柏木孝夫氏(以下敬称略):大規模電源一辺倒だったエネルギーシステムは自由化を経て太陽光、風力、中小水力、地熱、コージェネなど分散型電源も取り入れた百花繚乱のシステムへと変わりつつあります。そんな中、2024年元日に能登半島地震が発生しました。1カ月たった現在、復旧は進んだものの、いまだに停電が続く地域もあります。エネルギーシステムの強靱性について、再度考えさせられる災害になったといえます。
大阪ガスは1995年に発生した阪神・淡路大震災では復旧までかなり苦労したと聞いています。今、地震に対する備えはどの程度、進んでいるのでしょうか。

井上雅之(いのうえ まさゆき)氏
大阪ガス常務執行役員
Daigasエナジー代表取締役社長
1988年京都大学経済学部経済学科卒業。同年大阪瓦斯入社。2009年資源事業部資源トレード部新規契約チームマネジャー、2012年エネルギー事業部計画部長、2015年理事企画部長、2018年執行役員。2020年Daigasエナジー代表取締役社長に就任。2021年大阪ガス常務執行役員に就任。
井上雅之氏(以下敬称略):都市ガス事業に関して言えば、耐震性や強靱性は劇的に向上しています。パイプラインはポリエチレン管という耐震性の高いものに置き換わりつつあります。大阪ガスでは阪神・淡路大震災当時の10倍以上に増やしています。
また、中圧・低圧導管ネットワークを複数の「地震対策ブロック」に区分し、ブロック単位で被害を判定するようになりました。本当に止めるべき地域を特定するので、影響を最小限にとどめられます。阪神・淡路大震災の時には80数万世帯のガスを止め、復旧まで3カ月近くかかりましたが、2018年に震度6弱を記録した大阪府北部地震では供給停止を11万世帯にとどめ、1週間で復旧させました。
今回地震が起きた能登半島は、LPガスが主流です。パイプラインで結ばれていないLPガスは震災時に早期の復旧が可能になる面もありますが、今回は住宅の建屋ごとなぎ倒される形で大きな被害が出たと想像しています。
柏木:ガスインフラが保たれ、それを家庭用燃料電池「エネファーム」につなげることができれば、停電のダメージも少なく済みます。ただ、こうした分散型エネルギーシステムを構築しても、建屋がつぶれれば生活は成り立ちません。エネルギーシステムも建屋も一体で強靱性を保つことが重要です。
伊藤さんは国土交通省で建築物の耐震性にもかかわってきた立場ですが、どのように考えていらっしゃいますか。
伊藤明子氏(以下敬称略):阪神・淡路大震災以降、国は耐震改修を積極的に進めてきました。木造戸建て住宅については、2000年に木製部材を接合する金物基準の明確化も行っています。ただ、今回の能登半島地震では、古い建物が多かったこと、何回も強く揺れたことが影響して、非常に大きな被害が生じてしまったのだと思います。
そもそも建物の耐震基準は「倒れて人が死ぬことがない」という基準に設定され「補修せずに住み続けられる」ことを担保しているわけではありません。最近は、建屋は壊れなくても、電気などインフラに問題があり暮らし続けられないという問題も多く起きています。避難所や防災拠点になるような建物はそれでは困ります。国土交通省がガイドラインを出し、それに沿って、地方自治体などの公共団体が耐震性の強化などに動いているのですが、能登では、そこまで対応できていなかった地域もあるようで残念に思います。