ここからは、システム研究グループが3年前に行った、日本の2050年カーボンニュートラル実現のシナリオ分析を紹介します。
シナリオ分析には各種エネルギー・CO2削減技術のシステム的なコスト評価が可能なエネルギー・環境評価モデル「DNE21+(Dynamic New Earth 21+)」を使いました。世界全体の2100年までの将来の姿を踏まえた上で、コスト最小化という基準でカーボンニュートラルを達成し得るシナリオを示しています。
2050年、どのようにすれば日本はネットゼロを実現できるでしょうか。
当然、省エネは必須です。DXを活用した新しいタイプの省エネも含みます。原子力、再生可能エネルギーなどゼロエミッションエネルギーの使用も不可欠です。再エネを利用するには需給調整が重要なことから、蓄電池などを使って系統対策を行うことも必要となります。余剰再エネを使った水素の利用も求められます。
国内だけでなく、海外の再エネ利用も必要です。再エネからグリーン水素、アンモニア、合成燃料をつくり輸入する。あるいは、海外でCCSを行い、ブルー水素として輸入するといった形です。
化石燃料を使う場合は、できるだけCCS付きとします。CCSなしで残ってしまった化石燃料については、バイオマスエネルギーとCCSを組み合わせたBECCS(Bioenergy with carbon capture and storage)やDACとCCSを組み合わせたDACCS(Direct Air Capture with Carbon Storage)の活用で相殺します。植林や鉱物化などネガティブエミッション技術(NETs)を使った相殺も必要です。CCSは、国内での貯留では足りません。海外の貯留層も使うことになります。
部門別に見ると、発電部門はゼロ排出になりますが、民生部門、運輸部門、産業部門では依然、温室効果ガスの排出が残ります。それをDACCSによって相殺することでカーボンニュートラルを実現する形となっています。発電電力量で見ると、2050年時点でもガス火力発電や石炭火力発電の利用が残りますが、CCSで排出ゼロにすることが経済合理性のあるオプションとなります。最終エネルギー消費量を見ると、電化とともに水素や合成メタン、合成燃料の利用が進むシナリオになっています。
このように、カーボンニュートラル達成には、非常に高価なCO2削減技術も使われます。基準ケースでは、2050年のCO2限界削減費用は525米ドル/tCO2に達します。世界のCO2限界削減費用に比べると非常に高く、日本のカーボンニュートラル達成は極めて厳しい状況にあることがわかります。
シナリオ分析の結果をまとめると、省エネ、再エネ、原子力、CCS、水素/アンモニア、DACと、あらゆる技術を総動員しなければ、カーボンニュートラルは実現しません。原子力には立地の問題など社会的制約がありますが、最適解を求めようとすると、設定の上限に張り付きます。
電化と電力部門の脱炭素化は必須です。ただし、発電コストは倍増します。再エネを100%とすればさらにコストが増し、電化促進の弊害となります。非電力部門では、水素や合成燃料などの利用が求められます。電化と電力部門の脱炭素化を実現できても、温室効果ガスの排出量はゼロにはならないため、植林やDACCSなどネガティブエミッション技術を活用し、ネットゼロを目指すことになります。
DACはあらゆるシナリオで活用が想定されています。年間何億tという規模で行われることになるでしょう。日本だけでは、回収したCO2を貯留しきれないので、海外に持ち込み貯留することが必要になります。