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[コージェネ財団特別講演会2022レビュー2]基調講演 混迷する国際エネルギー情勢と日本への影響 多様なエネルギー・技術を組み合わせ脱炭素実現を

[コージェネ財団特別講演会2022レビュー2]基調講演 混迷する国際エネルギー情勢と日本への影響 多様なエネルギー・技術を組み合わせ脱炭素実現を
2022年9月14日(水)公開
取材・構成・文/小林佳代 写真/加藤 康
 

コージェネ財団の「特別講演会2022」では、日本エネルギー経済研究所常務理事の山下ゆかり氏が登壇し基調講演を行った。テーマは「混迷する国際エネルギー情勢と日本への影響」。ウクライナ危機を発端とする化石燃料価格の高騰や各国で起きた電力需給逼迫の状況など、厳しさを増す現在のエネルギー情勢を概観した。こうした足元の状況を踏まえた上で、日本が脱炭素社会実現に向けたグランドデザインとして策定中の「クリーンエネルギー戦略」の概要も紹介した。

安定供給・安全保障が喫緊の最重要課題に

山下ゆかり(やました・ゆかり)氏
山下ゆかり(やました・ゆかり)氏
日本エネルギー経済研究所常務理事
 
Profile
国際基督教大学卒業、筑波大学大学院経営政策科学研究科修了。1985年日本エネルギー経済研究所計量分析センター入所。2020年6月より現職。エネルギー需給見通し、分析等に従事。温暖化対策、省エネルギー政策立案等を担当、東日本大震災直後の節電対策や省エネルギー政策の策定に関与する。2020年国際エネルギー経済学会会長、2021年Executive Vice Presidentを経て、2022年は同学会Past President。

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)は今年4月に第3作業部会の「第6次評価報告書」を発表しました。

 報告書は第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)で提出された国別排出削減目標(NDC)では、1.5℃目標の達成は困難であることを指摘しています。政治経済などに様々な制約がある中、各国の政策がバラバラに策定され、整合性のとれた統合的な政策群としてデザインされていないことを課題に挙げています。

 この課題は当然、日本にも当てはまります。「2050年カーボンニュートラル」の達成に向け、整合性・統一性ある政策・戦略にまとめ直すことが求められています。

 足元の国際エネルギー情勢は混迷の色を濃くしています。2021年には各国で導入が進んだ再生可能エネルギーが天候不順などから不調となり、悪天候による需要の急増や代替電力の不足など様々な要因が重なったことで、北米、北東アジア、欧州で電力そのものの供給が不足する事態が起きました。

 今年2月に起きたロシアによるウクライナ侵攻では欧州へのガス供給不安が顕在化します。その影響を受け、原油や天然ガス・液化天然ガス(LNG)など化石燃料の価格は高騰しました。2度の石油危機の頃と同様に化石燃料価格は高止まりしています。

 今年6月にはオーストラリアのシドニーで停電が発生しました。ガス価格の高騰に加え、石炭火力の停止、電力卸価格が上限の300豪ドルを超えたことなどが理由です。今もオーストラリア全土で供給不安は続いています。日本や欧州西部は猛暑の影響で電力需給が逼迫しています。エネルギーの安定供給や安全保障の確保が、各国の喫緊の最重要課題として浮上しています。

 欧州のエネルギー事情を見ると、原油、天然ガス、石炭ともロシアが最大の輸出国です。特にドイツの依存度は群を抜いて高く、イタリア、フランスも多くをロシアに依存しています。

 クリーン化を念頭に、各国が石炭火力からガス火力へのシフトを進めていた中でガスの供給不安や価格高騰が起き、短期的には石炭への回帰も起きています。クリーンで安定的なベースロード電源として、原子力の価値も再認識されています。持続可能な経済活動を促進するため欧州連合(EU)が策定する「EUタクソノミー」においても、原子力はグリーン投資の対象と位置づけられました。

 EUは5月に「RE Power EU」計画を策定し、エネルギー安全保障の強化に動いています。一次エネルギー供給では天然ガスを大きく減らし、石炭と石油を増やす計画です。最終エネルギー消費では民生部門のガス利用を電化やヒートポンプ、バイオメタンへ代替しようとしています。再エネ電力の導入も追加し、グリーン水素の製造に使う計画を立てています。

 5月に開かれた先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境大臣会合では、ロシア依存から脱するため、LNGへの投資継続が必要との認識で一致しました。共同声明では水素・アンモニアや原子力発電が果たす役割が明記されました。6月のG7サミットの共同声明では、最初に気候変動問題を取り上げ、「Climate Club」の今年中の設立に言及していますが、ロシア産原油の取引価格上限設定案にも触れ、今後、制度設計を具体化していくこととしています。エネルギーの安定供給、エネルギー安全保障への配慮が優先された形です。

 国内では今年3月22日、東京電力と東北電力管内で電力需給が逼迫する事態が起きました。その1週間ほど前に福島県沖で発生した地震の影響で火力発電所が停止し、東北電力から東京電力管内への送電量が本来の半分ほどにとどまったことが大きな要因です。

 構造的な要因もあります。再エネ電力の導入拡大に伴い、2016年度以降200万~400万kWの火力発電所が休廃止され、供給力に余裕がなくなっていたのです。そこに真冬並の寒さが襲いました。この時は電力需給逼迫警報が発令され節電の取り組みが進んだことで停電は回避できました。

 福島県沖地震の影響で休止していた火力発電はその後、復旧の見通しがたち、マイナスだった今年の冬の東電管内の予備率は1%後半まで回復しています。しかし依然として安定供給に必要な予備率3%は確保できていません。

 政府内では、需給バランスを調整するデマンドレスポンス(DR)のサービス取り組み事例を共有し、効果的に活用する検討が進んでいます。DRは5月に成立した「改正省エネ法」でも活用促進が明記されています。再エネの余剰電力が発生している時間帯の上げDR、供給力が減少する時間帯の下げDRを評価する仕組みを導入しようとしています。より構造的な対応策として、広域連系の増強も検討が進んでいます。

■ クリーンエネルギー戦略の位置づけ

クリーンエネルギー戦略の位置づけ

 
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