スペシャルリポート

五輪見据え低炭素でBCP性の高い街づくりを
官民連携、規制緩和、インセンティブなどがカギに

業際的にスクラムを組みソリューションを生み出す

柏木:確かに安心・安全という観点から言えば、スマート化した分散型エネルギーが入った「スマート自治体」を構築することは非常に重要です。公から始めて民間を巻き込んでいくというのは良い方法だと思います。海外ではどのような状況でしょうか。

村木:やはり民間だけでやれることには限界があります。行政というパートナーをいかに事業プログラムの中に上手に組み込むかがプロジェクトの成否を左右します。先ほど英国の事例をお話ししましたが、英国の都市計画においてエネルギーの重要性が増すようになったのは、温暖化問題が深刻化し、CO2排出量の削減が自治体の中で優先順位の高い政策に位置づけられるようになってからです。どの国も行政は縦割りですから、トップダウンで施策を進め、官民連携を横断的に適切に機能させることが重要です。

柏木孝夫(かしわぎ たかお)氏
柏木孝夫(かしわぎ たかお)氏
コージェネレーション・エネルギー高度利用センター(ACEJ)理事長、東京工業大学特命教授、東京都市大学教授。専門はエネルギー・環境システム。1970年東京工業大学工学部卒、79年博士号取得。80~81年米国商務省NBS招聘研究員、88年東京農工大学工学部教授、2007年東京工業大学教授。11年よりACEJ理事長、12年より東京工業大学特命教授、13年より東京都市大学教授も兼務。現在、経済産業省総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会長などを務める。主な著書に「スマート革命」「エネルギー革命」など

柏木:2020年開催の東京五輪はスマコミを含めた魅力ある街づくりを実現する絶好のチャンスです。今からスマコミ、コージェネ普及のロードマップを描く必要があります。どのような課題があるでしょうか。

菱沼:一つはガス価格の低廉化です。国を挙げて共同調達するとか、米国のシェールガスを活用する方法も探っていかなくてはなりません。もう一つがコージェネシステムのコストダウンです。昨今は建設コストの向上にも直面しています。メーカーと一緒に雑巾を絞るようにコスト削減に懸命に取り組んできましたが、さらなる努力が必要だと思います。

 2020年代に向けては、既に、2019年竣工予定の「日本橋スマートシティ」のような魅力的なプロジェクトも進行しつつあります。スマコミを実現する意義を官民、また個人が再確認し、取り組みが腰砕けにならないようにすることが必要でしょう。

稲田:コージェネの普及の形として、大規模集中型だけでなく、マイクロコージェネのような小規模なものを超分散型で広げる方法も追求すべきだと考えています。省エネ・コスト削減・CO2削減サービスのESCOのようなエネルギーサービスとして提供していく方法も検討したいですね。

長谷川:スマコミにしろコージェネにしろ、新たな付加価値がなければ、導入しようというインセンティブが生まれません。私自身はより普及させるためにはボーナスが必要だと考えています。容積率の大幅な緩和など、規制改革は必須です。

村木:東京五輪まではあと6年。ここからはスピーディーにモデルとなるプロジェクトを進める必要があります。ロンドンを超える街づくりを進めようというチャレンジ精神が求められます。エネルギーシステムは都市の根幹です。多くのプロジェクトが建物をつくった後にエネルギーシステムのことを考えがちですが、そうではなく、最初から一緒に考えることが重要です。ビルの容積率、用途などに見合う適切なエネルギーシステムを近接した場所にパッケージ化すれば、ゼロカーボンな街づくりに近付きます。

官民連携、規制緩和、コストダウンなど、スマコミやコージェネの将来に向けた課題について、パネリストが議論を交わした

官民連携、規制緩和、コストダウンなど、スマコミやコージェネの将来に向けた課題について、パネリストが議論を交わした
 

柏木:スマコミ、コージェネは日本の発展を担うと言っても過言ではありません。大胆な規制緩和やインセンティブ、業界の枠を超えた業際的なスクラムによってソリューションを生み出すことが求められます。きょうは大変貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

 
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