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2024.09.05
文=茂木俊輔
この夏、「昭和かすみ草」が過去最高の出荷量を記録した。1日3900ケース。1ケースは、ひと抱えほどの花束である。主茎に花を付けた太目の30本から、枝に花を付けた細目の100本まで、階級毎に分かれる。

出荷量は過去最高でも、花き市場での販売単価は下がらなかったという。JA会津よつば昭和かすみ草部会の部会長、立川幸一氏は「数多く出荷しても安くならない。それが、『昭和かすみ草』のブランド力です」と胸を張る。
かすみそうは仏花としても定番の品である。旧盆を前に需要が高まるのは毎年のこと。「今年はさらに好天が続き、需要に見合う量を出荷できました。需要の最盛期に必要な量を出荷するのが責任産地の使命です」(立川氏)。
福島県昭和村を中心とする一帯で生産される「昭和かすみ草」。2023年7月、農林水産省の「地理的表示(GI)保護制度」に基づく地理的表示産品として登録が認められたことから、この名称がブランドとして定着しつつある。
かすみそう栽培の歴史はそう長くない。始まりは1980年代半ば。この地で1950年代に生産されるようになった葉タバコが、需給調整のため廃作を奨励されるようになり、転作作物として注目を浴びるようになったのだ。

JA会津よつば昭和営農経済センター営農係係長の本名寛之氏は、理由をこう説明する。「この一帯は標高400~750m程度の高冷地で夏でも涼しい気候です。それが、かすみそうの栽培に適しています。葉タバコ用のビニールハウスをそのまま使い続けられるうえ、一定の収益性が見込めたことから、転作が一気に広がりました」。
生産者の増加によって花き市場での販売額が1990年度に2億円を突破すると、以降、2017年度に4億円超、2022年度に6億円超と、過去最高を更新し続けてきた。
振り返れば、2020年度以降は新型コロナウイルス禍に見舞われた時期。冠婚葬祭というかすみそうの出番が減り、業務用の需要は落ち込んだ。「ところが、家庭用の需要が急増しました。在宅時間が伸びたことから、家の中で快適に過ごそうとする『巣ごもり需要』が生まれるようになったのです」(立川氏)。
新型コロナ禍がひと段落ついてからもなお、販売額は伸び続け、2023年度は過去最高をさらに更新し、6億5000万円近くにまで達した。JA会津よつば昭和かすみ草部会によれば、栽培面積は約28ha、出荷量は約531万8000本。夏から秋にかけて出荷する夏秋期のかすみそうとしては、ともに日本一の数量という。

多くの産地では新型コロナ禍を挟んで販売単価が前年よりも落ち込んだ。「そんな時期でも『昭和かすみ草』はブランド力の強さから、前年同期比110%と上昇傾向を見せています」と本名氏。「巣ごもり需要」の伸びや販売単価の上昇もあって、販売額は過去最高を更新し続けてきたというのである。
かすみそうといえば、色とりどりの花に白を差し色として加える添え花の印象が強い。そんな花きがなぜ、販売単価を上向かせるほどのブランド力を持ち、夏秋期の商品として日本一の出荷量を維持しているのか――。
強みは、商品力と販売力だ。JA会津よつばが生産者とともに昭和村の支援も受けながら築き上げてきた2つの力が、「昭和かすみ草」のブランド力を支える。
商品力の一つは、多様な需要に対応できるバリエーションの豊富さにある。本名氏は「需要のすそ野を広げるためにも、それが不可欠です」と強調する。
花き市場に供給される商品は冒頭で紹介したように、太目の主茎と細目の枝に大別される。主茎は業務用の需要に、枝は家庭用の需要に対応する。「主茎は枝に比べ需要の変動が大きく、値動きは激しくなるものの販売単価は高い。しかも主茎は、枝に比べて収穫の手間がかからず、生産者から好まれます。しかしそれでも、枝まできちんと出荷できている。生産者の協力があればこそです」(本名氏)。
2000年代から本格的に始めた染色も、商品バリエーションを豊かにするための取り組みだ。色は、ピンク、青、黄、緑など10種類。各生産者が収穫後のかすみそうに安全な染料を吸わせ、花びらを染め上げる。その意義を本名氏はこう解説する。
「カラーバリエーションを持たせると本来の色である白の供給過剰を抑えられ、『昭和かすみ草』全体の安定販売につながります。また染色により新たな商品価値を打ち出せるため、需要の掘り起こしにもつながるのです」