2013年4月、トヨタ自動車が、グループ会社であるトヨタ自動車東日本の工場がある宮城県大衡村を舞台に検討を進めてきた「F-グリッド構想」が具現化し、本格稼働した。東日本大震災時に生産が停止した教訓を踏まえ、ものづくりを支えるインフラ強化とともに地域の活性化を目指す、工業団地における新しいスマートコミュニティ事業である。トヨタ自動車を中心とする企業と地域とが、連携しながら事業を推進する。
このF-グリッドには、「日本にものづくりを残さなくてはいけない」という豊田章男社長の強い意志が込められている。オールトヨタ一丸となって取り組むプロジェクトと位置付けられ、この経営トップの強い意志が、構想を具現化する大きな推進力となっている。
同年2月には、トヨタ自動車やトヨタ自動車関連会社のほか、東北電力や仙台市ガス局などのエネルギー事業者、工業団地内の企業などが参画し、本事業の運営組織として「F-グリッド宮城・大衡有限責任事業組合(F-グリッドLLP)」が創設された。現状は、11団体の組合員で構成され、今後もさらに参加企業を募っていくという。
もともとトヨタ自動車は、工場単体での省エネ対策を他社に先駆けて積極的に取り組んできた。70年代にはすでに自家発電の導入を進め、90年代にはエネルギーの見える化も始めていた。
そして、F-グリッドへと展開する契機となったのが、あの一昨年の東日本大震災である。トヨタ自動車が培ってきた知見を生かし、工場単体だけでなく地域へ広げたエネルギーマネジメントを実現する検討が始まった。2011年夏に構想をまとめ、その後2年という短期間で具現化した。
「2年前の震災を経て、工場を運営するためには人材育成だけではなく、その地域がしっかりとものづくりを支えるインフラを持っている必要があるのだと再認識しました。これを契機にして、ものづくりや人づくりのためのインフラ構築に取り組んでみようとの考えに至り、F-グリッド構想の検討を始めました。東北地方でなんとかものづくりを継続したい、という強い思いで取り組んでいます」と、トヨタ自動車 新事業企画部 企画室長で、F-グリッドLLPの組合長も兼務する等哲郎氏は語る。
東北の復興は喫緊の課題であり、生産拠点を置くトヨタ自動車グループは、その当事者でもある。エネルギーの安定供給や有効活用を図る、次世代の工業団地のモデルとなるF-グリッドを構築することで、ものづくりの拠点におけるエネルギーセキュリティの確保のほか、自動車事業や新規事業を通じた活気あふれる地域づくりを目指す。

「F-グリッド」事業の概要