
髙原 一郎(たかはら いちろう) 氏
独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC) 理事長
1956年生まれ。1979年東京大学法学部卒業。同年通商産業省(現経済産業省)入省。2004年大臣官房会計課長、2009年関東経済産業局長に就任。2010年中小企業庁長官、2011年資源エネルギー庁長官を経て2013年丸紅に入社。代表取締役常務執行役員、専務執行役員、副社長執行役員等を歴任。2019年代表取締役副社長執行役員、2020年取締役副会長に就任。2023年4月より現職。
柏木孝夫氏(以下敬称略):カーボンニュートラル達成のカギとなる省エネ・電化・水素化・DXを推進するには、規制改革を行い、関連プロジェクトをスピードアップすることが必要です。我が国では昨年来、グリーントランスフォーメーション(GX)関連の法整備が進みました。今年5月には「水素社会推進法」「CCS事業法」が成立しています。
柿原さん、川崎重工業はこうした環境の中、水素やCCSに対してどのような取り組みを進めていますか。
柿原アツ子氏(以下敬称略):川崎重工業は水素を「つくる」「はこぶ」「ためる」「つかう」というそれぞれのステージで技術開発を推進しています。水素液化機、液化水素運搬船、液化水素タンク、水素ガスタービンなど関連機器のラインナップをそろえ、水素の普及に備えています。
先般設立した日本水素エネルギー(JSE)を通じて、上流から下流まで液化水素を供給するサプライチェーンの構築にも取り組んでいます。水素バリューチェーン推進協議会やハイドロジェンカウンシルなどにも参画し、国内外で関係する自治体や企業と連携し、仲間づくりを深めているところです。少し先の未来に、水素が社会の様々なところに実装され、エネルギーセキュリティーとカーボンニュートラルに貢献する姿を思い描いています。
CCSの領域では、CO2の分離・回収技術の開発も進めています。
柏木:日本はこれまで、法制度や規制改革で諸外国に遅れをとりがちでした。今回成立した法律では、大胆な支援策を盛り込むなど、この分野に賭ける政府の意気込みを感じます。髙原さんはこの法整備をどう受け止めていますか。
髙原一郎氏(以下敬称略):日本では、2020年に菅義偉前首相が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げて以来、様々な法律が成立しました。
川崎重工業のような製造業、鉄鋼業、エンジニアリング会社、エネルギー会社など多くの企業が、この分野にビジネスチャンスがあるととらえ、積極的な取り組みを始めています。ご指摘の通り、環境整備をスピードアップしなくてはなりませんが、新しい市場をつくる作業というのは時間がかかるものです。その段取りを着実に進めているところと言えると思います。
「水素社会推進法」は天然ガスなど既存の燃料との価格差を補う支援や拠点整備支援などを盛り込んでいます。これから省令を定め、プロジェクトを認定し、資金を拠出するという流れになります。
一方、「CCS事業法」に関しては、貯留権の設定の仕方やモニタリングのあり方などを想定していますが、実際に事業を行うには、支援のあり方を含む実施法的な法律がもう1本必要です。CO2を国内で貯留する企業もあれば、海外に運び込み貯留する企業もある。どういうフィロソフィーで、どういう支援を行うかは、これからの議論です。
独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は、これらの法律をつくる際、資源エネルギー庁に協力し、一体的に進めてきました。水素に関しては認定を受けた計画に従い、必要な資金にあてるための助成金を交付する業務を、CCSでは事業終了後のモニタリング等の管理業務を担うことになっています。