柏木孝夫氏(以下敬称略):日本は2050年にカーボンニュートラル達成を目指しています。2050年までは時間がありますが、エネルギーセキュリティーはこの瞬間にも守るべきものです。暮らしや産業になるべく影響を与えない形で、いかにトランジションしていくかが問われます。
東京ガスは、カーボンニュートラルに向け、どのような方針で取り組みを進めていますか。
小西雅子氏(以下敬称略):東京ガスは今年2月に2025年度までの中期経営計画を発表しました。脱炭素化に取り組む当社方針は、「ヒエラルキーアプローチ」に基づいており、まずは徹底的な省エネ・省CO2のため、石炭や重油からの燃料転換、スマートエネルギーネットワークの拡大などにより、天然ガスの高度利用を推進します。太陽光や風力など、再生可能エネルギー電源の獲得による脱炭素化にも取り組みます。それでも十分に排出を削減できない部分はオフセットを行います。
今回の中計では、改めて地域の皆さまから、ビジネスパートナーとして選んでいただくことも宣言しました。「2050年にCO2排出量実質ゼロを実現する」と表明した自治体は900以上ありますが、具体的な計画に悩んでいらっしゃる自治体も少なくありません。東京ガスは自治体のパートナーとして、各地域に寄り添った最適なソリューションを提供します。
今年6月時点で24自治体と「カーボンニュートラルのまちづくりに向けた包括連携協定」を締結しています。自治体ごとにチームをつくり、共に取り組みを進めています。
柏木:環境省は地域に向けて、どのような取り組みを行っていますか。

森本 英香(もりもと ひでか)氏
早稲田大学法学部教授
元環境事務次官
1957年生まれ。東京大学法学部卒業。1981年4月環境庁(現環境省)入庁。2011年8月内閣審議官、内閣官房原子力安全規制組織等改革準備室長、2012年9月原子力規制庁次長、2014年7月環境省大臣官房長を歴任。2017年7月環境事務次官に就任。2019年7月環境省顧問を経て2020年4月早稲田大学法学部教授に就任。現在に至る。
森本英香氏(以下敬称略):地域をターゲットに取り組みを進めています。2021年6月に定めた「地域脱炭素ロードマップ」と同年10月に閣議決定した「地球温暖化対策計画」によって、2030年までに少なくとも100カ所の「脱炭素先行地域」を設ける方針です。現在までに60地域ほどを選定しました。
地域社会が脱炭素化しつつ、レジリエントになるための道具として、エネルギーを生み出し、再エネの調整役も果たすコージェネレーション(熱電併給)システムはとても有効だと考えています。
自治体の中には「手を挙げたけれど、何をすればいいか分からない」というところもあります。そこで、今は募集の際に民間事業者などと共同での計画提案を求めています。東京ガスが既に地域の脱炭素化の取り組みをリードされているのは、大変有難いことです。
柏木:日本では、固定価格買取制度の導入を機に再エネビジネスが拡大しました。ただ太陽光パネルや風車の多くは中国製です。地域電力に中国資本が参画し、サーチャージも中国に流れるケースがあります。国内でお金が回る形にならなければ、サーキュラーエコノミー(循環経済)とは言えません。
森本:おっしゃる通り、気づけば富が国外に流れる構図になっています。それを防ぐため、地元企業が出資し、電源を持つ地域電力を設立する動きが広がっています。こうした動きをサポートする仕組みをつくることが必要です。脱炭素先行地域の募集に当たり、民間事業者と共同での提案を必須としたのも、富を国内に落とす仕組みをつくることが1つの狙いです。