豪雪地帯に誕生した夏秋期日本一の産地

逆境を生かす産地経営の匠、JA会津よつば

豪雪を逆手にコールドチェーンを構築

 「昭和かすみ草」ならではの商品力の二つ目は、コールドチェーンの構築による品質・鮮度の高さが挙げられる。集荷施設から花き市場までの温湿度管理を徹底し、消費者の手元に届いた時点での品質・鮮度を高く保つ。

 品質・鮮度管理の象徴は、昭和村が建設し、JA会津よつばが管理を受託する農林水産物集出荷貯蔵施設である。通称「雪室」。2005年度に本格稼働を開始した。

「雪室」の内観。真夏でも常時8℃の室温に保たれる
「雪室」の内観。真夏でも常時8℃の室温に保たれる

 昭和かすみ草部会の生産者が収穫したかすみそうは、最終的にはこの施設に集約される。JAでは出荷量を調整しながら、施設内の予冷庫で1~5日間貯蔵した後、北は仙台から南は福岡まで全国28の花き市場に冷蔵トラックで出荷する。

 「雪室」とは、予冷庫の隣に広がる倉庫のようにがらんとした空間。冬の間に降り積もった雪を例年3月下旬に3000㎥ほど運び入れ、予冷庫との間を行き来する空気を送風機で循環させながら、庫内の温度を10℃程度、湿度を70%程度に保つ。豪雪地帯という逆境を逆手に取り、雪を利用することでコストを抑えながら温湿度を管理する。

「雪室」からの空気は、天井に設置された筒状の送風機を通して予冷庫に届けられる
「雪室」からの空気は、天井に設置された筒状の送風機を通して予冷庫に届けられる

 2021年8月には、村が施設内の荷受・検査・出荷作業場を室内温度8℃の低温貯蔵室と同15℃の低温仕分け室に改修する工事を終えた。この工事によって、商品の受け入れ可能数量を倍増させるとともに、パーフェクトコールドチェーンを確立。出荷時に新設の低温仕分け室から出荷用の冷蔵トラックまで直接運び込める造りに改めたことで、作業中に高温の外気に触れる恐れを完全になくしたのである。

低温仕分け室から直接、冷蔵トラックにかすみそうを運び込み、パーフェクトコールドチェーンを確保する
[画像のクリックで拡大表示]
低温仕分け室から直接、冷蔵トラックにかすみそうを運び込み、パーフェクトコールドチェーンを確保する
[画像のクリックで拡大表示]
低温仕分け室から直接、冷蔵トラックにかすみそうを運び込み、パーフェクトコールドチェーンを確保する

 商品力と並ぶ販売力とは、全国28という多くの花き市場を相手に安定した単価で「昭和かすみ草」を売り切る力ともいえる。

 そもそも全国28もの花き市場を相手に商品を販売する産地は他にはないという。立川氏は「出荷量の多さの賜物。まとまった量を出荷できるからこそ、これだけ多くの市場に商品を分散させることができるのです」と誇らしげだ。

 販路を開拓する場面では、昭和かすみ草部会の意向を受け、JA会津よつばがJA全農とともに花き市場に働き掛けてきた。取引が始まると、本名氏らが各市場の担当者との間で商談を進める。見せ場は、ここだ。

情報武装で相対売りを優位に進める

 販売の基本は、売り手と買い手で値段を決める相対売り。「多い時は、95%程度は相対売りです。せり場では買い叩かれますから。市場担当者との連携を密に取りながら、せり場での占有率をどこまで下げるかが勝負所です」と、本名氏は明かす。

 重要なのはまず、足元の出荷可能量を把握すること。その上で、相対売りでどの程度の量をさばけるのか、情報を集めること。「高く売ろうとするより、安く買い叩かれるのを阻止する方向で交渉します。生産者の所得向上が私たちの使命ですから、まずは原価割れを防ぐというのが何よりも大事です」(本名氏)。

 「昭和かすみ草」は出荷量の維持にも不安がない。昭和村を中心とする産地一帯は高齢化が進む地域ながら、担い手を確保できているからだ。

「雪室」を含む施設外観。昭和村を含む産地一帯は会津若松駅から車で1時間程度の立地ながら、新規就農者は着実に増加している
「雪室」を含む施設外観。昭和村を含む産地一帯は会津若松駅から車で1時間程度の立地ながら、新規就農者は着実に増加している

 昭和村は2003年度、かすみそう栽培の新規就農者受入事業を開始。村内での定住と生産部会への加入などを条件に、就農希望者を1年間受け入れ、独立経営に向け研修の機会を提供してきた。この事業に基づく受け入れは2021年度までで累計21組。独立経営を実現した希望者は同17組に上る。受け入れ数は限られるものの、生産者は年間1~2組の割合で着実に増えていく計算だ。また昭和村をはじめとする産地一帯の行政3町1村と、JA会津よつばが2019年度に立ち上げた昭和かすみ草振興協議会でも、2021年度から昭和かすみ草新規就農実践講座を開講。昭和村の新規就農者受入事業と同じく、就農希望者を1年間受け入れ、独立経営に向け研修の機会を提供する。

 研修の場から巣立った新規就農者の定着率は極めて高い。「新規就農者でもかすみそうの栽培で生計を立てられます。そのため、いったん就農しながらも離農する人はほとんど見られません」と立川氏。昭和かすみ草部会の生産者92戸のうち、こうした研修の場を利用して移住してきた新規就農者が占める割合は、約3分の1に達するという。

昭和村にある無人販売所。染色のかすみそうはフォトジェニックゆえSNSでも人気
[画像のクリックで拡大表示]
昭和村にある無人販売所。染色のかすみそうはフォトジェニックゆえSNSでも人気
[画像のクリックで拡大表示]
昭和村にある無人販売所。染色のかすみそうはフォトジェニックゆえSNSでも人気

 ただ担い手を確保できているだけに、市場開拓が中長期の課題に上がる。立川氏は「国内人口が減少する一方で、昭和かすみ草部会の生産者は増加する見通しです。新しい市場の開拓は必須です。ベトナムやシンガポールなど海外の市場を開拓できないか模索しています」と、対応策を見据える。

 家庭需要の伸びが業務需要の落ち込みを補完したとはいえ、国内人口の減少に伴い、そうした需要も将来は落ち込んでいく恐れがある。そこで生産者は、海外という新しい市場の開拓に希望をつなぐのだ。

 JA会津よつばとしても、地元福島県とともに可能性を探っている段階。本名氏は現状をこう明かす。「海外の市場は確かに一つの選択肢です。県と協力しながら、新しい市場の開拓につながる別の方向性も視野に入れ、幅広く検討していきます」。