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ゴールにたどり着いたのは、3年後。発芽率も8割を超えるようになった。「WE米®」の付加価値に結び付く機能には、大きく2つのものが見込めた。
1つは、血液中の中性脂肪を低下させる機能を持つγ-オリザノールという成分が玄米の2倍含まれるという分析結果を得たことだ。
もう1つは、食物繊維の多さとバランスの良さに由来するものである。
「WE米®」には可食部100g当たりの食物繊維が玄米の7倍を超えるという分析結果を得た。しかも水溶性と不溶性の2種類のうち、野菜や果物と違って水溶性の割合が多いという分析結果も得ている。食物繊維を豊富に、その上バランスよく摂取できるのである。
これらの機能を付加価値に結び付けようと、JA北大阪では「WE米®」の販売方法として2つの商品を用意した。どちらも「WE米®」を玄米として使用したもので、白米に混ぜて炊き込む少量タイプ。機能性表示食品として届け出済みだ(※1・2)。
2022年10月に販売を開始したのは「農協のスーパーすぎるごはん」である。国立研究開発法人農研機構が開発した「フクミファイバー」という大麦の一種と組み合わせた加工品だ。このフクミファイバーには、食後血糖値の上昇を穏やかにする機能を持つ大麦由来のβ-グルカンという成分が、通常のもち性大麦の2倍含まれるという分析結果を得ている。さらに翌2023年12月には「WE米®」だけの無加工品である「農協の生活習慣米ういまい」を、パッケージに「大阪産」と銘打って発売した。

販路開拓はJAの腕の見せ所だ。村上氏は地道に販路開拓を進めてきた。
身近なところでは近隣地域のJA直売所やJA全農が運営するEC(電子商取引)サイトで取り扱いを開始済み。お膝元の摂津市内では2024年2月以降、「WE米®」を用いた給食を月1回は小学校で提供することになった。

「飛び込み営業もやりますし、展示会ともなれば名刺交換を怠らず、積極的に営業に出向くようにしています。介護事業者との直接取引や食品卸を通した量販店との取引なども生まれています」。村上氏は苦労と成果を口にする。
摂津市内ではまた、「鳥飼なす」と並ぶ特産品にしようという機運が盛り上がる。このなすは、伝統野菜ながら生産者の減少により、収穫最盛期でも一部の小売り店舗に出回る程度という希少性を持つもの。地元商工会では市内の飲食店舗が提供するオリジナル料理を消費者に味わってもらうイベントを開催し、「鳥飼なす」の認知を高めてきた。2023年7月に開催したこのイベントでは、「WE米®」も扱うように参加する飲食店舗に呼び掛けた結果、半数以上がその呼び掛けに応じた。
「WE米®」の作付面積は共同研究の時と比べ5倍以上。生産者も増え、2024年度は計6者が生産を手掛けるようになった。その1人、摂津市内で農業法人アグリズム摂津を経営する渡邊勝彦氏は、「摂津の特産品として育てたい。米づくりのノウハウそのものはありますから、『WE米®』にもそれを生かし、成功させたいですね。うまくいけば、耕作放棄地対策としても期待できます」と言葉に熱を込める。

商品展開の開始から日が浅いだけに、販路はまだ拡大していく必要がありそうだ。渡邊氏は「販路が拡大・安定すれば、生産者として安心して生産に携われます。それによって買取単価が上がれば、やりがいも生まれます」と強調する。村上氏によれば、買取単価はうるち米に比べ、理論値で3割増し。その実現を目指す。
販路のさらなる開拓・安定に向け、村上氏は2つの構想を胸に抱く。
1つは、健康経営に力を入れる企業への売り込みだ。「そうした企業で社員食堂に取り入れてもらえる例が出てきています。関係者を通じて企業を紹介してもらい、すでに数社との取引が実現しています」。
もう1つは、調剤薬局への展開である。国の方針に基づき、薬局には今、地域の中で「かかりつけ薬局」としての役割が求められている。その役割を果たすのに必要な機能として提唱されるのが、健康サポート。地域住民の健康の維持・増進を支援する手段として「WE米®」を位置付ける。
SDGs(持続可能な開発目標)の達成が叫ばれ、自然災害の頻発・激甚化が課題になる中、生物多様性の保全や災害防止にも役立つ都市農業の社会的な価値がますます高まっている。しかし、その維持・保全にはコストがかかる。そのコストを農産物の付加価値を高めることで賄えるようになれば、都市農業の経済的な価値も高められる。都市農業の将来を占うJA北大阪の挑戦は、極めて意義深い。
