スペシャルリポート

ゼロエミッションに向けての内外の課題
イノベーションによるコスト低減が不可欠

したたかに対応する中国の動きに注目

 以前、東京大学で温室効果ガスの排出量を従来目標の「30年までに13年比26%減」「50年までに同80%減」とした場合の限界削減費用を計算したことがあります。それによると30年時点の限界削減費用は1tCO2当たり1万円ほど。以後、急速に上昇し、50年には6万円近くに達しました。削減幅をモデルで解ける最大の95.3%まで引き上げると60万円まで跳ね上がります。

 菅義偉首相の「カーボンニュートラル宣言」に基づき、経済産業省は「グリーン成長戦略」を発表しました。この中で50年カーボンニュートラルのイメージが描かれ、参考値として50年時点の電力の比率を再エネ50~60%、原子力・火力・CCUS30~40%、水素10%という数字が出ています。洋上風力発電については30年に10ギガワット、40年に30~45ギガワット導入と記載されました。参考値とはいえ、これらの数字は現在進行中のエネルギー基本計画の議論に影響を与えるものです。

 国内でも30年のNDC引き上げの議論は出ています。しかし、原子力発電の再稼働や運転期間の延長が進まず、安価なベースロード電源を提供してきた石炭火力発電も減っていく中では洋上風力を中心に削減量を積み増すほかなく、エネルギーコストが相当上昇すると懸念しています。30年のエネルギーミックスを見直す場合には、電力料金の影響など「値札」を明示すべきと考えます。

 注目すべきは中国の動きです。中国は気候変動問題に関して、実にしたたかに対応しています。60年カーボンニュートラルを宣言し、先進国にゼロエミッションの機運を高めましたが、それによって世界で再エネの需要が高まると中国製の太陽光パネル、風車、バッテリー、EVなどが売れます。一方、日本を含む先進国が高効率石炭火力発電の輸出を止めた今、引き続き化石燃料を使う途上国に対しては石炭火力を売りまくることが可能です。どちらに転んでも中国は得をします。脱炭素化社会の中で勝ち組になることを虎視眈々と狙っているのです。

 50年カーボンニュートラルを達成するには技術パフォーマンスを向上し、コストを低減するイノベーションが不可欠です。コスト低減を伴うことなく再エネの導入量目標だけが一人歩きしてしまうと、ただでさえ高い日本のエネルギーコストがますます上がり、日本の産業競争力を減退させることにつながります。

 新技術を開発しそれを輸出することで今後の経済の活路を見出したいというのが日本の戦略。エネルギーコストを重視するアジアなど途上国でも受け入れ可能なコストパフォーマンスの達成が求められます。

[コージェネシンポジウム2021レビュー2]基調講演

 

 
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