柏木孝夫氏(以下敬称略): これまでの日本の成長戦略は、システムインテグレーションした自動車や家電といった製品を売ることで、外貨を稼ぐシナリオでした。しかし、今後、日本が得意とする高付加価値な製品の市場価値が相対的に下がり、一般的な製品として扱われるようなコモディティ化が進んでくると、日本の競争力も相対的に下がって、他国との差異化が難しくなります。ならば、その先の成長戦略は、どのようなシナリオを描くべきでしょうか。
山下徹氏(以下敬称略): 日本では住環境に大きな問題があります。その解決には、エネルギー供給が重要なポイントになるでしょう。
例えば、日本人の死因の上位に挙げられる脳溢血は、半身不随などの後遺症でリハビリを必要になるケースが少なくありませんが、これが日本の医療費負担の中で大きな割合を占めているそうです。そして、予防策として、住宅の窓を二重窓にしてセントラルヒーティングを導入すれば、脳溢血の発症率が激減するのだと聞きました。

エネルギーを適切に使えて、快適で健康的な生活ができる住環境を、高齢者向けだけでなく若い時から提供していくことが大切です(秋山氏)
秋山弘子氏(以下敬称略): そうした住居内の温度管理による、病気の予防に関する研究は多くあります。予防医療は、より重視されるようになってきています。住環境の整備は、まさに予防に直結します。脳溢血というのは死亡原因の上位に挙げられますが、例えば、コージェネとともにセントラルヒーティングの導入が進み、加えて二重窓にすることで、発症を抑えられるというように、かなりコントロール可能になる。
元気な高齢者が増えるのならば、全く問題はありません。75歳までみんなが元気に働いて税金を納めていたら、高齢社会をあまり心配する必要はないですよね。ですから、エネルギーを適切に使えて、快適で健康的な生活ができる住環境を、高齢者向けだけでなく若い時から提供していくことが大切です。医療費も抑えられますし、日本人全体の生活の質を向上することに大きく寄与するでしょう。そうした環境の実現には、やはりエネルギーが非常に大きく関与してくると思います。
山下: ICTも、予防医療では大きな役割を担うことになるでしょう。日常生活の管理や、過去の病歴の活用などでもそうです。また、慎重に取り扱わなければなりませんが、ゲノム情報などの管理もそうです。医療とICTは切り離せない関係だといってよいと思います。