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[財団10周年記念 コージェネシンポジウム2022 レビュー4]鼎談 カーボンニュートラルに向けた日本のトランジション戦略 アジアでの国際連携とイノベーションを

[財団10周年記念 コージェネシンポジウム2022 レビュー4]鼎談 カーボンニュートラルに向けた日本のトランジション戦略 アジアでの国際連携とイノベーションを
2022年3月30日(水)公開
取材・構成・文/小林佳代 写真/加藤 康
 

「コージェネシンポジウム2022」では「カーボンニュートラルに向けた日本のトランジション戦略」と題した鼎談が行われた。ゲストとしてICEF(Innovation for Cool Earth Forum)運営委員会議長で元国際エネルギー機関(IEA)事務局長の田中伸男氏、電源開発執行役員の中山寿美枝氏が登壇した。柏木孝夫コージェネ財団理事長がコーディネーターを務めた。脱炭素化に向け、いかにリアリティあるシナリオを構築するか。世界の状況を参考に日本の事情を踏まえた議論が繰り広げられた。

ネットゼロは主要排出国以外の対策も必要

中山 寿美枝(なかやま・すみえ)氏
中山 寿美枝(なかやま・すみえ)氏
電源開発執行役員/京都大学経営管理大学院特命教授
東京工業大学大学院博士後期課程修了、工学博士。電源開発株式会社において地球環境技術対策、電力需給分析、エネルギー・気候変動政策などの担当を経て現職。総合科学技術イノベーション会議エネルギー戦略協議会構成員、Global CCS Institute取締役などを兼務。

柏木孝夫氏(以下敬称略):日本政府は「2050年カーボンニュートラル達成」を掲げています。CO2排出削減の高い目標を掲げ、実現に向け努力するのは先進国としての責務でしょう。問題は2030年、2040年といかにリアリティのあるシナリオを構築するかです。まずは省エネの徹底によって低炭素化し、最終的にエネルギー源を脱炭素化するといった着実なトランジション(移行)が必要です。世界の状況を確認しつつ、日本が取るべき戦略について話していきたいと思います。

 まずは脱炭素に向けた世界の潮流を皆さんと情報共有したいと思います。中山さん、レクチャーをしていただけますか。

中山寿美枝氏(以下敬称略):国際エネルギー機関(IEA)の2つの報告書をベースにご説明します。

 1つ目の報告書はIEAが2021年5月に公表した「Net Zero by 2050」です。この報告書を発表する際、ファティ・ビロル事務局長は「2050年ネットゼロへの道は狭いが実現可能」と発言しています。電力部門が脱炭素化し、産業、運輸、民生部門が消費エネルギー量を減らしつつ、電化率を高めることをネットゼロへのプロセスとして示していますが、電化が不可能な分野もあります。そこで活躍するのが水素です。ネットゼロの実現は、水素社会が構築され、産業や運輸の脱炭素に貢献することが大前提となっています。

 IEAのもう1つの報告書が「World Energy Outlook 2021」です。ここでは3つのシナリオが描かれています。第1が2050年ネットゼロを達成した「NZE(Net Zero Emissions by 2025)」、第2が2021年6月時点でネットゼロを宣言した国がすべて達成したと想定した「APS(Announced Pledges Scenario)」です。第3の「STEPS(Stated Policies Scenario)」は同時点で、パリ協定に参加する各国が国連に提出した国別削減目標(Nationally Determined Contribution : NDC)を反映させたシナリオです。それぞれのCO2排出量には大きな差があり、産業革命からの気温上昇を見ると2100年時点でNZEは1.5度ですがAPSは2.1度、STEPSは2.6度高くなるという予想です。

 APSシナリオの主要な国・地域別データで排出量を見ると、米国、欧州連合(EU)、日本は2050年にほぼゼロになっていることが確認できます。中国の2060年カーボンニュートラル宣言が反映されていることも確認できました。

 このカーボンニュートラルが反映されている日本、米国、EU、中国について、各種エネルギー指標を比較したものを示します。部門別の電化率、エネルギー消費、電源構成など、どれも国によって異なり、特徴があることが示されています。

 
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