電力供給におけるエネルギーレジリエンスは、系統運用者のメリットと、需要家のメリットがあります。系統運用者のメリットとされる系統安定性による社会インフラへの貢献は主に、DR、FRT、逆潮流による系統電圧上昇の抑制、自動変動電源の変動補完の四つです。
DRには、二つの方法があります。一つは、節電してほしい時、つまり需要を下げてほしい時に、価格を高くして供給するパターン。もう一つは、インセンティブの提供によるもので、ピークタイムリベートといわれる方法です。要は、需要を減らした分に対し、ご褒美として報酬を支払います。地域実証などを通じた所感では、ピークタイムリベートの方が、価格で誘導されるよりもモチベーションが上がり、受け入れられやすいようです。
DRの節電量は、ほんのわずかなのではないかと言う方がいますが、発電事業者の市場支配力が強い場合、市場価格の上昇を抑制し、競争や技術を進展させるという意味では大切な役割を果たすと考えます。
こうした通信を活用した自動制御の実現に向けて、私たち早稲田大学では経済産業省の実証事業の一つとして「新宿実証センター」を開設しました。インターネットなどの通信網を経由してDR信号を送受信するためのサーバー群を構築し、電力会社の運用するDR信号と連携して、異なるメーカーのサーバーやHEMS(住宅エネルギー管理システム)、各種機器などのさまざまな組み合わせによって相互接続性を確認しながら、日本版ADR(自動需要応答)の標準化手法について検証していく計画です。なお、横浜市や豊田市、けいはんな学研都市、北九州市といった実証地域とも連携を図っています。

「レジリエントなシステムは、東日本大震災を経験した日本だからこそ構築できる」と強調する林氏
電気と熱を協調させながら面的に利用できるようにしたエネルギーの循環社会こそが、今後のシステム改革のあるべき姿であり、そこにはICTが不可欠です。特にエネルギーマネジメントで実現するスマートシティでは、復元可能(レジリエント化)、持続可能(サステナブル化)、自律可能(オートノマス化)の3要件が求められ、産官学の連携が大切になります。
スマートシティの実現によって、HEMSやBEMS(ビルエネルギー管理システム)、MEMS(マンションエネルギー管理システム)をDRのアグリゲーターと連携させながら、環境的価値や経済的価値、社会的価値、情報価値を創出していくことで、地域の価値を高め、その街の住民にとってもメリットが生まれる状況が望まれます。日本が本当にスマートになるかどうかは、この点が最も重要です。特に外乱リスクを最小にして現状復帰を行うレジリエントなシステムは、東日本大震災を経験した日本だからこそ構築できるのだと考えます。