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[コージェネシンポジウム2021レビュー3]鼎談 ゼロエミッションビジネスへの展望 ~日本の取るべき道~ システム・オブ・システムズを確立し世界に発信

[コージェネシンポジウム2021レビュー3]鼎談 ゼロエミッションビジネスへの展望 ~日本の取るべき道~ システム・オブ・システムズを確立し世界に発信
2021年3月24日(水)公開
取材・構成・文/小林佳代 写真/加藤 康
 

鼎談は「ゼロエミッションビジネスへの展望」というテーマで行われた。川崎重工業代表取締役会長の金花芳則氏と東京ガス社外取締役、味の素社外監査役、AIGジャパン・ホールディングス社外監査役を務める引頭麻実氏をゲストに迎え、コージェネ財団理事長の柏木孝夫がコーディネーターを務めた。 ゼロエミッションの実現に向けた産業界、金融界の取り組み、課題などについて議論を深め、その中で日本が取るべき道を明らかにした。

電力不足で安定供給の重要性を再認識

柏木孝夫氏(以下敬称略):昨年10月、菅義偉首相が2050年までのカーボンニュートラルを目指すと宣言し、日本のエネルギー政策は大きな転換点を迎えています。この宣言を受け、昨年12月には経済産業省が関係省庁と連携して「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定しました。ゼロエミッションという、今までの延長線上にはない不連続のエネルギーシステムがこれから社会に実装されていきます。川崎重工業はこの変化にどう対応していきますか。

金花 芳則(かねはな よしのり) 氏
金花 芳則(かねはな よしのり)氏
川崎重工業代表取締役会長
1976年大阪大学基礎工学部卒業後、川崎重工業入社。2007年車両カンパニープロジェクト本部長、08年車両カンパニー車両ビジネスセンター長に就任。09年執行役員、11年常務執行役員、12年常務取締役、マーケティング本部長を歴任。13年代表取締役常務、車両カンパニープレジデント、16年代表取締役副社長、社長補佐を経て同年代表取締役社長に就任。18年代表取締役社長執行役員、最高経営責任者、20年より現職。

金花芳則氏(以下敬称略):川崎重工業は17年に「Kawasaki地球環境ビジョン2050」を策定し、二酸化炭素(CO2)、廃棄物、有害化学物質の排出ゼロを目指すことを宣言しました。企業としてはかなり早い段階でカーボンニュートラルに言及し、以来、取り組みを進めています。

 これまでの環境対策を振り返ると、「環境基本法」が制定された翌年の1994年に第1次環境経営活動基本計画を策定。3年ごとに計画を見直し、現在は第10次環境経営活動基本計画を進行中です。2010年からは水素サプライチェーンの構築に乗り出し、14年には環境配慮に特に優れた製品を「Kawasakiグリーン製品」として審査し公表する制度を創設しました。CCU(CO2の回収・利用)やCCS(CO2の回収・貯留)の研究も続けています。

 川崎重工業の創業者である川崎正蔵の理念は「そのわざを通じて国家社会に奉仕する」というものでした。その方針を脈々と引き継ぎ、現在は社会、環境にも貢献したいという気持ちを強く持って事業を遂行しています。

柏木:川崎重工業は早くから環境に関心を持ち、カーボンニュートラルに向けて広範囲に取り組みを進めてきたのですね。

 日本は最終エネルギー消費のうち電力の占める比率が26%。74%は非電力です。カーボンニュートラルに向けては電化比率を引き上げつつ脱化石燃料によって脱炭素を進め、水素を導入するというのが世界の流れで、日本もその方向に進むと予想されます。引頭さんはエネルギーシステムの変革について、どのようなお考えがありますか。

引頭麻実氏(以下敬称略):首相のカーボンニュートラル宣言の後、多くの企業が様々なプランを発表しています。「トレンドに乗り遅れてはいけない」と、一種のブームになっている気がします。

 一方で最近、私が個人的に身に沁みて感じたのが、電力の安定供給の重要性です。20年末から21年始めにかけて強烈な寒波の到来によって暖房需要が高まると、オーストラリアやノルウェーなどでの液化天然ガス(LNG)の生産不調なども影響し、結果として、電力需給が逼迫してしまいました。

 日本卸電力取引所(JEPX)で取引されるスポット価格の最高値は従来75円でしたが、一時251円まで跳ね上がりました。株式市場でもこんなに大きく価格が変動することは、あまりありません。

 この事態を目の当たりにして、電源構成を考えることも大事ですが、ゼロエミッションに資する方向で安定供給できるエネルギーシステムを構築することが何より重要だと思いました。具体的には、地域に再生可能エネルギーなどの分散電源を導入し、従来のグリッドとは異なる供給網を構築すること。需要の抑制や効率の良いエネルギー使用も必要です。

 多様なエネルギー源を組み合わせ、それぞれの得意な分野で力を発揮するというアプローチが求められると感じました。

 
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