柏木: エネルギーの分野では、規制改革によって自由化が進み、まさにそれが成長戦略につながります。新たに家庭部門でも電気を売ったり買ったりすることができるようになり、新しい事業者も出てくる。そして、その部分の情報を持っていれば、高齢者の見守りサービスもできるし、医療機関と直にデータをやり取りすることで役立つ場合もあるでしょう。こうした連携というのは重要になりますよね。
秋山: 重要だと思います。医療分野でも、いろいろな職種の人が連携することで、より効果的な在宅医療を実施していこうという取り組みが進められています。その中では、情報ネットワークが欠かせません。例えば遠隔医療も、別に離島向けに限った話ではなくて、東京の中でも求められています。その遠隔医療についても、さまざまな規制があってなかなか進まない状況にありますので、今の時代の社会的背景において必要とされる規制に、組み替えていくことが必要と考えます。
柏木: 山下さんにお聞きします。成長戦略を誰が主体的に進めていくかという点についてですが、補助金などで政府が大きく関与するよりも、民間の力で進めた方が持続可能になりませんか。

山下 徹(やました とおる)氏
NTTデータ 相談役
1971年東京工業大学工学部卒業、同年日本電信電話公社(現NTT)入社。88年のNTTデータ通信(現NTTデータ)分社以降、産業営業本部長、ビジネス開発事業本部長、常務取締役、代表取締役副社長を歴任し、2007年に代表取締役社長に就任。12年より取締役相談役、14年より現職。日本経団連「高度情報通信人材育成部会」の部会長や、当該部会の実行機能を引き継いだ「特定非営利活動法人高度情報通信人材育成支援センター(CeFIL)」の発起人となるなど、国際競争力の源泉となる高度なICT人材の育成に尽力してきた。
山下徹氏(以下敬称略): そうですね。ただ、全てが民間の力というわけにもいかないでしょう。例えば、日本が打ち上げた、米国のGPS(全地球測位システム)を優る精度で位置情報を特定できる準天頂衛星「みちびき」。これは民間だけでやろうとしても、実現できる体力がありませんよね。衛星はまず政府の仕組みで打ち上げた方がよいでしょう。
今のGPSだと数十メートル、あるいは数メートルの単位までしか位置を特定できませんが、準天頂衛星が4基ぐらい上がれば、数十センチメートル、さらには数センチメートルの単位で特定できるようになります。それだけ精度が上がれば、農業機械だとか、街の中でもさまざまな機械が自動運転できるようになるでしょうし、他の分野でも可能になるサービスがたくさんあります。
このサービスの部分は民間で行うべきですが、インフラの本当に基盤的な部分の整備については、政府が行わない限り実現できません。
米国の場合は、GPSも民間のサービスではなくて、軍事予算で整備してきたし、インターネットだってもともとは軍事目的で開発されました。米国は軍事予算によって社会インフラをどんどん開発していったわけです。
柏木: そうしたインフラ整備に関して、日本はかなり遅れをとってきたということでしょうか。
山下: 米国は、インターネットでもGPSでも軍事予算でつくったものを世界にオープンにしてきました。その恩恵を世界がこうむっているといっていい。米国はとても開放的な国なんだと思います。
これまで日本はキャッチアップでよかったので、米国のつくったインフラの上に乗っかってきましたが、今後はそうはいかないでしょう。スマートコミュニティを日本が世界に先駆けて実現しようということになったら、やはり自ら投資せざるを得ません。民間企業も投資せざるを得ないし、国も何らかの社会的な投資をする必要があると考えます。