スペシャルリポート

エネルギーシステム改革と日本経済(前編)

社会的課題を解決する成長戦略の鍵は技術革新

柏木:分かりました。電力やガス取引の監視によって、競争が公平に促進できるようにするためには、制度の改革、あるいは新たな制度の提案まで行っていく。非常に責務が重いですね。

 続いて、翁さんには、「未来投資戦略2017」「Society5.0」といった国の重要な経済政策について、うかがいたいと思います。

翁 百合(おきな ゆり) 氏
翁 百合(おきな ゆり) 氏
日本総合研究所 副理事長
NIRA総合研究開発機構 理事
1982年、慶應義塾大学経済学部卒。84年、慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程修了。同年、日本銀行入行。92年、日本総合研究所調査部副主任研究員となり、主席研究員、理事を経て、2014年より副理事長。この間、03年5月~07年7月、株式会社産業再生機構取締役(非常勤)を兼任。14年より慶應義塾大学特別招聘教授を兼任、現在に至る。17年、未来投資会議、構造改革徹底推進会合で医療介護分野のとりまとめを行う。京都大学博士(経済学)。

翁百合氏(以下敬称略):6月に新たな成長戦略が発表されました。今までは、「日本再興戦略」と言っていましたが、今回から「未来投資戦略」と変わりました。この戦略づくりを担う「未来投資会議」が発足し、その中で議論の末に、「未来投資戦略2017」がまとめられたわけです。

 未来投資戦略2017における非常に重要な概念が、「Society5.0」というものです。超スマート社会と日本語では呼ばれていますが、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く第5番目の新しい社会を意味します。

 インターネットやビッグデータの活用など、さまざまな技術革新による先進技術を生かしていく社会が、我が国が目指すSociety5.0です。

 日本経済は今後ますます超高齢化していき、すでに各産業で人手不足が顕在化しています。この人口問題という最大の問題に直面すると同時に、エネルギーや環境問題といったさまざまな社会的課題を抱えているわけです。それらを解決するためには、やはり技術革新というのが一つの大きな鍵になります。今回の成長戦略における大きなポイントの一つです。

 エネルギーに関しては、先ほど八田先生もおっしゃったとおり、エネルギーシステム改革は安定供給を確保し、コストも低減していくのと同時に、新しいマーケットを生み出し、事業機会をつくっていくことが極めて重要です。新しい成長戦略では、まさにそうしたことを意図しています。技術革新によって、例えばインターネットやビッグデータできめ細かいエネルギー管理などが可能な世界になっていきます。Society5.0にふさわしい新しいエネルギーシステムを考えていく必要があり、それが重要な課題の一つとなります。

柏木 孝夫(かしわぎ たかお) 氏
柏木 孝夫(かしわぎ たかお) 氏
コージェネ財団 理事長
東京工業大学 特命教授/名誉教授
1970年、東京工業大学工学部生産機械工学科卒。79年、博士号取得。東京工業大学工学部助教授、東京農工大学工学部教授、東京農工大学大学院教授などを歴任後、2007年より東京工業大学ソリューション研究機構教授、12年より特命教授/名誉教授。11年よりコージェネ財団理事長。経産省の総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会長などを歴任し長年、国のエネルギー政策づくりに深くかかわる。現在、同調査会の省エネルギー・新エネルギー分科会長、基本政策分科会委員などを務める。主な著書に『スマート革命』『エネルギー革命』『コージェネ革命』など。

柏木:エネルギーシステム自体の制御においても、需要サイドで比較的簡単にスマホなどを使って、リアルタイムで電力を売買できたりするなどの可能性もあります。センサー技術とビッグデータ、そしてAI(人工知能)の3点セットが、今後エネルギーに密接に関わってくるでしょう。投資拡大という観点からすると、こうした動きが、日本経済にとってプラスに働くと考えてよろしいでしょうか。

翁:もちろん、そうだと思います。そうした技術を活用したビジネスによって、企業は高付加価値のサービスを提供できます。同時に様々な分野で新しい事業機会が創出されることが、期待されていると思います。

柏木:例えば、電力のデータを極めてニュートラルな第三者がきちんとチェックすることで、人の生活自体をよい意味で管理できるようになって、安心して暮らせるようになるのではないかと想像します。お年寄りの見守りなど、エネルギーが介護や医療とリンクする可能性もあるのではないでしょうか。

翁:まだエネルギーと介護や医療との間は結びついていませんが、これからの産業はすべてつながっていく社会になるでしょう。個人を取り巻く生活においても、消費などの経済活動と決済がリンクするなど、IoTによって、どのような企業もビジネスモデルが大きく変わりつつあります。エネルギーについても全く無関係というわけではなく、スマートコミュニティの中では、人々がスマホを使って日常的にいろいろなものを管理する生活が、すぐそこまで来ていて、もうすでに始まっているものもあります。

柏木:スマートコミュニティというお話がありましたが、昨今ではいろいろな企業でスマートコミュニティ事業部といった部署が設置されるようになりました。電力の自由化は、ビジネスにも自由化をもたらしたように思います。スマートコミュニティにコージェネなどの電源を置いて、エネルギー管理ができるようになると、デマンドレスポンスやネガワットなどのビジネスモデルが生まれます。日本総研でも、スマートコミュニティを一つの大きなビジネスと捉えられているのでしょうか。

翁:すでにそうした取り組みを進めています。自由化もそうですが、省エネやCO2削減などが新たな民間投資をもたらす、大きなインセンティブになってきていると思います。

 
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