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2025.01.21
文=茂木俊輔

江戸時代から8代続く大規模農園にも、人手不足が襲い掛かる。圃場面積は露地栽培とハウス栽培を合わせて10ha超。社員3人とアルバイト20人超が作業にあたる。「人手が足りない時は近隣に手助けを求めてきました。しかし地域の高齢化が進み、どの世帯からも反応が鈍くなってきています」。藤村農園代表取締役の藤村敏浩氏は嘆く。
同社は2020年4月に法人化した。その背景にも、人手不足がある。
藤村農園は契約販売が多く、一定の需要が確実に見込める。しかし供給能力に不足が生じれば、商機を逃しかねない。「そこで人手を確保しようにも、個人経営では労務関係に求職者が不安を覚えるため、安定的な雇用が困難だったのです」(藤村氏)。
法人化を契機に労務関係を整理し、女性2人を社員として初めて採用。翌年には農業系大学の卒業生も迎えた。それでも、アルバイトには不足が生じていた。
そこで活用したのが、JA山口中央会が運営実務を担当する農業バイト検索サイト「アグポン」だ。このサイトに求人情報を登録し、アルバイトを増員してきた。「登録するだけで農業に従事したい求職者が募集に応じてくれます。何よりJAが間に入るので、応募者を安心して雇用することができます」と藤村氏は笑顔を見せる。


廣田修久氏は「アグポン」経由で増員されたアルバイトの一人。藤村農園ではタマネギ苗の収穫やキャベツの出荷準備などに従事してきた。「仕事を丁寧に教えてくれるので、ストレスは感じません。今後もここで仕事を続けたいと思います」(廣田氏)。
「アグポン」の存在はテレビCMで知り、そこから藤村農園の求人情報に行き着いた。もともと建築の塗装工。「塗装の仕事がない時もあるため、空き時間にできる別の仕事を『アグポン』で探し、求人情報に行き着いたのです。就業時間は『応相談』で融通が利く。労働条件が希望に合ったので就業を決めました」と廣田氏は話す。
生産者が安心して人手の確保に踏み出せる場とも言える「アグポン」。JA山口中央会、JA山口県、行政の山口県などで組織する、やまぐち農業労働力確保推進協議会が2020年7月に開設し、地元の広告代理店と連携しながら運営を続けてきた。

開設の狙いは、人手不足という課題への対応だ。それも、足元の短期的な不足への対応である。推進協議会の事務局長を務めるJA山口中央会農政対策部担当部長の日髙直人氏は、「アグポン」開設に至る経緯をこう説明する。
「県内の基幹的農業従事者は平均年齢72歳。高齢化が全国で最も進んでいます。中長期的な担い手確保が課題です。また2019年に県内農家を対象に農業労働力の需要調査を実施したところ、農繁期に人手不足で苦労している実態も浮かび上がりました。そこでまず、足元の短期的な不足を解消しよう、と策を練り始めたのです」
ちなみに「アグポン」の呼称は、「農業(Agriculture)」に「ポン」と気軽に飛び込んで、という願いから。正式には「Agriculture Ponder Referral Office(農業をじっくり考える場を提供する所)」という。正式名称に由来する通称でもある。

求人検索サイトとして最大の特徴は、農業特化型であること。「農業の場合、最低賃金ぎりぎりの求人情報が少なくない。従来型の求人検索サイトで求職者が時給1000円以上を条件に設定すると、求人の多くはこぼれ落ちてしまいます。その結果、農業の求人はなきものにされてしまうのです」。JA山口中央会農政対策部で「アグポン」の運営作業を担当する田中才貴氏は、従来型の限界を指摘する。
そこで目指したのが、農業特化型。しかも、賃金以外の魅力が詰まった求人検索サイトである。賃金以外の魅力とはもちろん、農業そのものの魅力。「しかし従来型の求人検索サイトでは、ビジュアル要素をありきたりな野菜のイラストで済ませたりする。これでは、農業の魅力は伝わりません」と田中氏は語気を強める。
「アグポン」の場合、求人情報を初めて登録した生産者の圃場には必ず取材に出向き、現場で撮影したリアルな画像をビジュアル要素として掲載する。「従事する作業の内容が伝わるように心掛けています。『一緒に働きましょう!』という空気感も大事です。ただ生産者は、農繁期を前に求人情報を登録してきます。取材時は収穫前のため、撮影時には空のコンテナを持ってもらうなど、工夫も欠かせません」(田中氏)。

求人情報の登録は、「アグポン」の活用を勧めるA4サイズ1枚のチラシやJA山口県が組合員向けに毎月発行する広報誌「JAだより」などの媒体で呼び掛けてきた。「アグポン」の活用事例を紹介する、生産者向けのセミナーを開催したこともある。