2月12日の「コージェネレーション・エネルギー高度利用シンポジウム2014」では、「スマートコミュニティにおけるコージェネの役割と期待」と題したパネルディスカッションに、千葉大学大学院工学研究科建築・都市科学専攻教授の村木美貴氏、鹿島建設専務執行役員建築設計担当の長谷川俊雄氏、日立製作所インフラシステム社都市システム本部担当本部長の稲田和広氏、東京ガススマエネ推進部長の菱沼祐一氏がパネリストとして登壇。コージェネレーション・エネルギー高度利用センター(ACEJ)の柏木孝夫理事長がコーディネーターを務めた。
まず産学の専門家であるパネリストがコージェネレーション(熱電併給)システムを取り入れた街づくりで先行する英国の事例や各社の取り組みについてプレゼンテーションを行った。その後、官民連携、規制緩和、コージェネのコストダウンなど現在の課題について議論を交わした。
柏木孝夫氏(以下敬称略):安倍政権は国土強靱化を推進しようと3兆円以上の予算を計上しています。コージェネレーション(熱電併給)システムを活用したスマートコミュニティ(スマコミ)の構築は強靱化に直結するものです。きょうはコージェネを導入したスマコミ実現のために必要な政策や課題について多角的に議論していきたいと考えています。都市づくりが専門の村木さんから見ると、どのあたりが課題になると考えますか。

村木美貴(むらき みき)氏
千葉大学大学院工学研究科建築・都市科学専攻教授。1996年横浜国立大学大学院工学研究科博士課程後期修了。同年東京工業大学大学院社会理工学研究科助手、2000年オレゴン州立ポートランド州立大学客員研究員、02年千葉大学工学部都市環境システム学科助教授、08年千葉大学大学院工学研究科建築・都市科学専攻准教授。13年より現職
村木美貴氏(以下敬称略):やはり採算性をいかに向上するかがカギだと思います。
私が長く研究している英国では地域冷暖房でコージェネを取り入れるケースが増えています。特に積極的に進めているのは、大規模開発にCO2(二酸化炭素)排出量の削減義務が課せられるロンドンです。官がエネルギー会社と20~30年の長期契約を結んだり、エネルギーセンター用に公共の土地を無料でリースしたり、開発地域の周辺企業に熱導管への接続義務を課したりすることで、地域冷暖房を手掛ける事業者の採算性を高め、利用者に割安な料金で熱を提供しています。官民連携によって、事業者も利用者も最大のメリットを享受できる仕組みができあがっています。
一昨年のロンドン五輪に合わせた再開発でも、こうした仕組みが活用されました。
柏木:2020年の東京五輪でも、低炭素で強靭なスマコミの構築を積極的に進めるべきで、ロンドンの取り組みは参考にできそうです。鹿島建設は大型複合施設「東京イースト21」のリニューアルに当たり、コージェネを活用したスマートエネルギーネットワークを構築しました。どのような狙いがありましたか。

長谷川俊雄(はせがわ としお)氏
鹿島建設専務執行役員建築設計担当。1971年東北大学工学部機械工学科卒。同年鹿島建設入社。97年建築設計本部設備設計部部長、2001年設計・エンジニアリング総事業本部本部次長、03年同副本部長、04年建築設計本部副本部長、05年執行役員副本部長、08年常務執行役員副本部長、同年常務執行役員建築設計担当、12年より現職
長谷川俊雄氏(以下敬称略):当社は2020年にゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)の実現を目指しています。東京イースト21もこのプロジェクトの一環です。熱と電気とを同時に供給し、エネルギーを高効率に利用できるコージェネの総合エネルギー効率は70%を超え、30%近くの電力ピークカットが可能となりました。
ただし、コージェネは省エネ性の向上というエナジーベネフィット(直接的便益)だけでなくノンエナジーベネフィット(間接的便益)を含めた総合的な評価が重要です。我々がノンエナジーベネフィットの一つと捉えているのが「不動産価値向上に伴う便益」です。施設の見学者350名とウェブ閲覧者2000名を対象にアンケート調査を行い、「BCP(事業継続計画)を確保するためにどれくらいの追加賃料を受け入れるか」を換算したところ、平均1カ月1坪当たり700円前後という結果が出ました。この金額をそのまま賃料に上乗せできるという結論は出しておりませんが、不動産会社も電源の信頼性を重視するようになっており、コージェネの位置付けは高まっていると感じます。