土方教久氏(以下敬称略):日立製作所の古賀さんは顧客企業に省エネルギーソリューションを提供する立場です。その中でコージェネをどのように活用しているか、今の状況を教えてください。

古賀 裕司(こが ゆうじ) 氏
日立製作所 産業・流通ビジネスユニット 産業ソリューション事業部
産業ユーティリティソリューション本部 本部長
古賀裕司氏(以下敬称略):企業にとってのエネルギーは、従来のようにサプライサイドからデマンドサイドに一方通行で流れてくるというシステムから、双方向に融通し合うという新しいシステムに変わりつつあります。このようにエネルギーを取り巻く環境が変化する中では、企業自身が事業戦略を支えるエネルギー戦略をどう構築し直すかが問われます。我々は顧客企業にそういう働きかけをしながら、省エネソリューションを提案しています。
日立はこれまでに国内212件、海外を含めると228件の省エネソリューションを提供してきました。内訳は産業分野が約7割、業務分野が約3割。コージェネを導入したソリューションは全体の4分の1です。ある化学メーカーの工場では、コージェネを導入し、余剰蒸気を使って発電することでCO2排出量を5%削減する取り組みを進めています。
こうした取り組みにおいて大事なのは、データで裏付けし、納得いただける処方箋を示すこと。日立はエネルギーマネジメントシステム(EMS)「EMilia(エミリア)」に蓄積した電力使用データをもとに需要を予測し、コージェネや再生可能エネルギーを組み合わせながら、コストメリットがあり環境性、省エネ性の高い最適なエネルギー戦略を描き提案しています。高度にコージェネを活用し、さらなる付加価値を提供することを目指しています。
土方: コージェネは排熱を利用できるためエネルギー効率が高いことが長所です。ただし単独企業では熱を使い切れず、メリットを生かし切れないことも多々あります。企業の枠を超えて手を結ぶことでより効率を高められますが、その点はどうお考えでしょうか。
古賀: コージェネを最大限有効に活用しようと思えば、当然、共同利用は必要な取り組みです。コージェネを導入したけれど熱があまってしまうという時、隣で熱を使う企業に融通すれば全体の事業性が良くなりますから。こうした連携による面的利用は大いにポテンシャルがあると考えており、私たちも興味を持っています。
片山弘士氏(以下敬称略):今のお話に当てはまる事例があります。日産自動車が新規にコージェネを導入したところ、自社では熱を使い切れなかったことから、道路を挟んで隣接するJオイルミルズへの熱導管を敷設し、熱を供給したというものです。
コージェネは熱をいかに使いこなすかがポイント。土方さんがおっしゃる通り、単独の需要家だけで使い切るのは難しく、地域で使うとか、隣の需要家に融通するなどの連携をとることが必要です。今後は単純に熱導管を配管するだけではなく、年間を通した需要パターンを分析し稼働率を高めるといった取り組みも重要なのではないかと思います。