
山口 光恒(やまぐち みつつね) 氏
公益財団法人地球環境産業技術研究機構 参与
1962年東京海上火災保険入社。96年慶応義塾大学経済学部教授、2002年から2009年まで放送大学大学院客員教授兼務、05年帝京大学経済学部教授、06年東京大学先端科学技術研究センター客員教授、同特任教授を経て、12年に公益財団法人地球環境産業技術研究機構参与に就任(現在に至る)。13年から15年まで東京大学教養学部付属教養教育高度化機構環境エネルギー科学特別部門客員教授を兼任。15年から一般財団法人日本エネルギー経済研究所特別客員研究員を務める。
世界の温室効果ガス排出量は京都議定書が採択された1997年以降も増え続けています。温暖化が関係すると考えられる異常気象は今も日本を含む世界中で頻発しており、我々はいかに温暖化問題に取り組むべきかが問われています。
2015年12月に採択された「パリ協定」は工業化以降の気温上昇を「2度未満」、できれば「1.5度未満」に抑えること、今世紀中に温室効果ガス排出量を実質ゼロまで下げることを目標としています。最近では、1.5度という目標が主流になってきているようです。
しかし、現実を見れば、それは容易なことではありません。パリ協定では各国が目標を誓約(プレッジ)するボトムアップ方式を採用していますが、2度目標とプレッジとの間には大きなギャップがあります。現在の各国のプレッジをどう足しても2度未満、ましてや1.5度未満に抑えることはできないのです。各国の今の誓約のままなら、今世紀末の気温は3度上昇してしまいます。
では、どうすれば2度目標を達成できるのでしょうか。2度目標を65%の確率で達成するというシナリオによれば、90年ごろに温室効果ガス排出量が実質ゼロになり、その後にはマイナスになっていなくてはなりません。そこで必要なのがBECCS(Bio-energy with Carbon Capture and Storage)。バイオマスエネルギーとCCS(CO2回収・貯留)を結びつけた技術です。
バイオマスエネルギーの原料となる木や草は育つ時にCO2を吸収します。エネルギーを利用する際に燃焼させるとCO2を排出しますが、ライフサイクル全体での排出量は実質ゼロと考えられます。バイオマスエネルギーを燃焼した際のCO2を回収し、地中に貯留すれば、その分がマイナスになるというのがBECCSの考え方です。