スペシャルリポート

地球温暖化への取組みと課題について
リスクのバランス取り実現可能性踏まえた施策を

温暖化対策はリスクとリスクのトレードオフ

 温暖化対策はリスクとリスクのトレードオフです。温暖化リスクをゼロにして他に何も影響が出ないならばどんどん進めればよいのですが、現実にそういうことはありません。温暖化対策を取ることで他にどういうリスクが生じるのかを総合的に考える必要があります。

 対策が不足すれば気温は上昇する。過度な対策を打てば経済に悪影響が生じる――。対策コストによって得られるベネフィットを見極めながら、トレードオフを少なくすることが、環境と経済の好循環を生むということだと思います。

 BECCSに力を注ごうとすれば種の多様性や食料生産を犠牲にしなくてはなりません。温室効果ガスを排出しない原子力発電は温暖化対策にはプラスかもしれませんが、万一の事故のリスクがあります。気候変動対策ばかりに資源を投入すれば、年金や医療など社会保障にお金が回らなくなるかもしれません。貧困や飢餓の問題を深刻化させる可能性もあります。何をやってもリスクゼロはあり得ません。全体を見ながら、相当複雑な方程式を解かなくてはならない。不確実性の高い状況の中で判断するという意思決定の問題といえます。

 他方CO2の排出がある限り、確実に気温は上がります。4~5度上がれば南極やグリーンランドの氷床が全部溶け出し、海面が6~7メートル上がると試算されています。これから、世界は将来に向けてパラダイムシフトを起こしていかなくてはなりません。

 今、世界は温暖化対策で気温抑制を目標に動いています。そうではなく排出ゼロを目標とすべきだと私は思います。長期的には大量のBECCSに依存することなく、なんとかCO2排出量を実質ゼロにすることを考えなくてはなりません。どうしても排出ゼロにできずに残った少量のCO2についてなら、BECCSも有効だと思います。

 CO2排出を実質ゼロとするには生活スタイルの転換も必要です。飛行機に乗るのをやめたり、肉を食べないといった選択をする人も出始めています。技術開発でイノベーションを起こし、推進していくことは不可欠です。パリ協定を遵守すると宣言している日本は、温暖化問題の本質を踏まえた上で、こうした内容を世界に訴えていくことが必要だと私は思います。

■ パリ協定と2℃目標大量の負の排出前提

図3 環境/社会/経済の枠組みにおける地域エネルギー計画のコベネフィット

出典:Jim Skea(IPCC/WG3共同議長)による東京での講演資料 2017.11.14
 

 
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