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[コージェネ財団 特別講演会2016レビュー2] 鼎談 自由化時代におけるエネルギー・環境イノベーション戦略(前編)

[コージェネ財団 特別講演会2016レビュー2] 鼎談 自由化時代におけるエネルギー・環境イノベーション戦略(前編)
2016年8月24日(水)公開
取材・構成・文/中村実里 写真/加藤康
 

コージェネ財団が7月21日に開催した特別講演会で、「自由化時代におけるエネルギー・環境イノベーション戦略」と題した鼎談に、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の久間和生議員、名古屋大学 大学院環境学研究科 持続的共発展教育研究センターの杉山範子特任准教授、コージェネ財団の柏木孝夫理事長が登壇。次世代の鍵を握る地産地消型エネルギーシステムによる、超スマート社会を実現していく上でのコージェネの役割や可能性について意見が交わされた。

エネルギーシステムを核とする超スマート社会

柏木孝夫氏(以下敬称略):今年4月に電力の小売り全面自由化が始まり、家庭部門でも電力会社を自由に選択できるようになりました。地域の中に電源が入っていき、新しい需給構造になってくるでしょう。

 従来の大規模集中型エネルギーシステムは、総括原価方式の料金体系のもと電力会社単位で運用され、一部稼働率の低い電源を抱えつつも、工業化、エネルギー需要増大の中で効率的かつ安定的に電力を供給する優れたシステムでした。

 しかし、昨年末にフランスのパリで開催された「国連気候変動枠組条約 第21回締約国会議(COP21)」において、新たな枠組みとして採択された「パリ協定」は、ある意味では低炭素という甘い話ではなく、脱炭素と言っても過言ではない内容でした。あれ程の目標が掲げられたことは、今後のエネルギーシステムに対して大きな変化を与えると考えます。

 その1つが、デマンドサイドにおいて、いかに地産地消エネルギーシステムを導入していくかということです。各地域で自然エネルギーを取り込み、コージェネをうまく組み合わせて、熱まで使い尽くす。先進国の中で技術立国日本が一歩先に抜け出すためには、この地産地消システムをいち早く進めていくことが重要です。

久間 和生(きゅうま かずお) 氏
久間 和生(きゅうま かずお) 氏
内閣府 総合科学技術・イノベーション会議 議員
1972年東京工業大学工学部電子工学科卒業、77年東京工業大学大学院博士課程電子物理工学専攻修了(工学博士)。同年三菱電機株式会社入社(中央研究所勤務)。98年半導体事業本部人工網膜LSI事業推進プロジェクトマネージャ、2003年先端技術総合研究所長、06年常務執行役開発本部長、10年専務執行役半導体・デバイス事業本部長、11年代表執行役副社長、12年常任顧問、13年総合科学技術会議議員(常勤)。14年より現職。

久間和生氏(以下敬称略):安倍首相が議長である総合科学技術会議は、平成26(2014)年に「総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)」に改組されました。「イノベーション」が付いたのは、科学技術の振興だけではなく、科学技術を産業や社会に生かしイノベーションを起こすという目標を明確に示すためです。私を含む民間の有識者議員らが、内閣総理大臣および内閣を補佐し、各省より一段高い立場から、科学技術イノベーション政策に関する企画立案や総合調整のアシストを行っています。

 日本は、1995年に科学技術基本法が制定されて以来、5年ごとに科学技術基本計画を作成しており、今年4月から第5期科学技術基本計画が始動しました。政府による研究開発投資の総額規模を、5カ年で26兆円とする目標を掲げています。今後、科学技術による経済成長という具体的成果をしっかりと出していかなければなりません。

 第5期基本計画の大きな特徴は、未来の産業創造と社会変革に向けた新たな価値創出の取り組みとして、世界に先駆けた「超スマート社会(Society 5.0)」の実現を提唱している点です。Society 5.0とは、様々な分野でサイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させることで新たな価値を創出し、経済発展と社会課題の解決の両立を図るものです。中でも、高度道路交通システム、エネルギーバリューチェーン、ものづくりシステムの3つをコアシステムとして開発していきます。

柏木:「エネルギーミックス(長期エネルギー需給見通し)」の実現を目指した経済産業省による「エネルギー革新戦略」の策定には、私も有識者として議論に参加しました。具体策としては、1つめが徹底した省エネ、2つめは再生可能エネルギーの導入拡大、3つめは、久間先生のお話とリンクしますが、新たなエネルギーシステムの構築です。これまで大規模集中型に一辺倒であった電力の需給構造から、分散型システムへとデマンドサイドの開発が行われていきます。省エネや新エネルギーの融合型システムの立ち上げということで、地域エネルギーやコージェネをうまく使いながら、自然エネルギーを取り込み、かつ最大限の省エネを達成する。デマンドレスポンスを行い、ネガワット市場も機能させるなど、新たな市場創成につながり、そして、ビジネスモデルは多岐にわたり、いろいろな方々が参加する機会がもたらされるでしょう。

 平成28(2016)年度は、地域の分散型エネルギーを面的に融通して利用できる地産地消型エネルギーシステムの構築を推進するための予算が、経産省で計上されました。これを、熱需要に対応する熱導管やワイヤ&ファイバー(電力線と通信用光ファイバー)の一体型の自営線を整備する予算として活用し、電力や熱を融通できるようにしたいと考えています。総務省でも、自治体主導のプロジェクトを各省庁連携で重点的に支援しますので、その補助金の1次公募には多数の応募がありました。

 デマンドサイドで電力や熱を融通できるようになれば、ピークがこの中で吸収されるようになります。そうすると、大規模集中型の電源は良いものだけが残り、稼働率が上がる。まさにWIN-WINモデルなのです。

■Society 5.0

※内閣府「第5期科学技術基本計画」より

Society5.0とは、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く、
以下のような新たな経済社会

  1. サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させることにより、
  2. 地域、年齢、性別、言語等による格差なく、多様なニーズ、潜在的なニーズにきめ細かに対応したモノやサービスを提供することで、
    経済的発展と社会的課題の解決を両立
  3. 人々が快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることのできる、
    人間中心の社会

※内閣府「第5期科学技術基本計画」より
 

 
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来る2月15日、コージェネ財団は、「IoTネットワークによる超スマートシティへのアプローチ」をテーマに、「コージェネシンポジウム2018」を東京・千代田区のイイノホールで開催します。翌16日には、テクニカルツアーも実施します。ぜひご参加ください。

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