柏木: 問題はどこがお金を出すかです。これまでスマコミは5年間、経済産業省など政府のプロジェクトとして大規模な実証実験を行ってきました。公的資金なしには、次のプロジェクトが進みにくいという面もあります。ですが、2016年に予定されている電力小売りの全面自由化でキャッシュの流れが出てくれば、民間が積極的に投資する可能性はあるでしょう。
電力市場は18兆円。自治体は1800あります。電力市場の1割でも分散型電源で取ることができれば、すべての自治体に10億円の産業ができることになります。もっとも、スマコミをつくることで、すべての自治体が魅力的で、人が集まるようになるというような簡単な話ではないでしょう。ゼネコンは全国各地でプロジェクトを進めていますが、そのあたりはどうお考えですか。

「現在はバラバラにある施設、機能を1カ所にまとめようという方針が、自治体から出てくれば、民間からの提案も出やすくなると思います」(伊藤氏)
児玉: おそらく、自治体も「選択されていく」ことになるのだと思います。
柏木: 自治体の「選択と集中」が始まると。
伊藤: 自治体は選ばれる地域になる努力が必要ですね。スマコミに関していえば、エナジー・ベネフィット(直接的便益)だけでなく、ノンエナジー・ベネフィット(間接的便益)も含め、プロジェクトのメリットを「見える化」し、関わる人たちの理解を得なくてはいけないと思います。
救仁郷: 実際のところ、光熱費を削減できるというエナジー・ベネフィットの評価だけでスマエネを広く展開するのは容易ではありません。田町の例でいうと、再開発事業が見込まれる複数街区を連結したスマエネを導入した場合、コストは年間7.5億円かかりますが、エナジー・ベネフィットだけでなく、CO2削減、BLCP(事業・生活継続計画)への貢献、地域経済活性化といったノンエナジー・ベネフィットもプラスすることで、コストの1.5倍程度の便益が生まれます。2つを合わせたコーベネフィットの創出と、ユーザーの理解を得ることが重要です。

「今は地方創生が国の最重要課題になっていますから、コンパクトシティ化、用途複合化では、むしろ地方の方が早くプロジェクトが進む可能性もあると思います」(児玉氏)
児玉: コーベネフィットを含め、選ばれるための評価軸をどのように作っていくかが問われると思います。それが1つのブランドとなり、社会的評価が確定していくと展開が進むと感じます。環境、BLCP、安全・安心など評価の軸をどれだけ定められるかがカギではないでしょうか。
柏木: 今、必要なのは民間投資を喚起する形での経済成長です。その点で、スマコミに関しては排熱パイプラインの敷設が重要だと考えています。例えば、ゴミ焼却施設と市庁舎を結ぶ排熱パイプラインを新しい形の公共事業として国が支援すれば、民間はコージェネを導入しやすくなります。民間の投資を呼び込み、良質なスマコミを創出することができ、良い循環が生まれるでしょう。
伊藤: エネルギーインフラの構築に対して公共がお金を出すべきだというのはもっともなご意見です。
熱はオンサイトのエネルギーで、目指すべきコンパクトプラスネットワークのまちづくりにもなじみやすい。とはいえ、道路のような公共事業と同じにはできません。
結局はモデルプロジェクト仕立てになると思います。ある個別プロジェクトを応援してお金を出す。そういうプロジェクトを積み重ねていく中で基準が出来上がり、他の自治体が続くという形になるのではないでしょうか。出資の格好で下支えする方法もあると思います。