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[財団10周年記念 コージェネシンポジウム2022 レビュー3]10周年記念講演 科学技術・イノベーションの役割 “勝ち筋”技術を見極め産学官連携を

[財団10周年記念 コージェネシンポジウム2022 レビュー3]10周年記念講演 科学技術・イノベーションの役割 “勝ち筋”技術を見極め産学官連携を
2022年3月16日(水)公開
取材・構成・文/小林佳代 写真/加藤 康
 

「コージェネシンポジウム2022」では一般財団法人日本建築センター顧問で前内閣総理大臣補佐官の和泉洋人氏が「科学技術・イノベーションの役割」をテーマに10周年記念講演を行った。和泉氏は戦後の日本の成長を牽引してきた科学技術・イノベーションの力に変調が見えていることを指摘。経済安全保障の重要性が高まる中、日本は〝勝ち筋〟を見極め、産学官が連携して戦略的に政策を遂行し科学技術立国の再興を果たすべきと説いた。

日本の成長は科学技術が牽引してきた

和泉洋人(いずみ ひろと) 氏
和泉洋人(いずみ ひろと) 氏
一般財団法人日本建築センター顧問(前内閣総理大臣補佐官)
 
Profile
1953年神奈川県生まれ。工学博士。76年東京大学工学部都市工学科卒業。同年建設省(現国土交通省)入省。2004年国土交通省大臣官房審議官(住宅局担当)、07年同住宅局長、09年内閣官房地域活性化統合事務局長を経て12年内閣官房参与(国家戦略担当)、13~21年内閣総理大臣補佐官を歴任。20年より現職。著書に『容積率緩和型都市計画論』(信山社出版)、『サスティナブル建築と政策デザイン』(共著、慶應義塾大学出版会)など。

 日本は資源のない島国です。その日本が戦後、なぜ高度成長を遂げることができたのか。陰りが見えるとはいえ、なぜ今なお世界最高水準の生活を謳歌できているのか。それは科学技術・イノベーションが大きな役割を果たしたからです。

 1960年代、国は鉄鋼、船舶などの重厚長大産業を重点分野にリソースを集中し、官民挙げて育成を図りました。1970年代にオイルショックが起きた際には、徹底した技術開発とイノベーションでエネルギー効率を向上させつつ高品質な製品の大量生産を実現し、自動車をはじめとする加工組み立て型産業を発展させました。1980年代にプラザ合意によってドル高・円安が是正されると海外展開を進め価格競争力を向上させてきました。

 日本の技術は様々な社会課題にも対応してきました。1970年には米国で大気汚染防止のため「マスキー法」が制定され、自動車に厳しい排ガス規制が導入されます。日本企業はこの制約をテコにイノベーションを創出しました。ホンダはCVCCエンジンで規制をクリアし、自動車の輸出量を大幅に増やしました。

 国内総生産(GDP)の成長率には労働力の投入、資本の投入、そして技術進歩や生産の効率性などの指標である全要素生産性(Total Factor Productivity:TFP)が寄与します。日本の過去の成長は、TFPが大きな影響を与えてきました。公的な研究開発の民間移転などを通じてTFPが向上し、それが経済成長をもたらしてきたのです。

 これまで講じた科学技術政策によって、日本は様々な成果を上げてきました。ライフサイエンス分野ではiPS細胞、材料科学では青色LED、学術分野ではニュートリノがノーベル賞を受賞しています。医療・福祉用ロボットスーツ、クロマグロの養殖、緊急地震速報など日本独自のユニークな技術も実現しました。コージェネもその1つです。

 こうした技術開発はある日突然、大学や民間から生まれたわけではありません。国は「科研費」と呼ばれる科学研究費助成事業を実行しています。人文・社会科学から自然科学まですべての分野にわたる学術研究の発展を目的とするものです。1つの基礎的研究にまず少額の予算を投じ、伸びると見込んだテーマには少し大きな予算をつけ、社会実装が近づくと国家プロジェクトとして巨額の資金を投入するというプロセスです。

 2019年には電気自動車の基幹部品であるバッテリーにもなるリチウムイオン電池の開発で吉野彰氏がノーベル化学賞を受賞し、2021年には気候変動モデルの研究で真鍋淑郎氏がノーベル物理学賞を受賞しました。こうした人類社会に貢献するイノベーションも、基礎的研究からコツコツ積み上げることによって大きな成果を上げたのです。

 
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