け止め方も変わるはずです」(村上氏)。

「WE米<sup>&reg;</sup>」の田植えを待つ水田。東海道新幹線の高架沿いに広がる
「WE米®」の田植えを待つ水田。東海道新幹線の高架沿いに広がる

 構造的な難しさもあれば、打開の可能性も見込めるのが都市農業。JA北大阪では、そこに真正面から向き合った。2つの課題の同時解決に向け目を付けたのが、機能性米である。特定の機能を持つ米であれば、うるち米と違って付加価値が見込める。それが高い収益や地域特産に結び付くことが期待できる。

 機能性米に目を付けたきっかけは、2018年、農協改革を支援するコンサルタントから、都市農業の課題解決に役立つかもしれない、と研究者を紹介されたことだ。研究者とは、大阪府立大学(当時、現大阪公立大学)特任教授の北村進一氏。機能性米の新品種を開発してきた食品機能性の研究者だ。

「こんなの苗じゃない!」と一喝

 その機能性米こそ、「WE米®」である。「WE」は学術名である「waxy/amylose-extender」の頭文字から名付けた。大阪府立大学(当時)や同大学のキャンパス内に拠点を置く一般社団法人WX-AE米協議会では2009年度以降、農林水産省補助事業の支援を受けながら、機能性米としての機能明確化の試験、機能性成分の分析、山梨県内などでの栽培実証を通した栽培マニュアルの作成などを進めていた。

 それまでの研究成果から、機能性米としての付加価値は十分に見込めそうだった。問題は、一定の収量を確保できる育苗・栽培方法を確立できるかという点だ。気候をはじめとする栽培環境には地域差がある。研究成果をそのまま当てはめるわけにはいかない。まずは大阪の気候を前提に、現実的な方法を探っていく必要があった。

 そこに、JA北大阪の出番が生まれる。管内の水田に作付けする前提で育苗・栽培方法を確立しようと、大阪公立大学と組んで「WE米®」の研究に乗り出した。実証の場として、管内の生産者の協力を得て5反(0.5ha)ほどの水田を確保した。

 前提条件は気候に限らない。「うるち米と同じ肥料を使い、同じタイミングで水を引き込みます。慣れ親しんできたうるち米の栽培と変える点を最小限にとどめなければ、生産者の手間を増やすことになりますから」(村上氏)。

 もちろん、収量は最大限確保する必要がある。機能性米として付加価値が見込め、通常のうるち米より高単価を期待できたとしても、収量が一定量を下回ってしまえば、「WE米®」の栽培は収益性の向上にはつながらない。

 共同研究のゴールには、1反(0.1ha)当たり収量360kgという目標値を据えた。「WE米®」はうるち米に比べ粒が小さく、比重が軽い。村上氏は「うるち米で言えば400~450kgに相当する量です」と補足する。

 この研究、実は出だし早々からつまずいたという。「最初はうるち米と全く同じ方法で育苗しようとしました。すると、発芽率はわずか4割。『こんなの苗じゃない!』と生産者からは一喝されました」(村上氏)。

「WE米<sup>&reg;</sup>」の苗。生産者はJA北大阪の育苗施設で育てたものを栽培していく
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「WE米<sup>&reg;</sup>」の苗。生産者はJA北大阪の育苗施設で育てたものを栽培していく
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「WE米®」の苗。生産者はJA北大阪の育苗施設で育てたものを栽培していく

 うるち米と発育が異なるのは確かだが、1回は栽培し終えてみないと、実際のところは確認しようがない。一方、うるち米の生育データは手元にある。経験やデータを手掛かりに、試行錯誤を重ねるほかなかった。