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[コージェネ財団 特別講演会2017レビュー2]鼎談 エネルギーシステム改革と日本経済(前編)

[コージェネ財団 特別講演会2017レビュー2]鼎談 エネルギーシステム改革と日本経済(前編)
2017年8月23日(水)公開
取材・構成・文/中村実里 写真/加藤康
 

7月20日に開催されたコージェネ財団主催の特別講演会において、「エネルギーシステム改革と日本経済」と題した鼎談が行われた。昨年始まった電力、今春始まったガスの小売り全面自由化に関する制度設計に精通する電力・ガス取引監視等委員会の八田達夫委員長、経済政策について豊富な知見を有する日本総合研究所の翁百合副理事長を迎え、コージェネ財団の柏木孝夫理事長とともに、エネルギーシステム改革がもたらす経済効果や、強靭化、国際戦略などの政策課題に対する解決策について議論を交わした。

自由化で電力とガスの一体化と電源最適化を推進

柏木孝夫氏(以下敬称略):これからのエネルギーシステムを考える上では、環境、自由化、そして強靭化という三つの視点が重要になります。強靭化というのは経済や社会のリスクマネジメントとも言えます。また、エネルギーシステムは多様化していきますが、エネルギー産業そのものの国内市場の規模がそれほど大きくなることはなく、バリューチェーンによって他の産業のビジネスモデルを取り込みながら経済発展していくことになるのだろうと、私は推察しています。さらに国際展開を図ることが、日本のエネルギー産業の発展には必要でしょう。この鼎談では、これら環境、自由化、強靭化、国際展開の四つの論点で議論を進めていきたいと思います。

 まずは、経済産業省の電力・ガス取引監視等委員会の八田委員長に、自由化に関してお話しいただきます。

八田 達夫(はった たつお) 氏
八田 達夫(はった たつお) 氏
電力・ガス取引監視等委員会 委員長
大阪大学 名誉教授
1966年、国際基督教大学卒業。73年、米ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程修了。米オハイオ州立大学助教授、米ジョンズ・ホプキンス大学教授、大阪大学教授、東京大学教授、政策研究大学院大学学長などを経て、現在、大阪大学名誉教授、政策研究大学院大学名誉教授、経済同友会政策分析センター所長、アジア成長研究所長など。2015年より電力取引監視等委員会委員長、16年より改組により電力・ガス取引監視等委員会委員長。『電力システム改革をどう進めるか』『「エイジノミクス」で日本は蘇る―高齢社会の成長戦略』『2025年 日本の農業ビジネス』など著書多数。

八田達夫氏(以下敬称略):初めに、電力自由化とガス自由化は、別々のものではなく、実は一体のものだというお話をしたいと思います。電力というのは、もともと発送電一貫体制で行われてきました。その理由は二つあります。一つめは、安定供給のために、常に需給を一致させる同時同量を達成することが求められました。二つめは、送電線はもちろん、大規模な発電所が建設されて、送電と発電ともに規模の経済性があったからです。

 けれども、コンピューターが出てきたことで、いろいろな分散化も可能になりました。また1970年代には、ガスタービンを用いた発電機の性能が非常に上がり、小規模な施設で低コストに電力を生産できるようになります。そして、このガスタービンの発達が大きな要因となって、1990年代から電力自由化が始まりました。

 一方で実は、電力会社がガスのLNG(液化天然ガス)タンクを建設し、ガスの潜在的な供給先として大きな役割を占めるようになります。ガスタービン発電の発達は、従来のガス会社に対向する電力会社という非常に大きな競争相手をガス市場に生むことになりました。これが、その後のガス自由化の素地を作ったとも言えます。

  次に自由化に伴う送電料金の合理化がコージェネを発展させることを指摘したいと思います。例えば、英国には、発電側の送電料金を設備容量ベースで課すとともに、需要地近隣の電源では料金を軽減するなどして、送電コストの最適化を図るように発電所の立地インセンティブを与える仕組みがあります。これは、コージェネにとって非常に都合のよい仕組みです。

  日本でも、これに近づく制度を構築しようとしているところです。コージェネという非常に合理的な需要地近接電源の発展を阻害していた送電料金制度が改善されていくと考えます。コージェネに関わる方々は、注意深く見守っていかれるとよいでしょう。

柏木:自由化というのは、電力とガスの一体化であると、極めて大切なポイントをおっしゃっていただきました。長期的に見ると、ガス&パワーモデルになっていくということではないかと、私は思っています。従来の電力料金は、発電もネットワークもすべて総括原価方式でやってきました。それを、送配電ネットワークだけは総括原価方式を残して、他は市場原理を採用するようにします。ということは、大規模電源で効率が低いもの、稼働率の低いものは脱落していって、その代わりに分散型電源が入っていく可能性があるはずです。

 さらに、需要地密着型の電源や、あるいは大規模電源の近傍に電力需要をつくっていきます。ネットワーク部門は総括原価方式ですが、経済合理性を考えていかないと電力システム全体としてうまくいきません。八田さんのお話は、そのような示唆と考えてよろしいでしょうか。

八田:実際に送電線の増設が必要なく、送電ロスが全く発生しないところから送電料金を徴収するのは、おかしな話です。この送電料金の制度を改善すれば、電源のある地方に工場がたくさんできたり、大都市でコージェネなどの導入が増えたり、電源の需要地建設が進む可能性があります。

柏木:本来、一次エネルギーから二次エネルギー、二次エネルギーから熱エネルギーと、最終的に三つを一緒にして合理的なシナジー効果を出すような法体系にしていくことが必要ですが、日本ではそれぞれまだ独立しています。このあたりは、監視等委員会から提言できないのでしょうか。

八田:電力・ガス取引監視等委員会の「等」には、ルールをつくるという側面もあります。客観的に競争を促進するための制度改革を実行する役割を担っています。ただし、例えばCO2対策をするためにどのような規制をするべきか、といったところは担っていません。

 経済産業大臣に建議するかたちになりますが、経済産業大臣はそれを拒否することもできます。実際に、これまでいろいろな建議をしてきました。

 
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経済産業省の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会が取りまとめた「第5次エネルギー基本計画(案)」が公開され、当財団としてパブリックコメントを提出いたしました。その結果および「第5次エネルギー基本計画におけるコージェネの位置づけ」について、資料を取りまとめております。

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