スペシャルリポート

地球温暖化への取組みと課題について
リスクのバランス取り実現可能性踏まえた施策を

急激な温暖化対策は国際競争力の低下を招く

 世界は温暖化対策を間違いなく講じなくてはなりません。しかし、2度または1.5度という目標達成がいかに大変なことなのかを十分に理解した上で実現可能性を考慮し、対策を考えるべきだと私は思います。

 そもそも2度未満、1.5度未満という目標設定の意味を考え直すことが必要です。「国連気候変動枠組条約」は第2条で「危険でない濃度で安定化する」ことを究極目標と設定しています。「危険でない濃度」は科学では定められないため、現状は人類が経験したことのない気温上昇を危険と見なし、この水準を工業化以降の気温上昇2度未満と設定しました。ただ、濃度は人間がコントロール可能であるのに対し、気温は他の要素も関係するため、コントロール不可能です。


 温暖化対策であまりに急激な対策をとることは、国際競争力の低下にもつながります。イギリスは08年、50年までに温室効果ガス排出量を80%削減するという長期目標を立てましたが、昨年、そこから踏み込み、実質ゼロにすることを発表しました。サプライチェーンが世界中に広がる中、実務的に果たしてそれは可能なのか。産業界は多大な炭素税を払うことになります。競争力の低下が懸念されます。クリアしなくてはならない問題は多々あり、すぐに実行に移せるとは到底思えません。

 企業経営に温暖化対策を組み込む手法について、外国発で様々な取り組みが始まっています。世界の機関投資家が企業に対して環境戦略や温室効果ガス排出量削減対策などの開示を求める「CDP(Carbon Disclosure Project)」、企業が内部的炭素の価格付けを行う「ICP(Internal Carbon Pricing)」、工業化以降の気温上昇を2度未満または1.5度未満にするために、企業に科学的根拠に基づいた温室効果ガス削減目標の設定を求める「SBT(Science Based Targets)」、企業の気候関連のリスクと機会の開示を促す「TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」などです。

 これらの取り組みを行わないと、金融機関からの融資が受けられなかったり、株価が下がったりするという時代になっています。

 一部の日本企業はSBTの2度目標または1.5度目標の認証を受けています。ただ、具体的な中身をきちんと打ち出す必要があると思います。企業のESGへの取り組みを格付けする動きもありますが、評価は格付け機関によってバラバラ。格付け機関の信頼性にも疑問を感じます。企業はこうした格付けなどに左右されず、地道に温暖化対策に取り組むことが大事だと思います。

 
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