柏木孝夫氏(以下敬称略): 東日本大震災によって、さまざまなサプライチェーンが破綻しました。特にエネルギーシステムについては、戦後の日本の発展から40年余りたってインフラも老朽化しつつありますから、これを機にインフラの再生を図ることが望ましい。昔のような箱もの行政とか道路を建設するなどの公共事業にとどまらず、成長戦略まで含めた、今後を見据えた国土の強靭化や、国力の増強について考える必要があります。
この成長戦略を促すためには、規制改革が一つのキーワードになると思いますが、秋山さんの専門分野である高齢社会においては、規制改革の実施によって、どのような成長戦略を描けるでしょうか。

秋山 弘子(あきやま ひろこ)氏
東京大学 高齢社会総合研究機構 特任教授
イリノイ大学でPh.D(心理学)取得、米国の国立老化研究機構(National Institute on Aging) フェロー、ミシガン大学社会科学総合研究所研究教授、東京大学大学院人文社会系研究科教授(社会心理学)などを経て、2006年より現職。日本学術会議会員。専門はジェロントロジー(老年学)。高齢者の心身の健康や経済、人間関係の加齢に伴う変化を20年にわたる全国高齢者調査で追跡研究。近年は超高齢社会のニーズに対応するまちづくりにも取り組むなど超高齢社会におけるよりよい生のあり方を追求している。
秋山弘子氏(以下敬称略): 高齢社会の課題を解決する中で、成長戦略を考えていけばよいと考えます。日本は経済成長してから人口の高齢化を迎えるというように、一段ずつ課題に直面してきました。しかし、膨大な人口を抱える中国やインド、インドネシアなどアジアでは、経済成長と同時に人口の高齢化が進んでいます。そうなると、経済政策を優先せざるを得ませんから、人口の高齢化という社会政策まで手を打てません。ですから、アジアの国々は、高齢社会のフロントランナーである日本が、どんな手を打つのかを注視しています。失敗したことはまねしないで、うまくいったことは取り入れようという戦略です。
私たちにとって、すごく大きな市場が期待できるという事でもあります。それを前提として、日本だけでなくアジア各国でも使えるようなシステムを開発していけたらよいと考えます。そのためにも規制改革は非常に重要ですね。
柏木: 何を規制改革したらよいでしょうか。
秋山: 例えば、75歳以上の人が増えると、移動手段が大きな問題になってきます。特に地方では公共の交通機関がないので、車が運転できなくなると、買い物にも行けなくなってしまいます。高齢化に対応した新たな移動手段をつくる必要があります。しかし現状では、技術的には実現できるものも、実際の社会の仕組みの中では、いろいろな規制にぶつかって利用できないということが少なからずあります。