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もう一つは、中干しの開始日・終了日。平瀬氏によれば、管内でもともと中干しを行う生産者は1割ほど。多くの生産者は、延長期間として定められた7日間以上の中干しを初めて行うことになる。
これらのデータは証跡を求められる。水田の日減水深は水位の変動を測定する物差しの写真を、中干しの開始日・終了日は水田全体や取水口・排水口の開閉状況の写真を、窓口を務めるJAに提出する必要がある。
「生産者にはこれらの写真をデジタル・アナログのデータでJAに提出してもらうだけ。生産活動に集中してもらうため、写真データをGreen Carbonのプラットフォーム上に載せる作業は、JAが引き受けます。これなら生産者にとっても負担にならないはず、と判断しました」(平瀬氏)
ただ、中干しには減収リスクが伴う。行き過ぎると根を傷め、生育を阻害するからだ。収量の低下につながれば、実入りは減る。最短でも7日間にわたる中干しを生産者に安心して勧められるのか――。
「Green Carbonの支援実績を確認する限り、収量の低下は見られません。仮に生産管理上の理由で中干し期間中に水を戻したとしても、認証を受けられなくなるだけ。ペナルティーは一切ありません」。平瀬氏は強調する。

説明会で講師役を務めたGreen Carbonが連携相手。選んだのには理由がある。「国内初のクレジット認証という実績を持ち、認証クレジットの販売ノウハウを確立している点を評価しました。生産者の取り組みがムダにならないように、確実に販売できるという点が重要です」(平瀬氏)
2024年4月、管内の水稲生産者約200戸に中干し期間の延長への取り組み意向を問うと、約半数が手を挙げた。同年9月の締め切りまでに手続きを終えたのは、このうち80戸。取組面積は管内の46%にあたる1286haに上る。
認証クレジットの販売収入は、Green CarbonとJAの手数料を差し引いたうえで、温室効果ガス排出削減量に応じてJA経由で生産者に個別配分される。「Green Carbonから2024年度の実績を基に示された見込み額は、生産者にとっては副収入として十分に満足できる水準です」(平瀬氏)
Green Carbonの説明資料によれば、認証クレジットの販売時期は翌年2月以降、生産者への支払い時期は翌年11~12月という。JAあさひかわでは現在、2024年度分の支払いを待つ一方、2025年度分の新たな申請も受け付ける。
2025年度は前年度の反省を踏まえ、証跡とする写真データの撮影・提出方法をより具体化し、データ整理の効率化を目指す。平瀬氏は前年度を省みる。
「圃場番号、栽培品種、中干しの開始・終了日など、必要なデータが添えられていない例が少なくありませんでした。手続きの締め切りは、収穫の時期と重なり、JAも生産者も忙しい。そんな多忙な時期に足りないデータを改めて確認し直す作業に、非常に多くの時間を取られました」
JAがGreen Carbonと生産者の間に立つ意義はまさに、そこだ。
生産者は誰もが、生産活動に集中したい。一方で、誰もが写真データを規格通りに撮影・提出できるとは限らない。J-クレジット制度で求められる手続きに的確に対応できるか否か、バラツキが生じる。
JAは協同組合として、そこをならしたい。「必要な手続きに的確に対応できる生産者はひと握りです。多くの生産者は不慣れです。そこをサポートするのが、JAの役割です。認証クレジットの販売を通して受け取れる収益を、生産者の誰もが平等に手にすることができるように支援していきたい」。平瀬氏は訴える。

2026年度には排出量取引制度が導入される。一定規模以上のCO2排出量を持つ企業に排出量取引への参加が義務付けられ、カーボン・クレジット市場での需要増が見込まれる。足下では2025年1月、カーボン・クレジット市場における売買区分が見直され、「その他」にすぎなかった農業、それも中干し期間の延長が、独立した区分として定められたばかり。認証クレジットの販売は、いっそう弾みが付きそうだ。
JAあさひかわ管内で中干し期間の延長に取り組む水稲生産者は、2025年11~12月に初めてのクレジット販売収入を手にする。米の相対取引価格とは異なる理屈で変動するクレジット取引価格が、どの程度の副収入をもたらすことになるのか――。水稲栽培における地域の慣行が、結果によって覆るかもしれない。

