スペシャルリポート

ゼロエミッションに向けての内外の課題
イノベーションによるコスト低減が不可欠

コロナショックからの「グリーンリカバリー」

 その観点でIEAが昨年6月に発表したのが「サステナブルリカバリープラン」です。コロナによって各国政府は莫大な財政支出をしています。この財政支出をうまく使い、かつ世界全体で21~23年に温暖化分野で追加的に毎年1兆ドルの官民投資を行うことにより、経済回復と雇用創出、CO2排出のリバウンド抑制を実現しようという内容です。建物や機器の省エネ、太陽光発電の導入、原子力や水力など非化石電源の運転期間延長と、様々な施策を組み合わせて実施すべきというのがIEAの考え方です。

 IEAの考え方は欧州委員会に極めて近く、コロナショックからの経済回復に当たり、脱炭素化も同時に進める「グリーンリカバリー」をキーワードとしています。欧州委員会が発表した次期中期予算計画やリカバリーファンドでは、グリーン・デジタル・強靱化への投資を志向し、グリーン分野で特に建物の省エネ、水素、再生可能エネルギーなどクリーン技術への投資促進、電気自動車(EV)の事業環境整備などを盛り込んでいます。

 今年1月に誕生した米バイデン政権もトランプ政権とは打って変わり気候変動政策に力を入れています。50年までにエコノミーワイドでネットゼロエミッションを達成すると公約を掲げ、法的拘束力のある排出削減に向けた措置を導入しようとしています。電力分野では再エネ、原子力、水力、CCUS(CO2回収・利用・貯留)をすべて動員し35年までにカーボンフリー化する方針。省エネにも熱心に取り組み、4年間で600万の建物を改修するとしています。EV、再エネ、省エネ、CCUSについても様々な税制インセンティブを導入。4年間で2兆ドルの気候変動関連の政府支出を行うと明言しています。

 バイデン政権は気候外交も活発化させると予想されます。パリ協定にはすぐに再加入を明言し、貿易協定の相手国にパリ協定へのコミットメントを条件付ける可能性があります。温暖化防止義務を満たさない国に炭素調整課金を導入することも言及しています。

 これらの政策を実行するため、バイデン大統領はオバマ政権時の国務長官でパリ協定のとりまとめに尽力したジョン・ケリー氏を気候変動担当特使に任命するなど、「温暖化シフト」と呼べる陣容を固めています。

 米国は今年4月には気候サミットを主催する方針で、その場で各国に対しNDC引き上げを働きかけると思われます。米国自身が国内施策に裏付けされた野心的な30年目標を出せるかに注目が集まります。

■ 2050年カーボンニュートラルのイメージ

2050年カーボンニュートラルのイメージ

 

 
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