農業バイトを探せるアグポン、知っちょる⁉

ユニークな求人検索サイトを運営、JA山口中央会

テレビCMだけではない誘客手段

 一方、求職者の誘客にはテレビCMのほかSNS広告も活用する。「主婦」「シニア」など性別や年代などが異なる複数のターゲットを想定し、それぞれの属性向けに広告を制作。インスタグラムやフェイスブックを通じて配信する。それらSNS広告から誘客することで、サイト上の求人情報をその想定ターゲットに効率的に閲覧してもらう作戦だ。広告の制作や配信は、「アグポン」の開設・運営作業を開設当初3年間担当してきた地元の広告代理店にJA山口中央会がいまも委託している。

 ここ数年、「アグポン」の存在を求職者が知る機会はテレビCMやホームページ検索がメインだ。2022年度以降の集計によれば、テレビCM(32%)とホームページ検索(32%)が同率トップ。クチコミ(20%)、SNS広告(14%)、チラシ・ポスター(1%)、と続く。クチコミの多さは開設後の利用の広がりの表れだ。

 サイト上では、「市町村」「農作物」「仕事する時期」「雇用形態」「曜日」で求人情報を検索し、希望に合う募集条件を見つけたら求人情報を登録する生産者との面接に応募する。そこで採用が決まれば、生産者との間で労働条件をすり合わせ、雇用契約書を兼ねた労働条件通知書を交わす。以降、契約期間満了後に再度契約するか否かは、双方の意向次第。直接交渉することで雇用関係を継続することも可能だ。

勤務地や勤務条件など複数の方法で求人を検索できる(出所:「アグポン」公式サイト)
[画像のクリックで拡大表示]
勤務地や勤務条件など複数の方法で求人を検索できる(出所:「アグポン」公式サイト)
[画像のクリックで拡大表示]
勤務地や勤務条件など複数の方法で求人を検索できる(出所:「アグポン」公式サイト)

 「アグポン」利用の求職・求人実績によれば、2024年11月までの求職者数848人に対して採用者数451人。採用率は53%である。採用者数を年平均に置き換えると、毎年100人程度という計算だ。「『アグポン』の開設時期は新型コロナウイルス禍を背景に求職者が増えていたため、出足は好調でした。ところがコロナ禍が落ち着くと、他業界との人手の争奪戦が激化するようになってきました」と田中氏は気を引き締める。

農業の基礎知識や用語解説などをサイトに掲載し、求職者の敷居を下げる(出所:「アグポン」公式サイト)
[画像のクリックで拡大表示]
農業の基礎知識や用語解説などをサイトに掲載し、求職者の敷居を下げる(出所:「アグポン」公式サイト)
[画像のクリックで拡大表示]
農業の基礎知識や用語解説などをサイトに掲載し、求職者の敷居を下げる(出所:「アグポン」公式サイト)

 JA山口中央会の役割は「アグポン」の運営だけではない。職業安定法に定める無料職業紹介事業としての斡旋サービスの提供にもある。斡旋サービスとは、求職者と求人者の間を取り持ち、雇用関係が円滑に成立するように第三者として世話すること。中央会では2020年2月、「アグポン」の開設に先駆けて無料職業紹介所の届け出を済ませ、職業紹介事業にいち早く乗り出していたのである。

JAのマッチング力が担い手確保へ

 斡旋サービスでは、アルバイトの雇用に不慣れな生産者をバックアップし、労務関係にミスが生じないように支援する。2022年4月には社会保険労務士の監修の下、「パート・アルバイトさんを受け入れる際に知っておくべき・守るべきポイント」という約40ページの冊子を発行した。巻末には「農業にも労働基準法は適用されるのですか?」や「パートタイム労働者にも有給休暇を与えないといけないのですか?」などの基本的・実践的な16の質問を回答とともに掲載する、充実の1冊だ。

 この冊子ではまず、受け入れまでのステップを「求職者の受入れ条件の整理」「求人票の作成」「面接」「採用」「採用後」に分け、各ステップの注意事項を整理。例えば「求人票の作成」では記入例を示し、要点とともに具体のアドバイスを記載する。

 次に「守るべき法制度」として、①労務管理の留意点、②社会保険の加入義務、③労災保険特別加入制度――の3点を解説。よく問われる社会保険の加入義務については、経営主体や雇用形態など条件次第で異なる点を一覧表に整理し、生産者の理解を促す。

アルバイト雇用に不慣れな生産者に必要な情報やノウハウを冊子にまとめて配布(資料提供:JA山口中央会)
[画像のクリックで拡大表示]
アルバイト雇用に不慣れな生産者に必要な情報やノウハウを冊子にまとめて配布(資料提供:JA山口中央会)
[画像のクリックで拡大表示]
アルバイト雇用に不慣れな生産者に必要な情報やノウハウを冊子にまとめて配布(資料提供:JA山口中央会)

 労災保険や雇用保険の煩雑な手続きは、労働保険事務組合として認可済みのJA山口県に生産者が委託できる。「保険関係の手続きも含めて、JAグループ全体で生産者を支援しています」と田中氏は強調する。

 斡旋サービスとして重要な業務には、求職者と生産者のマッチングもある。求職者から応募があれば、田中氏が連絡を取り、就労意向をヒアリング。そのうえで問題ないと判断すれば、求人情報を登録する生産者との面接を設定する。さらに両者の面接にも立ち合い、採用の話をまとめていく。

 このマッチングが、冒頭紹介したように求人情報を登録した生産者には大いに好評だ。「第三者が間に入るため、求職者との無用なトラブルを未然に防ぐことが可能です。そこに、一番の安心感を抱いています」。藤村氏は高く評価する。

キャベツは例年12月から出荷最盛期を迎え、アルバイトにかかる期待はさらに大きくなる
[画像のクリックで拡大表示]
キャベツは例年12月から出荷最盛期を迎え、アルバイトにかかる期待はさらに大きくなる
[画像のクリックで拡大表示]
キャベツは例年12月から出荷最盛期を迎え、アルバイトにかかる期待はさらに大きくなる

 やまぐち農業労働力確保推進協議会では「アグポン」に続く取り組みとして、2023年3月には圃場の草刈りマッチングサイト「アグ刈り」を、24年3月には農福連携マッチングサイト「あぐぷく」を開設した。さらにその先には「アグポン」のバージョンアップを見据え、協議を始めた段階だ。「最終的には中長期的な担い手確保を目指しています。バージョンアップをぜひ、そこにつなげていきたい」と日髙氏は意気込む。

「アグポン」「アグ狩り」のポスター。人の顔が見える広告で求職者と生産者双方にアプローチ
[画像のクリックで拡大表示]
「アグポン」「アグ狩り」のポスター。人の顔が見える広告で求職者と生産者双方にアプローチ
[画像のクリックで拡大表示]
「アグポン」「アグ狩り」のポスター。人の顔が見える広告で求職者と生産者双方にアプローチ

 求人検索サイトという出会いの場を用意するだけでなく、生産者がそこを活用し、必要な人手を安心・安全に確保できる環境も整えるJA山口中央会。その手腕が中長期的な担い手確保にどう生かされるのか。「アグポン」の今後から目が離せない。