ロンドンの取り組みを受けて、最後に、低炭素型の都市づくりをわが国で実現する際に参考にすべき点として、2つのことを強調しておきたい。
まず、ロンドンは、分散型エネルギーネットワークの構築に高いプライオリティを与える政策を打ち出し、オリンピック・パークにおいても、すべての開発が熱導管に接続することが条件となっていた。これによって、行政にとってのCO2排出量削減目標の実現ができ、「熱導管接続義務」は熱供給事業を担う民間企業のリスク回避を保証するものとなった。そして、行政は1円の投資もなく、官民連携手法を用いて行政目標を実現させていた。
東京は、ロンドンのような面的な再開発事業はないため、オリンピックを契機として、全体的な低炭素型都市づくりの仕組みを進める必要があろう。まず、CO2排出量削減のプライオリティの不透明さがある。CO2排出量削減が分野を超えて必要であれば、開発事業においても強い指導で事業化を進めることができるはずだ。合意形成のしやすさからすれば、市場と協力のできる、直下型大地震などの都市型災害への対応から、より積極的に分散型エネルギーの導入を行っていくことも考えられる。環境への対応だけではなく、日本の経済成長のために、積極的な導入が求められる。
次に、それが非常時だけではなく、平常時でも市場に受け入れられる価格での提供を考える必要がある。その実現はエネルギーセクターの努力だけでは難しいため、公共側の支援が大事であろう。ロンドンで見られた接続義務も一つのやり方であるし、地価の高い都市地域のエネルギー・センターや熱導管埋設費用をより積極的に支援することが考えられる。
たとえば、エネルギー・センター用地のための公開空地の活用・集約化や公園などの公共用地の活用など、できるだけエネルギー価格を安価にし、市場に受け入れられやすい状況を作ることが考えられる。これは、災害に強い都心部の形成につながり、結果的に選ばれる都市になることで、経済成長をもたらすものと思われる。
東京オリンピックは、もうすぐである。ロンドンから8年、東京が先進的な環境首都として世界にアピールするには、イベントとしての都市づくりを超えた官民連携の形を考えることが求められる。