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全国中小企業団体中央会「中小企業組合ガイドブック」によれば、企業組合の目的は、組合員の働く場の確保や経営の合理化。株式会社が経済合理性を追求するのに対し、企業組合は相互扶助の精神に立脚するという。
そうした法人格の性格が、女性グループ発という出自に適合した。「自分たちで資金と労働を提供し合い、自分たちの働く職場をつくる。それが最適だという判断を下し、企業組合の設立を決めたのです」(松田氏)
企業組合として組織を一本化するにあたっては、チームごとにばらばらの味を統一することも求められた。ただ、レシピを一本化するにしても、おいしくなければ意味がない。どんな味にするのが販売面でベストなのか。
とりわけ問題だったのは、おはぎだ。餅文化に支えられた売れ筋だっただけに、ほぼ全てのチームが製造・販売していたが、味が異なる。「あんこの味が違います。三温糖には、メーカーの違いが出る。黒糖を混ぜる混ぜないの差もあります」と松田氏。そこから、新たな味を追求していくことになったという。
このプロセスが、商品の改善をもたらし、おはぎ人気を盛り立てた。
一本化の旗振り役は、松田氏だ。自身のチームは当初から菓子類の製造・販売を中心としていたため、おはぎは扱っていなかった。女性グループ内でただ一人、おはぎの味に関して中立の立場を保てる存在だったのである。
松田氏はまず、各チームのおはぎを食べ比べ、いいとこ取りを繰り返すことから始めた。「どのチームも自分たちの商品が一番です。『新たなレシピにここは取り入れるけれど、ここはご容赦ください』と説得していきました」
苦労の末、新レシピを2つのタイプまで絞り込むと、第三者の評価を得ていく。松田氏は身近な約100人に呼び掛け、試作品を食べてもらい、感想を聞いて回った。「その結果、2対1の大差で現在のレシピに落ち着きました」
味の統一を経て、“仲良しグループ”は2011年4月、企業組合ファームまぁま喜ね舎として生まれ変わった。企業組合として衛生管理や在庫管理の統一・徹底にも乗り出し、社会保険制度や労働保険制度も整えた。定年は一律70歳に設定しているが、再雇用制度に基づく上限年齢は78歳と定める。地域の女性が年齢を重ねても安心して、また相互扶助の精神に立って働ける場が、こうして誕生した。
喜ね舎愛菜館ではこの間、開設以来300㎡に満たないこじんまりした売り場を、増設によって約1.5倍に広げていた。2018年度にはその倍以上にあたる現在の1000㎡超まで広げるリニューアルにも踏み切った。
理由の一つは、売り上げの伸びだ。年間売上高は開設以来、右肩上がりに伸び続け、2024年度は約14億3000万円。所長の錠詰氏によれば、売上構成は、農産物40%、食品類30%、加工品30%、と好バランスを保つ。
売り上げの伸びとともに理由に上がるのは、出荷登録者の増加である。「喜ね舎に出荷すれば、商品が売れる」。言葉を換えれば、「所得向上の機会が、喜ね舎にある」。そんな見方が、出荷登録者数を押し上げた。
開設当初159者だった出荷登録者は2024年度に780者まで増えた。錠詰氏によれば、実際の出荷者は1日平均208者という。この中でとりわけ大きな存在感を放つのが、企業組合ファームまぁま喜ね舎なのである。
年間売上高は2024年度で約1億9000万円。錠詰氏は「直売所全体で見ると、加工品の年間売上高は約4億3000万円です。その半分近くを企業組合ファームまぁま喜ね舎が占めているわけですから、直売所への貢献度は絶大です」と笑顔を見せる。
喜ね舎愛菜館からの期待を背に、松田氏はいま、生産管理にも余念がない。絶品おはぎは人気が高いとはいえ、季節変動が大きい。一方で、県産農畜産物を中心とする和惣菜は安定した需要に支えられるが、企業組合として人手は限られるため、おはぎとの兼ね合いで作れる量は一定の制約を受ける。
「天候の変化を気に掛けながら、売り上げ全体として前年度を少しでも上回れるように、おはぎと和惣菜の生産量を調整しています。売上比率で言えば、おはぎ45%、和惣菜55%を基本に据えています」(松田氏)
悩みは、次代を担う働き手の確保だ。「年金収入を補えるし、健康管理にも役立つという理由で、高齢女性の求職はあります。早朝勤務中心で日中を自由に過ごせるのも魅力です。ただ70歳を超えると、体力面でさすがにきつい。そこで退職されると、リーダーの人材が育ちません」と松田氏は嘆く。
来年度は事業継続に向けて人員規模の縮小を余儀なくされるが、それでも松田氏は前を向く。気持ちを支えるのは、成長の喜びだ。
「自ら手作りした加工品が、喜ね舎愛菜館で売れる。しかも、売り上げは増えています。これからも、企業組合の代表理事として経験を積みながら、ともに成長していきたいと思います」。松田氏は自らのキャリアを今後も築き続けていく。

