柏木: 自治体の貢献度が非常に大きいプロジェクトであるということですね。このエリアには大学があって小売店がある。勉強ができて、飲食もできて、スマコミの核、ハブをつくった形になります。さらに、産学共同の研究室からベンチャーが生まれれば、住む人も増え、地域として大きな成長が見込めそうです。地方創生の1つの具体例となりそうですね。
東京ガスはスマコミに対してどんな取り組みをしているか、救仁郷さん、説明してもらえますか。

救仁郷 豊(くにごう ゆたか)氏
東京ガス代表取締役副社長執行役員
1977年、東京大学工学部合成化学科卒業。同年、東京ガス入社。99年、人事部人材開発グループマネージャー。2001年、原料部LNG室長。03年、原料部LNG契約グループマネージャー。04年、原料部長。07年、執行役員資源事業本部原料部長。08年、執行役員エネルギーソリューション本部産業エネルギー事業部長。10年、常務執行役員資源事業本部長。13年、取締役常務執行役員エネルギー生産本部長。2014年より代表取締役副社長兼副社長執行役員 社長補佐 エネルギーソリューション本部長、大口エネルギー事業部長に就任。
救仁郷豊氏(以下敬称略): エネルギー供給事業者である東京ガスは「スマートエネルギーネットワーク(スマエネ)」という切り口からスマコミに対するソリューションを提供しています。コージェネを中核に据え、太陽光、太陽熱、バイオマスなど分散型エネルギーを組み込んだ熱と電気のネットワークをつくり、ICT(情報通信技術)で最適制御する。拠点と拠点をつなぎ大きな輪にするというイメージでプロジェクトを進めています。
東京ガスが関わるスマエネは首都圏各地で年々、拡大しています。今、お話があった官民連携で言うならば、港区、愛育病院、三井不動産、三菱地所と取り組んでいるJR田町駅東口北地区のプロジェクトが最も良い事例でしょう。
より駅近な場所で事業を行いたい民と、防災機能を備えた公共施設を設置するために広い敷地を必要としていた官のニーズがマッチし、まず両者の間で土地を交換しました。そして、当初から「1990年比CO2(二酸化炭素)45%削減」「災害に強いまちづくり」という共通の目標を掲げ、公共施設、公園、医療、オフィスビル、ホテルなど多様な機能を組み合わせた面的開発を推進しました。コージェネを中心とし、太陽光・太陽熱などの再生可能エネルギーも最大限に有効活用することで、BCP(事業継続計画)、LCP(生活継続計画)にも貢献しています。
その他、豊洲埠頭地区、日本橋室町地区、浜松町1丁目地区などでもスマエネの計画を着々と進めています。
柏木: 東京から地方へと人の流れをつくるには、首都圏で培ったスマコミのノウハウを地方の中核都市に移植していかなくてはなりません。それは可能ですか。
救仁郷: よく「スマコミは東京だからできる」と言われることがありますが、そんなことは全くないと思います。田町のプロジェクトでは区役所、スポーツセンター、福祉施設、病院などの機能を集約しましたが、これらは東京だけでなく、どの地方にもあるものです。各地に分散した機能を集中させ、複合化し、コンパクトシティにしていくことが重要と思います。そのためには自治体の強力なリーダーシップをお願いしたいと思います。

柏木 孝夫(かしわぎ たかお)氏
コージェネ財団 理事長
東京工業大学 特命教授
専門はエネルギー・環境システム。1970年、東京工業大学工学部生産機械工学科卒。79年、博士号取得。80~81年、米国商務省NBS招聘研究員。東京工業大学工学部助教授、東京農工大学工学部教授、東京農工大学大学院教授などを歴任。2007年より東京工業大学ソリューション研究機構教授、12年より特命教授。11年よりコージェネ財団理事長。経産省の総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会長などを歴任し長年、国のエネルギー政策づくりに深くかかわる。現在、同調査会の省エネルギー・新エネルギー分科会長、基本政策分科会委員などを務める。総務省が14年11月に立ち上げた「自治体主導の地域エネルギーシステム整備研究会」の座長も務める。主な著書に「スマート革命」「エネルギー革命」など。
柏木: 自治体のリードが重要ということですが、伊藤さん、いかがですか。
伊藤: 総務省は今、各自治体に対し、「公共施設等総合管理計画」の提出を促しています。必要なもの、不要なものを分け、アセットマネジメントをしてもらおうという狙いです。その中で、現在はバラバラにある施設、機能を1カ所にまとめようという方針が、自治体から出てくれば、民間からの提案も出やすくなると思います。
柏木: なるほど。こうして官民が連携して地方にもスマコミができていけば、仕事が生まれ、人が集まり、まちが活性化し、東京一極集中から地方創生による国土強靱化が可能になるということですね。
救仁郷: ただ、施設をまとめていくには時間がかかります。10年ぐらいがメドになるのではないでしょうか。
伊藤: まちづくりに時間がかかるのは事実ですが、期限は迫っています。1つの区切りは2020年の東京オリンピック・パラリンピック。その閉会後に落ち込まないよう、普通なら10 年、15年とかかるまちづくりを早回しで進める必要があります。そうでなくては肝心の財政力、担税力がもたないと思います。
児玉: 東京と地方とでスピードも異なるかもしれません。東京は動き出そうと思えばいつでも動き出せる状態にありますが、今は地方創生が国の最重要課題になっていますから、コンパクトシティ化、用途複合化では、むしろ地方の方が早くプロジェクトが進む可能性もあると思います。機能を集中させれば、民間も投資しやすくなります。